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2012年6月 4日 (月)

【行政視察報告】高松・唐津・武雄の視察結果について報告します。

0、主な行程と調査テーマ
5月22日(火)移動
5月23日(水)香川県高松市「民間主導の観光振興」
5月24日(木)佐賀県唐津市「唐ワンくん徹底活用事業」「木質ボイラー導入事業」
         佐賀県武雄市「フェイスブックを活用した地場産品の販路拡大」
5月25日(金)移動

1、 香川県高松市「民間主導の観光振興」
・問題意識
網走市は本年度、新たに観光部を設置し、低迷する観光の振興にテコ入れする姿勢を明確にした。そんななか、網走市では、行政は長期戦略と観光を盛り上げる仕組みづくり、民間サイド(ホテル、旅館、土産物屋、各観光施設など)は実際に集客するための実働を担うという「役割分担」を適切に行わなければならない状況にある。民間サイドが積極的に観光振興に動き出した高松市の「仕組み」とその歴史的、文化的、商業的背景を調査し、網走において民間サイドが自発的かつ能動的に観光振興に取り組む必要条件を探りたい。
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高松市遠景

・高松市の概要
香川県高松市は人口41万8528人(平成24年4月1日現在)、面積は375・14㎢。本州から四国の入り口に位置する四国4県で最大の都市。官公庁や民間企業の出先も多く、産業構成は第1次産業5528人(2・9%)、第2次産業36126人(18・9%)、第3次産業は14万4143人(75・4%)で、「商業観光都市」としての形態を有している。主要観光地としては栗林公園、屋島、丸亀商店街、サンポート高松、玉藻公園などがあるほか、古くから金毘羅参りのゲートウェイとしても機能。瀬戸大橋が昭和63年に開業し、本州からの観光客が大幅に増加した。一方で、民間企業を中心に出先の引き上げが発生。さらに今日では瀬戸大橋の開業から20年以上が経過し、観光客の誘客効果が薄れたため、高松市への観光客の入り込みは大幅に減少している。

・「高松観光プロモーション事業」について
 (説明:一原玄子・高松市観光交流課課長補佐、中西省吾・同課課長補佐)
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高松市の観光施策について説明する一原課長補佐(左)と中西課長補佐(右)

 高松市では平成20年度から、民間の経済活動を観光振興の原動力にしようと、企業、各種団体、市民事業者などから、高松市のイメージアップや集客力を高める事業を公募・認定し、その活動を支援する「高松観光プロモーション事業」に取り組んでいる。事業認定を受けると①最高100万円の補助金の交付②広報支援③認定マークの使用許可④観光情報の提供⑤観光写真等素材の提供などのインセンティブが付与される。事業内容は「高松市の知名度向上やイメージアップ・集客力を高める事業」と広い範囲で設定されているのに加え、「産業観光」「まちづくり型観光」など行政側が政策的に力を入れたい分野のキーワードを事業内容に盛り込むことで選定時の得点上乗せができるようになっている。
事業の公募は財団法人・高松観光コンベンションビューローが実施。選定プロセスは1次審査が文書、2次審査がマスコミ取材なども含めた「公開プレゼンテーション」。選定組織は学識経験者、市民代表、香川県のアドバイザー、商業者などで構成。平成20年度から毎年21~25件の申請があり、5事業程度を採択している。平成24年度は「インターネット・ユーストリームを利用したイベント情報の発信」「台湾、香港、韓国向け旅行雑誌でのPR」「商店街再生事業の成功例として注目を集める丸亀商店街の視察を組み込んだ旅行パックの開発」などの事業にIT関連企業、出版社、旅行会社などが取り組む。

質疑応答
Q、なぜプロモーションに民間企業の力を活用しようと考えたのか。
A、瀬戸大橋の開業による出先の引き上げ、さらには橋の開業効果の薄れから観光客の誘致と高松のPRが喫緊の課題となっている。PR力、発信力のある民間企業の力を借りて高松の活路を切り開こうと考えた。
Q、プロモーション事業は地元の民間サイドの意識を変える契機になったか。
A、地元の民間業者との連携の足掛かりになったと実感している。民間事業者側から様々な提案が出始めたという点では浸透してきているのではないか。
Q、高松市の観光担当部署といわゆる観光協会の役割分担はどうなっているか。
A、高松市文化・観光・スポーツ部と高松観光コンベンション・ビューローは「車の両輪」であると考える。市は観光を政策的に位置づけ、長期的な戦略を練るほか、イベントやお祭りなどを大きな視野に立って支援、盛り上げている。高松観光コンベンション・ビューローは大会誘致やPRを中心に取り組んでいる。特筆すべきは旅行業の許可を取得し、自ら着地型商品を開発している。
Q、プロモーション事業の成功例、失敗例は。
A、自転車を載せられるデマンドバスは利用者のニーズと発案者のイメージのミスマッチがあった。丸亀商店街の視察を旅行パックとして売り出す仕掛けは成功するのではないかと考えている。
Q、高松市内の景勝地・屋島に土産物屋の廃墟がかつて点在していたようだが、どのような方法で撤去したのか。
A、公的資金は投入していない。屋島寺さんが廃墟の解体に取り組まれた。
Q、サンポートタワーは集客できているか。
A、展望スペースはレストランにすることで「ちょっとしたおもてなし」の際に使う場として活かされている。
Q、中国・春秋航空が高松空港に乗り入れているが、定期便化に際して相当なインセンティブを積んだのではないか。
A、県が主体となり県内自治体とともに有形無形で計2億円前後の支出をした。
Q、中国人観光客は数が来ても、域内消費が少ないという課題があるように感じるが、高松市ではどうか。
A、実際は大阪や中国地方のアウトレットモールなどで買い物をしているようだ。なるべく高松市内で飲食をしてもらえるような仕掛けを考えている。買い物をしたくなるような素材の開発も必要だと思う。
Q、韓国からの観光客の入り込みはどうか?
A、アシアナ航空の定期便はビジネス客が多い。ウオン安もあり、厳しい状況だ。
Q、プロモーション事業の活況も含めて、民間サイドの動きが活発な印象を受けるが、その背景は何か。
A、企業家のみなさんの「地元に対する思い入れ」ではないでしょうか。行政サイドは「頑張る企業の背中を押したい」という気持ち。まちづくりのために何かやろうという動きが出れば積極的に支援したい。

雑感
 瀬戸大橋の開業効果が薄れたことに対して、行政、民間ともに危機感を持ち始めていることが新たな動きの根底にあると感じた。香川県が「うどん県に改名します」というユニークなPRを打ったり、中国・春秋航空の定期便を誘致したりと積極的に動いている背景にも危機感があるのだろう。また、高松市は商店街再生の成功事例・丸亀商店街をはじめとして、商工業者、飲食店業者が多い街でもある。数多くの中小事業者が経済活動に勤しむことが地域の魅力になるとも感じた。つまり、網走においても中小企業家のさらなる育成が不可欠であるということだ。大きな企業が数軒あるよりも小粒だがキラリと光る企業を数多く育成する政策誘導が必要だと改めて実感した。高松観光プロモーションについては、金額の多寡はあるが網走市でもPR力を向上させるうえで有益な手法となる。様々なアイデアが集まる「コンペ形式」であるとともに、提案者自らが事業の実施主体にもなるという点で「戦略・支援は行政、事業化・実働は民間」という役割分担の実現にも資すると考える。同様の事業は豊田市、新潟市、大阪市などにもあるようだが、財政力の弱い小規模自治体でも取り組めるスキームを考えてみたい。

2、 佐賀県唐津市「唐ワンくん徹底活用事業」「木質ボイラー導入事業」
・問題意識
 網走市は平成24年度一般会計当初予算で市の「ゆるキャラ」(「ゆるいマスコットキャラクター」の意味。イベントや地域おこし、商品紹介などに使用するマスコットキャラクターのこと)を作成するための予算を組んだ。ゆるキャラの制作は否定するものではないが、キャラクターは「作って終わり」でなく、広く活用し、市の知名度を高めてこそ初めて制作した意味が出てくる。ゆるキャラの制作でお金を掛けず、結果的には全国区での知名度を得るに至った「唐ワンくん」の事例を調査し、ゆるキャラを作った後の展開を考えるための素材を揃えたい。木質ボイラー導入事業ではバイオマスエネルギーの利活用とその課題について明らかにすることで網走市における同エネルギー利用の方向性を今一度検証したい。
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唐津市遠景

・唐津市の概要
 佐賀県唐津市は人口126926人(平成24年5月24日現在)、面積は487・48㎢。福岡市に隣接した「福岡経済圏」に位置。北側は玄界灘に面している。平成17年に旧唐津市を中心に呼子町や鎮西町など8市町が合併。さらに平成18年に七山村も合併した。産業構成は第1次産業7642人(12・7%)、第2次産業13289人(22・2%)、第3次産業37743人(63・0%)で、農水産業と古くからの伝統産業、そして観光業が入り混じった構成となっている。日本三大松原のひとつ「虹の松原」や唐津城など有名観光地も多い。

・「唐ワンくん徹底活用事業」について
(説明・八島大三 企画政策課係長)
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唐津城築城400年記念で作成された「唐ワンくん」

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唐ワンくん徹底活用事業について説明する八島係長

 唐津城の築城400年に合わせて「唐津城のイメージキャラクター」として「唐ワンくん」を平成20年に制作した。キャラクターを作ればいろいろな事業で活用できるだろうと「宴会芸のレベル」で作ったのが正直なところ。原図は教育委員会の職員が描いたので製作費はゼロ。ネーミングは合併を経た唐津市がひとつになろうということで「唐(津)ワンくん」。犬のキャラクターであることにもかけている。兜は唐津藩最後の藩主・小笠原長行氏をイメージ。手の肉球はかつての唐津の領主、波多氏の家紋。胸の模様は唐津市のシンボルマークとディティールには凝っている。当初の着ぐるみは私(八島氏)の妻の手作り(製作費5000円)。イベントやマスコミの取材に出ているうちに、彦根城のキャラクター「ひこにゃん」の盗作ではないかとインターネット上で話題になり、一気にブレイク。平成22年には民放キー局のゆるキャラグランプリで全国ランキング2位を獲得する。平成21年度から3年間は国の「ふるさと雇用」を活用し、NPO法人唐津市子育て支援情報センターで唐ワンくんをマネジメントする仕組みを構築。専属スタッフ3人でイベント出演、メディア対応、幼稚園などの訪問、観光施設でのPR、ブログなどを活用した情報発信に取り組んできた。事業費は年間720万円~1200万円。メディア露出は平成20年度の59件から平成23年度には406件に大幅増。平成22年度のテレビ出演の宣伝効果は約1570万円と試算。ブログやユーチューブなどでも独自の情報発信に取り組むほか、「唐ワンくん体操」で地域の健康づくりにも貢献。携帯電話ストラップやぬいぐるみ、タオル、饅頭、カレーなどを関連商品も多数誕生した。キャラクターの意匠使用については、申請さえあれば、公序良俗に反しない限り無料で使ってもらっている。平成24年度からは市が単費で「唐ワンくん運用事業」として約640万円を予算化。NPOへの委託の枠組みは変わらないが、自主財源を確保できるようイベント出動などの際に出演料を徴収するようになっている。

質疑応答
Q、「唐ワンくん」がここまでブレイクしたのはなぜか。
A、とにかくあらゆるイベントに露出させた。稲刈り、福岡ドームのソフトバンクホークスの試合、サッカー・サガン鳥栖の試合など行けるところはすべて行った。そうこうしているうちにテレビ番組の企画サイドから出演のお話が来るようになった。ゆるキャラは使い倒すことが重要。
Q、インターネットで盗作疑惑が持ち上がったとき、役所内で「唐ワンくんをやめてしまえ」という声はなかったのか。
A、それはない。むしろ結果的に唐津を知ってもらえると考え、ここまでやってきた。
Q、意匠使用の申請はどの程度来ているのか。
A、これまでの3年間で約40件。食品やぬいぐるみが多い。
Q、本年度から市の単費で持つため、着ぐるみの出動が有料化になったそうだが、クレームは無いのか。
A、民間イベントへの出動は1回3000円の設定にした。これまで無料だった分、どうして?という声もある。
Q、ブログで情報発信をしているようだが、長万部町の「まんべくん」のように軽はずみな発言がインターネット上で「炎上」を招いたりしている。ネット上での発言、書き込みはどのような考え方で取り組んでいるか。
A、●●へ行った、とか●●をしたとか日記風の書き込みが中心で政策的なことは書かないようにしている。
Q、経済効果や費用対効果が問われることが多いと思うが。
A、唐津市では好意的に受け止めていただいている。テレビ出演の宣伝効果なども試算し説明しているためではないか。
Q、意匠利用のロイヤリティーは取らないのか。取れば収益源になると思うが。
A,ロイヤリティーを取れば広がらなくなる。意匠利用は宣伝の一環と捉えて無料を継続している。

・雑感
 「ゆるキャラは使い倒すことが重要」というフレーズが印象に残った。とかく「作る」ことに力が向かいがちだが、どのように使うかという戦略を作るうちから考えておくことが必要だ。ブレイクのきっかけは彦根城の「ひこにゃん」に似ているという意外な理由。インターネット上でネガティブな意味合いも含めて話題になった時、「結果的に唐津の名が知れ渡る」という発想で事業を継続した関係者のみなさんの思いとそれを受け入れた市民の懐の深さも特筆すべき点。マイナス思考の「萎縮」ではなく、プラスの結果をどう導くかという前向きな思考が重要なのだと改めて気づかされる。ゆるキャラのマネジメントに一定の支出が伴う点は網走でも考えておかなければならない課題のひとつ。当然、自主財源でマネジメントできるのが理想だが、着ぐるみのスケジュール管理と維持、イベント出演の旅費、着ぐるみの中に入る人の手配など業務負担が生じるのも事実。どのような形で収益性を確保するかを今から考えたい。関連商品を増やしてロイヤリティーを確保するのも手だが一方で使用が広がらないという面もある。柔軟かつ積極的な発想を生み出せる運営主体をどう構築するかが網走のゆるキャラ成功のひとつのカギとなるだろう。

・佐賀県唐津市「木質ボイラー導入事業」について
(説明・森田忠光 唐津市七山支所産業課長兼山村経営室長)
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木質ボイラー導入事業について説明する森田課長(左)

 唐津市七山温泉「ななのゆ」に平成23年3月、木質チップボイラーを導入。温泉を加熱する際の熱源を地元の木質チップとした。ななのゆは平成14年に開業。当初は灯油ボイラー2台で温泉を加熱していた。平成18年の燃油高騰に伴い、木質バイオマスボイラーの導入検討スタート。平成21年度「唐津市バイオマス構想」のなかで当地をモデル地区と定め、木質チップボイラーの導入を決定した。木質チップボイラーの総事業費は9630万円。財源には佐賀県公立温泉施設木質バイオマスボイラー導入事業補助金を活用(補助率100%)。稼働1年の実績を振り返ると、木質チップの年間使用料785トン(目標990トン)、補助燃料としての灯油の年間使用量12290リットル(目標20000リットル)。灯油の使用量は大幅削減に成功。木質チップの利用率もおおむね順調に推移しているほか、灯油ボイラー使用時に比べ、CO2も38・6%削減を実現しており、「事業として効果はあがっている」と考えている。

・質疑応答
Q、木質チップの安定供給などの課題についてはどう考えるか。
A、市庁舎での木質バイオマスボイラーの利用など使用先を増やし、燃料の安定供給を図るような仕組みを考えている。
Q、耐用年数を経た後は新たに木質チップボイラーでいくのだろうか。
A、耐用年数後のシステムについて、現状では議論はない。経営状況もみながらの判断になるのではないか。
Q、採算性についての検討は導入時になされたのか。
A、予算審議では「赤字覚悟の導入」などの批判もあったが、市長公約に「バイオマス利用の推進、林業の振興」という項目があり、事業として進めてきた経過がある。
Q、1年目なので具体的な成果の検証は難しいかもしれないが、この事業について検証するような仕組みはあるのか。
A、検証するための枠組みは作ってある。
Q、木質チップボイラーの導入で電気料金が185万円ほど増加したようだが、これは抑制できるのか。
A、施設内照明をLED化するなどして施設全体の電気料金を抑える努力をしている。

・雑感
 導入後1年しか経過していないので細かい部分の議論は難しいかもしれないが、灯油使用量やCO2排出量の削減には一定の効果がみられているようだ。ただ、木質チップの安定供給や電気料金の増加、焼却灰の処分、ボイラー清掃の手間など乗り越えるべき課題も多い。木質バイオマスエネルギーの利活用技術は日進月歩でもあり、常に最新の動向をチェックしつつ、網走の人口規模、産業動態などを見極めた上での具体的な事業化が望ましい。

3、佐賀県武雄市「フェイスブックを活用した地場産品の販路拡大」
・問題意識
 インターネット上のソーシャルネットワーク「フェイスブック」を活用した情報発信や市立図書館の運営をTSUTAYAにゆだねる計画の提案など「新たな自治体像」を確立しようと果敢にチャレンジする武雄市でフェイスブックを用いた地場産品の販路拡大の手法「F&B良品」について、網走での導入可能性を探りたい。網走でも近年、小規模のものづくり、商品開発に取り組む市民が増えており、小規模生産者と消費者を結ぶツールの確立が急務となっている。武雄市がフェイスブックを無償のインフラと捉え、行政機関の信頼感をうまく生かした通販の仕組みづくりは、「手数や原料の関係で少量しか生産できないが、品質の良さや作り手の思いを理解してくれる消費者にきちんと届けたい」という生産者のニーズに合致するため、何らかの形で網走でも同様の手法を導入したい。

・武雄市の概要
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連日多数の視察が訪れる武雄市役所の玄関横にはこのような張り紙が

 佐賀県武雄市は人口51008人(平成24年4月1日現在)、面積195・44㎢。平成18年3月、旧武雄市、山内町、北方町が合併し、現在の武雄市に。長崎と福岡を結ぶ交通の要衝であり、武雄温泉など古くから知られる観光地もある。樋渡啓祐市長のアイデアあふれる施策でも最近脚光を浴びており、テレビドラマ「佐賀のがばいばあちゃん」のロケ誘致に始まり、市ホームページの全面フェイスブック化、市立図書館のTSUTAYAとの連携などを今日の自治体像を覆すようなユニークな取り組みも目を引いている。結果として全国からも視察が引きも切らず、連日多くの議会、自治体関係者が武雄市を訪れている。

・武雄市におけるフェイスブック活用の展開について
(説明・山田恭輔 武雄市秘書広報課フェイスブック係長)
 
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武雄市のフェイスブック戦略を語る山田係長

 武雄市は珍しい市役所。U・Iターンの採用があり、年齢制限もない。いのしし課やお結び課など変わった部署の名前がある。真面目にふざけている。たかが名称の違いではない。これはインターネットのポータルサイトYahoo!での検索数の差となり、多くの人々の関心の差となって出てくる。情報発信の仕方が重要。武雄市では「つながる」をキーワードに政策展開をしている。インターネットのソーシャルサイト「フェイスブック」は世界で8億人が利用するいわば「国」のようなもの。武雄市はいち早く市のホームページをフェイスブック化した。また、この春から市職員全員にフェイスブックのアカウントを取得してもらい、原課の仕事だけでなく、個人的な情報発信にも使ってもらっている。結果的に武雄市職員の親近感や信頼感の醸成につながっている。フェイスブックの強みは「時空を超える」こと。過去の友人に再会できたりもする。実名登録も含めて個人情報を出すからこそつながれる。また、個人の様々な情報が集まっているからこそ、マーケティングやプロモーションにも使えるため、企業が集まってくる。パブリックな機能性もあり、リアルな世界を前提にしたコミュニケーションが取れる。フェイスブックは今後のコミュニケーションの標準装備。武雄には73歳の元学校の先生もフェイスブックを使っている。長い人生を生きた人ほど発信できることも多いはず。緊急時の情報発信もリアルタイムで、現場付近の住民からのリアルな情報提供もすぐ反映できる。
市のホームページを昨年8月にフェイスブック化したところ、アクセスが大幅に増えた。利用者と市職員とのやり取りも増え、「見える化」「スピード化」「活発化」が実現されつつある。武雄市のフェイスブックページのファンが現在約1万4000人。これを地域の所得向上につなげようと樋渡啓祐市長が音頭を取って始めたのが役所直営の通販サイト「F&B良品(ふぁんばいりょうひん)」。
フェイスブック化は樋渡市長がフェイスブック好きだったというのが一番の理由。もともと市長はブログを書いていた。その後、ツイッター。そして、フェイスブック。使っている人間としてその機能性を理解した上で「フェイスブックの街をつくる」というのがコンセプト。市職員390人全員がアカウントを取得。市長からの指示は「とにかく書け、わかりやすく、おもしろく書け」。1日3件、1ヵ月に150件が目途。行政にとって「悪いこと」「まずいこと」もシェアして、外に発信。行政はオープンであるべきという考え方。「公私一体」。混同では無く、外向けの発信を日常から意識する。結果的に職員への親近感の醸成になる。夜、休みでも書く。スピード感のある対応がカギ。当初、市役所内からは「そんんなことはできない」という声もあった。「できない」というのには3種類ある。①できないという思い込み②してはいけないという思い違い③したくないという思い上がり。いろいろな情報をオープンにすることのリスクは認識しながらやっている。

質疑応答
Q、「つながる」をキーワードにしたまちづくりをしようと考えたのはなぜか。
A、「佐賀のがばいばあちゃん」のテレビロケの誘致とロケの実施で武雄のみなさんが「みんなが力を出すことでまちづくりを進めていく」ということを実感した。市民のなかにリーダーシップ、メンバーシップが芽生え始めている。そこをさらに強めていくには人と人とをつないでいく役割を行政が果たすべきだと考えた。
Q、フェイスブックで職員個々が情報発信を始めた場合、役所としての公式見解として取られかねないが、そのあたりはどう判断しているのか。
A、フェイスブックの良いところは不適切な発言があってもそれを修正していくことができること。また、実名登録なので誰が不適切な発言を書いたかもすぐにわかる。
Q、市職員全員がアカウントを取得するにあたって異議はなかったのか。
A、実際、390人中110人は既にやっていた。プライベートで既に使っている人たちに役所でも使ってもらうのに苦労した。
Q、議員さんはどの程度利用しているのか?
A、5人。ただ、移動式のモニターを議場に導入したのでパワーポイントを使って、ビジュアルで見せながら質問する議員さんも出てきている。
Q、高齢者のICT利用はどう広げているのか?実際市内でフェイスブックの利用者は何人ぐらいなのか。
A、市内では1000人ぐらい。ICT寺子屋という講習会を市内で開いて、フェイスブックの使い方などを知ってもらえるような取り組みを進めている。直感的に使えるタブレット型端末の登場もあり、お年寄りのICT利用はまだまだ増えていくのでは。

・フェイスブックを活用した地場産品の販路拡大について
(説明・古賀敬弘 フェイスブック・シティ課フェイスブック係主任)
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「F&B良品」の特徴を説明する古賀主任

 フェイスブックで広がった武雄市へのアクセスを地域の所得向上につなげようと「F&B良品TAKEO」を昨年11月に立ち上げた。レモングラスや佐賀牛などの地元の産品の販売や老舗旅館の予約受付なども盛り込んだ。一方的な情報発信でなく、「共感につながる情報発信」をしたい。職員自ら商品の写真を撮り、生産者の紹介動画を撮る。この手作り感が良い。通販すらできない中小生産者に新たなルートを提供する。11月からの総売り上げは約200万円。5月だけで約50万円。仕組み作りで課題になったのは、現金の受け皿と分配を行う民間会社が必要になった点。各出店者の出店料は無料。職員がかなりの仕事量をさばいているが「良いものを集めて、共感を得られる発信をしている自負はある」。また、武雄市の狙いはこの「F&B良品」の仕組みを全国の他の自治体にも提供すること。現在、北海道から九州までいくつかの地域で導入を検討してもらっている。

質疑応答
Q、出店者はどうやって集めたのか。
A、職員がほれ込んだ生産者さんを徹底的に口説いて一本釣りした。「本当に良いと思えるもの」を集めるといのが重要。ただ、武雄市内の商品だけでは限界があるので、武雄の素材を使った加工品など柔軟に考えたい。
Q、大変そうな仕事を職員さんが楽しそうにやっている印象を受けるがその根底には何があるのか。
A、市民のみなさんから頼りにされるやりがいとか喜びだと思う。自治体が縁遠いと思っていた市民の方々から感謝される場面がある。市民のみなさんのためになっているという自負がある。それでモチベーションが維持されている。

・雑感
 行政機関では無く、どこかの民間企業で話を聞いているかのような印象を受けた。市役所の中に「勢い」と「活気」がある。フェイスブックは職員と市民、市民と市民、職員と職員をつなぐツールとして機能し、それぞれの個性を引き出し始めているのだろう。新しいことにチャレンジするとき、人は新しい力を身に付け、発揮していく。武雄市役所はフェイスブックに限らず、様々な分野で「新たな挑戦」を続けているからこそ、職員のモチベーションが維持されているのだと感じた。フェイスブックを入り口に組織マネジメントの妙を学ばされた思いだ。
「F&B良品」は網走におけるものづくりの進展と地場産品の販路拡大にひとつの道しるべを示している。一方的な情報発信ではなく、「共感できる情報発信」というフェスブックの特性を生かした枠組みとして網走市での実施に向けた取り組みを進めたい。そのためにもまずは市内のフェイスブック利用者の拡大が急務であり、日常の政務を通じて積極的に利用を呼び掛けていきたい。また、武雄市では市職員の地場産品を売るという意識が強いのにも驚かされた。視察の終了間際、「F&B良品」の商品申込用紙が配られ、「武雄市はこれからも頑張りますので応援していただける方はお土産を購入していってください」とのお話。このマインドを見習わなねば。

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網走市議会経済建設委員会一同でフェイスブック・シティ課を訪問

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コメント

キャラクターには癒される事も多いですよね。

投稿: 吉沢@ラッキーメーカー | 2012年6月 4日 (月) 23時17分

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