2012年11月19日(月)14時より、衆議院第一議員会館で、ヘレン・カルディコット博士の記者会見が、放射能防御プロジェクトの主催により開かれた。カルディコット博士は、この日の会見で、福島県内の18歳以下の子供の40%以上に甲状腺異常が見られたことについて、「医療の専門家の立場からみれば、極めて稀な話」と指摘した。「高線量地域にいる子供、妊婦、妊娠する可能性のある若い女性を移住させるのは、非常に重要だ。移住費用は国が負担すべき」と、避難の重要性を訴えた。
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小児科医のカルディコット博士は、遺伝的疾患である嚢胞性線維症の専門家であり、2万3000人の医師で構成されるPhysicians for Social Responsibility(社会的責任を果たす医師団)の創立会長でもある。その傘下組織「International Physicians for Prevention of Nuclear War(核戦争防止医師会議)」(IPPNW)は、ノーベル平和賞を受賞。自身もノーベル平和賞候補となった。
この日の記者会見は、衆議院解散の影響もあってか、記者の参加も少なく、会場が議員会館であるにもかかわらず、顔を出す議員もいなかった。しかし、先日も、福島県内の18歳以下を対象に行われた甲状腺検査で、初めて「ただちに二次検査が必要」という判定を受けた子供が出たばかりである。このような状況を踏まえての、カルディコット博士の会見となった。
冒頭、「小児科医だった立場で、医療的観点から福島の現状を話したい」と前置きをして、カルディコット博士のスピーチは始まった。「福島第一原発事故は、人類史上最悪の産業事故。ばく大な量の放射性物質が放出されているにもかかわらず、日本政府はSPEEDIのデータを公開せず、国民に情報を与えなかった。その結果、わざわざ放射線量の高い場所に逃げてしまった人もいた。チェルノブイリ事故の推移をずっと追ってきたが、ロシアのほうが、もっと積極的に人を避難させた」と述べて、日本政府の事故対応を批判した。
カルディコット博士は「国が、今も福島県民をそこに住まわせていることが信じられない」という。「日本政府は、電力会社の強い影響下にある。そして、政治家は医療的知識を深いところまで持っていない。特に線量の高い地域にいる妊婦は、医療的な側面からみて深刻な状況である。また、甲状腺検査の中で、40%以上の人に、何かしらの異常があったと聞いている。医療の専門家からみれば、これは極めて稀な話。チェルノブイリの場合、ガンが出始めたのは、5年後くらいからだが、福島はもっと早いようだ。相当高い線量を受けたのではないか」と語った。そして、「福島は、チェルノブイリ以上の汚染状況にあるが、避難政策はチェルノブイリ以下である」との見解を示した。
さらに、カルディコット博士は、高い線量の地域にいる子供達、妊婦、若い女性を移住させるのは非常に重要で、移住費用は国が負担すべきとし、「弱い立場にある子供達よりも、東京電力を守るために予算を使っているのが、今の日本の政治」と、政府の方針を強く批判した。【IWJ・原】
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