尖閣:海保、増強へ本腰…中国公船航行常態化受け
毎日新聞 2012年11月19日 15時00分(最終更新 11月19日 15時53分)
中国政府の海洋監視船4隻が19日午前、沖縄県・尖閣諸島の接続水域を航行しているのが確認され、接続水域内の航行が連続1カ月となった。示威行為が常態化する中、海上保安庁は、中国が尖閣周辺まで航行可能な1000トン級以上の公船を3年間で二十数隻増やすとの情報をキャッチ。大型巡視船約50隻を保有する海保は「勢力」逆転を危惧し、耐用年数延長による船艇の増加や人員増強を本格的に検討し始めた。
海保によると、中国公船は9月11日の尖閣国有化後、11回にわたり領海に侵入。周辺海域にいなかったのは9、10月に台風の接近で大しけになった期間だけで同月20日からは連日、領海外側の接続水域を航行している。
海保が収集した情報によると、中国は1000トン級以上の海洋監視船と漁業監視船を、現在の計約40隻から15年までに約65隻に増やすことを計画。海保が有する同じクラスの大型巡視船は全国で約50隻で、3年後に逆転してしまう。海保幹部は「尖閣にこれ以上、大型巡視船を集中配備することを余儀なくされれば、全国的に通常業務への支障が出かねない」と懸念する。
このため海保は、今年度の予備費で巡視船4隻を購入するのに伴って廃船予定だった建造30年以上の巡視船を残す方向で検討。巡視船を1隻増やすのに30〜40人の乗組員が必要で、来年度予算の概算要求で例年の数十人を大きく上回る約150人の人員増を求めている。要求が通れば一部を乗組員に充てる考え。海保幹部は「14年度も定員が増えれば巡視船4隻の純増が可能になる」と期待する。
更に巡視船の稼働率を上げるため、1グループで特定の巡視船に継続して乗船するこれまでの勤務体制を見直し、乗組員を増やして交代勤務にする案も検討している。
ただ、いずれの計画も定員増が前提。政府は海保を所管する国土交通省内で人員を調整するよう指示しているが、東日本大震災の復興や防災事業も担当する同省には難題で、ある海保幹部は「定員の増減は省庁ごとではなく、政府全体で考えてほしい」と話している。【桐野耕一】
◇中国公船の尖閣諸島周辺海域の航行を巡る経緯
9月11日 日本が尖閣諸島を国有化
14日 中国船6隻が領海に侵入
18日 中国で尖閣国有化に抗議する反日デモ激化。3隻が領海侵入
24日 4隻が国有化後3回目の領海侵入