【緊急資料11月16日】
甲状腺検査・診断における
「福島県立医大メソッド」について
2012.11.16
一般市民、市民と科学者の内部被曝問題研究会医療部会員
私は、これまでの鈴木眞一氏講義を視聴して、甲状腺検査・診断における「福島県立医大メソッド」には、多大な疑問をいだくようになりました。
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有識者や医師の皆さんの中には、鈴木眞一教授の説明を、あたかも専門的かつ技術的なもので、純粋に学問的なものだという人がいます。しかし私が精査した限りでは、決してそのようなものではありません。
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という結論ありきのもので、行政的な判断を優先させて、住民に押し付けるものです。 これでは、子どもの健康を憂慮する保護者の方々の安心・安全には程遠いものといえましょう。
もくじ
【福島県立医大メソッドその前提の誤り】
【甲状腺がん治療・国際ルールから】
【ダブリングタイム】
【福島県立医大メソッドの問題点】
【鈴木眞一講義の変遷例】
【福島メソッドの診断基準と海外基準】
【「まとめ」について】
【「福島県立医大メソッドその前提の誤り】
1.
2.
3.
4.
5.
【甲状腺がん治療・国際ルールから】
1.
2.
3.
4.
-1、左右片側の全部切除または両方の全部切除(部分切除というオプションはない)
-2、進行したものは浸潤部位切除、周辺リンパ節隔清
-3、転移したものは、I-131大量投与(焼灼) I-131の大量投与は抗がん剤のミサイル療法となって、甲状腺がんの微小転移組織に選択的によく効く。
5.
【ダブリングタイム】
1.
【福島県立医大メソッドの問題点】
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
-1「悪性」と間違える「良性」症例ばかりを強調
-2「良性」と間違える「悪性」症例はスキルアップに必要ないのか?
-3「悪性の疑いが少しでもあれば細胞診」⇒「悪性の疑いが強ければ細胞診」に改変
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
(参考:医学の歩み特集の長瀧重信巻頭言)
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiBookDetail.aspx?BC=923910
(参考:被ばく受忍強制『科学僧官』独裁国家)
http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/2554050/
15.
・・・・などです。
【鈴木眞一講義の変遷例】
1.
2.
「最近の論文」によれば、チェルノブイリの甲状腺がんは「ヨウ素欠乏症」のうえに内部被曝があったためで、「ヨウ素欠乏症」がないわが国では起こりえない。 |
ヨウ素欠乏症による甲状腺全体の腫れ(甲状腺腺腫)と、放射線による小児甲状腺がんは、山下俊一氏が当事、明確に峻別していたにもかかわらず、鈴木眞一氏によってそれらを混同させる古めかしい過ちが、再び持ち出されました。
【福島メソッドの診断基準と海外基準】
福島メソッドの診断基準と海外の診断基準との違いを比べてみます。
鈴木教授は、"福島メソッドの方が厳しい”といいますが、それは全くの虚偽です。診断基準を比較するうえで重要なのは、甲状腺がんの確定診断としての穿刺吸引細胞診(FNAC)、これをどの範囲でするかの問題です。
※超音波エコーガイド下穿刺吸引細胞診(FNAC)が、がんの転移を促すというようなことはありません。
※穿刺吸引細胞診(FNAC)は子どもにはできないとは、どの論文・どのガイドブックにも書かれていません。子どもが泣き喚いて暴れれば超音波エコーガイド自体ができなくなるでしょうが。
鈴木眞一教授は、7
「これはアメリカの、やはり同じ時期に出たペーパーですけど、アメリカでも大体10
前段では『第一リスクは放射線』という最も大事な言葉を抜いています、しかも後段、
「大体われわれよりちょっとゆるいくらいで、われわれと同じようなものだと思います。」
これは、まるっきりの虚偽です。
鈴木教授が引用した図は、
The
標題を確認してください。なんと書いてありますか?
そうして、図の冒頭には、
>0.5cm
と明記されています。
子どもについては、福島メソッドより厳しい取り扱いが提案されています。
>0.5cm
の意味は、5mmより大きい結節を有するDTCリスクがある子どもは、無条件に穿刺吸引細胞診(FNAまたはFNAC)の対象となるという意味です。「DTCのリスク」には、小児がんで放射線照射を受けたような既往や放射線被曝が含まれます。
※DTC=Differentiated
次にアメリカのガイドラインを見てみます。
(参照)Revised
あくまで成人についてのガイドラインですが、ハイリスクの病歴(もちろん放射線被曝体験を含む)がある場合、5mmより大きい結節で、エコー上悪性所見が疑われるものは穿刺吸引細胞診(FNAまたはFNAC)が推奨される(Recommendation
ところが鈴木氏が説明する福島メソッドの基準は違います。穿刺吸引細胞診(FNAまたはFNAC)を厳しく制限して、甲状腺がんに甘いのです。鈴木氏は、上記「有識者懇談会」で次のように説明しました。
「これはどういうのかと言うと、これも超音波学会で私どもがやってるものですから、診断基準が悪性と良性でこういう項目(スライド画面の左下の表の赤矢印)があるんですが、これのすべてが悪性項目になったもの、のようなものは細胞診をしよう、と。5から10(ミリの結節)。
ほとんどは結節の子どもたち、二次検査に回った人はここにくるんですけど、そうするとこれで細胞診される人って極めて少ないということになります」
すなわち鈴木氏は、5.1mm~10mmの結節でエコー上すべての悪性所見(6種類の所見)がある子どもに限っては穿刺吸引細胞診の対象。6つのうち悪性所見が5つしかなければ穿刺吸引細胞診の対象外、だと説明したのです。
今回の二次検査で5.1mm以上の結節がありながら、例えばエコー所見で3つの悪性所見しか無かった子どもは、穿刺吸引細胞診がなされないのです。
※チェルノブイリでは、5mm以上の結節がある子どもは、山下俊一氏の指示で、原則として全員に穿刺吸引細胞診(FNAC)が行なわれました。
これは明らかに、放射線被曝を含むハイリスクの病歴がある成人のガイドラインよりも、甲状腺がんに対して甘い基準です。放射線のリスクは年齢が小さくいほど高いのですから、福島の子どもたちに『鈴木基準』を適応することは、新たな「医療行為を原因とするリスク」をもたらすかもしれません。
【「まとめ」について】
11月10日福島で行なわれた「甲状腺検査説明会」での鈴木教授のまとめです。誤解をわざと誘引しようとする、作為に満ちたひどいまとめです。(下線と※1※2※3は私がつけました)
※1「予後が良好」とは、手術のあとの生存率は悪くない、という医師の間の専門用語です。決して「ハッピーな生活が送れる」という意味ではありません。幼くして甲状腺を切除すれば、一生自分でホルモンを作ることができず、薬剤に頼ることしかできません。成長のバランスを自然体でとれないのです。専門用語をつかって誤解を与えるようなまとめは、言語道断。卑怯もの専門家の典型です。
※2「進行も若い人ほど遅い」、これは鈴木氏の説明を良く聞くと、45歳以上と45歳以下の「大人の甲状腺がん」での比較が根拠だということです。決して9歳以下の幼児の場合には当てはまりません。誤魔化しです。チェルノブイリでは被曝年齢0歳~5歳の子どもたちの甲状腺がんは物凄く進行が早かったのです。
※3「年齢(より若年)と線量(100ミリシーベルト)が影響している」。放射線被曝による影響は小さな子どもほど大きく、それは100ミリシーベルト以下でも同じです。広島・長崎の最新の統計報告では、全てのがんにおいて「コレ以下なら大丈夫だ」という許容線量はなく、「しきい値」は0ミリシーベルトだと考えるべきである、と結論しています。(放射線影響研究所、LSS第14報)
以上
。
by ni0615
「甲状腺検査」説明会を前にし…