安倍・自民総裁:「雄弁」に死角 「首相のつもり?」批判も
毎日新聞 2012年11月20日 東京朝刊
金融政策やデフレ対策などをめぐり自民党の安倍晋三総裁が積極的な発言を繰り返していることに、懸念が広がり始めた。安倍氏が「無制限の金融緩和」論をぶつと、円安が進むなど市場は敏感に反応するが、17、18両日の毎日新聞の世論調査で同党の支持率はダウン。公明党から「首相に返り咲いたつもりでいるのでは」(幹部)と、「慢心」を警戒する声が上がっている。【福岡静哉、小山由宇】
「大胆な金融緩和を行って、2、3%のインフレ目標を設定し、無制限に金融緩和を行う」。安倍氏は19日の党本部での会合で、政権復帰後の「無制限な金融緩和」を改めてアピール。17日には熊本市で、デフレ脱却策として日銀による建設国債の全額引き受けを検討するとも表明した。
15日には東京都内での講演で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加についても前向きな姿勢を見せた。交渉参加に反対の加藤紘一元幹事長らは翌日、真意を確認しようと党本部を訪れ、安倍氏が「今までと違うことを言ったつもりはない」と釈明する一幕もあった。
報道各社の世論調査で支持率が下落傾向にあることにも、党内に不安が広がる。前職の党中堅は「07年の『政権投げ出し』批判もあり、謙虚な姿勢でいるべきだ」。石破茂幹事長は、記者団に「慢心が片りんでも見えれば、この選挙は負けだ」と、緩みを警戒する。
一方、民主党は「党首力」を問う選挙戦にしたい考え。毎日新聞の世論調査で「首相にふさわしい」が野田佳彦首相20%、安倍氏22%で拮抗(きっこう)したこともあり、リーダーの資質を争点の一つにする方針だ。
「強い外交、と言葉だけ踊っても意味がない。タフな相手と渡り合って首脳外交を担っていけるのは誰なのか」。首相は16日の記者会見で、安倍氏を念頭にこう訴えた。
さらに、こう指摘し、安倍氏の「政権投げ出し」を暗に批判してみせた。「判断したら逃げずに決断する政治が求められる。それがリーダーの姿だ」