未公表データが存在 放射線量が急上昇11月17日 19時13分
去年3月の原発事故で放射性物質がどのように放出したかを調べるのに重要な原発周辺の放射線量について、公表されていないデータが存在することが分かりました。東京電力は未公表の理由について「調査中」としていますが、この中には、事故から5日後の去年3月16日午前に一時的に急上昇しているデータもあり、専門家は「原発で何かが起きた可能性を示しており、詳しく調べる必要がある」と指摘しています。
福島第一原発の事故で放出された放射性物質については、東京電力がことし5月に最新の解析結果を公表し、去年3月15日に2号機から翌16日には3号機から、大量に放出されたとしていますが、具体的な放出経路などは明らかになっていません。
この未解明の謎に迫ろうと、NHKが原発周辺で観測された放射線量について改めて調べたところ、第一原発から南に12キロにある第二原発の値に不自然な点があり、問い合わせた結果、未公表のデータの存在が分かりました。
東京電力によりますと、未公表は去年3月15日午前から4月3日にかけてのデータで、このうち確認できたとして東京電力が明らかにした3月16日のデータを見ると、午前9時40分ごろ、それまで1時間当たり20マイクロシーベルト前後で推移していた放射線量が突然80マイクロシーベルトに跳ね上がり、10分後には87.7マイクロシーベルトまで上昇していました。
線量が上昇する1時間余り前の午前8時半ごろに、3号機の建屋から白煙が大量に噴き出ているのが確認されていて、放射性物質の放出との関連が疑われていますが、何が起きたのか詳しいことは分かっていません。
これについて、事故のあと、原発周辺の放射線量などを調べている東京大学の門信一郎准教授は「事故から1年8か月がたつのに、いまだに未公表があるのは分析を行ってきた立場として大変残念だ。今回のように大きく値が変化するデータは、福島第一原発で何かが起きた可能性を示しており、3号機の白煙との関連を含め、詳しく調べる必要がある」と指摘しています。
東京電力は「なぜ公表されていないのか調査中だ。確認ができしだい公表を検討したい」と話しています。
第二原発周辺の放射線量
去年3月16日午前10時前後に放射線量が急上昇したのは、第二原発3号機の真西に設置された仮設のモニタリングポストです。
この上昇が計器の故障ではないことを確認するため、第二原発周辺に福島県が独自に設置しているモニタリングポストについても調べました。
県のモニタリングポストについては、津波などの影響を受けずに計測されたデータが残っていたとして、ことし9月、福島県が事故から1年半たって公表しました。
これをみると、第二原発から南南西に6.9キロにある楢葉町のポストと、南南西9.4キロにある広野町のポストの値が午前10時ごろ、一時的に上昇していました。
当時、福島第一原発ではおおむね南向きの風が吹いていたこと、福島第二原発はすでに冷温停止しており、核燃料の損傷なども確認されていないことから、専門家は第二原発周辺で放射線量が上昇したのは、第一原発から放出された放射性物質を多く含む気体、「プルーム」が第二原発周辺を通過していったためとみています。
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