◇九州場所<9日目>
(19日・福岡国際センター)
関脇豪栄道(26)=境川=が初黒星を喫し、妙義龍を圧倒した横綱白鵬(27)=宮城野=が無傷の9連勝で単独トップに立った。豪栄道は審判の不手際からやり直しとなった一番で、横綱日馬富士(28)=伊勢ケ浜=に寄り切られた。1敗は日馬富士、豪栄道、豊ノ島。2敗に稀勢の里ら3人。鶴竜と大関かど番の琴奨菊、琴欧洲が6勝目を挙げた。
◇
約3分間の協議を終えた鏡山審判部長(元関脇多賀竜)の説明に、場内はざわめいた。「向正面の審判が、日馬富士の足が出たと勘違いし、手を挙げてしまいました。従って、もう一度やり直しという形でやらせていただきます」。
取り直しではなく、やり直しという珍事。1敗の日馬富士に全勝の豪栄道が挑む、今場所の優勝争いを左右する大事な一番に、審判が過去に例のない誤審で水を差してしまった。
土俵際まで寄られた日馬富士が右へ回り込んだときだった。向正面の湊川審判(元小結大徹)が右手を挙げた。勝負がついたというサインだ。それを見た式守伊之助が勝負を止めた。
そのまま終われば日馬富士の負け。しかし、5人の審判が確認のため土俵に上がって協議が始まった。蛇の目を見てもはっきりしない。「パッと足がはいたように見えたということだった。土俵では、ほうきと違う模様も見えた。だが、足がすったようにも見えなかった」と鏡山審判部長。ビデオ室の審判に確認すると「足はついていないように見えるということだった」。土俵下からとビデオ室では見え方が違うが、結局は足が出たことは確認できずにやり直し。
「難しかった。みんなの目で見てもね。勝負がついてないからね。止めた以上はやり直し。あそこで勝負はついていないから。きょうはわれわれのミスだから、以後気を付けて気を引き締めてやります」と鏡山審判部長は話した。湊川審判も「足がついたと思ったから手を挙げた。間違いもあると思う。回り込んだときについたと思った」と釈明していた。 (岸本隆)
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