衆院選:金融緩和が争点に浮上
毎日新聞 2012年11月19日 21時31分(最終更新 11月19日 23時54分)
日銀の金融政策が衆院選(12月4日公示)の経済論争の争点に浮上している。自民党の安倍晋三総裁は政権奪取を前提に日銀に無制限の金融緩和や建設国債の引き受けを求めてデフレ脱却を目指す方針をアピール。これに対し、民主党は「日銀の国債引き受けはあってはならない禁じ手だ」(野田佳彦首相)と厳しく批判している。ただ、同党内でも前原誠司経済財政担当相が円高是正を狙いに日銀による外債購入を提唱。日本維新の会など第三極も強力な緩和を求めており、日銀はかつてない「政治圧力」にさらされている。各党とも景気回復の妙案がないためだが、市場では中央銀行の独立性や財政規律低下への懸念も出ている。【三沢耕平、宮島寛】
「大胆な金融緩和でかつての自民党政権とは次元の違うデフレ脱却策を行う」。安倍総裁は19日、党本部での会合でこうあいさつし、政権復帰時には日銀に無制限緩和やインフレ目標導入を迫る考えを強調した。
安倍氏の金融政策をめぐる発言は衆院解散が固まった14日以降エスカレート。日銀法の改正も視野に、年2〜3%のインフレ目標設定や、銀行が日銀に資金を預ける際の金利を0%以下にする「マイナス金利」の導入論などを相次いで提唱。17日の講演では「建設国債を日銀に買ってもらう」と述べ、公共投資拡大などの財源に日銀資金を充てる案にも言及した。日銀が政府から国債を直接引き受けることは財政法で原則禁じられているが、そこまで踏み込んでデフレ脱却を訴えた形。
安倍氏の一連の発言を受け、市場では円相場が1ドル=81円台と解散前の水準から約2円も円安が進行。19日の日経平均株価は円安を好感し約2カ月ぶりに9100円台を回復した。
安倍氏は「私の講演だけで円安になった」と成果を誇るが、経済界からは「財政規律を緩めて資金をジャブジャブにするというのなら、市場に間違った捉え方をされる」(経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事)と、財政規律喪失に伴う国債格下げや金利急騰を懸念する声も出ている。
とはいえ、歴史的な円高に苦しむ中小企業などには円安待望論が強い。安倍氏のデフレ脱却論に支持が集まれば、民主党は総選挙で痛手を被る。野田首相は19日、訪問先のプノンペンで、安倍氏の日銀による建設国債引き受け論について「借金まみれで経済対策を打ち、それを日銀に引き受けさせるやり方はあってはならない」と厳しく批判した。