星出宇宙飛行士:宇宙活動を精力的に メダカ飼育も
毎日新聞 2012年11月19日 23時04分(最終更新 11月19日 23時38分)
【アスタナ(カザフスタン)鳥井真平】日本時間19日午前に国際宇宙ステーション(ISS)から地球に帰還した星出彰彦宇宙飛行士(43)は、同日午後にヘリコプターで着陸地点から近いクスタナイ空港へ移動。さらに米航空宇宙局(NASA)の専用機で、自宅のある米国へ向けて出発した。一緒に帰還した米国のサニータ・ウィリアムズ飛行士(47)も同乗した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、体調に異常はないという。ただ、宇宙での生活が約4カ月続いて体調が変化しており、地上での生活に対応できるよう、リハビリが必要だ。星出さんは着陸直後に報道陣から「今、何をしたいか」と問われると、「重力に慣れたいと思う」と語った。星出さんのISS滞在は124日17時間35分だった。
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星出さんはISSで、日本実験棟「きぼう」から、大学や企業が作った小型人工衛星5基を、ばねの力で宇宙空間へ放出し周回軌道に乗せる世界初の実験を成功させた。地上からロケットで一度に多数の小型衛星をISSに届け、ISSから軌道に乗せる−−。技術が確立すれば、衛星を梱包(こんぽう)した状態で打ち上げられる。このため衛星の構造を今ほど頑丈にする必要がなく、コストが削減でき、宇宙開発の裾野が広がる。
さまざまな宇宙活動に精力的に取り組んだ。無重力状態で起きる骨の弱体化の仕組みを調べるため、メダカを長期間飼育する実験も始めた。骨粗しょう症の新たな治療法開発へ期待されている。メダカの一部はホルマリン漬けにされ、ソユーズで持ち帰られた。メダカは今後、分析を行う東京工業大の工藤明(くどう・あきら)教授へ送られる。
ISS内にいる微生物も採取。雷に伴う謎の発光現象「スプライト」など、地球の大気と宇宙空間の間(高度80〜2万キロ)で起こっている現象を観測した。
船外活動(宇宙遊泳)は計3回。電気分配装置の交換が任務だった初回は、トラブルで完了できなかったが、2回目の船外活動で無事にやり遂げた。3回目はISSの滞在期間が延長されたことで追加され、ISS外部の電力供給装置を修理した。星出さんは任務終了後に、ツイッターで「地上のチームと、みなさんの応援に感謝!」と投稿。船外活動時間は計21時間23分で日本人最長となった。