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China Report 中国は今
【第112回】 2012年11月19日
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姫田小夏 [ジャーナリスト]

あのときの張本人たちは今――中国メディアの“反日デモ検証報道”から見えてくるもの

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「官製」と「民製」の両側面
主役は格差社会の底辺層

 さて、これら反日デモ経験者の述懐からは、このデモが最初から最後まですべてが政府主導だったわけではないことが見て取れる。また、中国全土で「同時発生」したという現象は、「官製デモ」と判断されがちだが、デモ前夜にはデモの組織化に向けて蠢く市民のやりとりがあったこともわかる。

 実際に、筆者もデモ前夜に、その動きをネット上で追跡していた。「××市ではデモを行うようだ、我々の市でもやりたい、どうやったら申請ができるのか」など、具体的なノウハウを問う声や参加を呼びかける声がサイト上で飛び交っており、こうしたことからすると、あながち「100%政府の指令で動いた」とは決定づけられないのだ。

 他方、上海で行われたデモについては「官製」もあっただろうが、自主的に乗り込んできた市民も存在している。ただ、共通するのは、デモの参加者たちは格差社会のの底辺層であり、全体として「十分な教育と十分な収入を得ている層ではない」という点だ。上海の場合は、デモ参加者の使う言葉に方言が多く、地元の“上海弁”がほとんど聞こえてこなかったことからも、「外地出身者」の比率が非常に高かったことが想定される。

 これは前述した、西安市の2人の「張本人」らにも共通する。彼らも「西安市民」ではなく、そこに流れ込んできた「外地出身者」だった。

 ここに紹介したのは記事のほんの一部分だが、記事にはどんなことが起こったかが克明に記されている。また、筆者が全体から受けた印象は、なるべく中立的な見解を維持しようとする記者のスタンスだった。例えば、74ページに掲げられた大きな写真は、デモ隊がトヨタ車の販売店舗を襲うのを“阻止”した人物として紹介されたものだ。

 筆者は、この記事に対する意見を複数の中国人に求めたところ、「日本側に立った記事」と受け止める中国人読者もいる一方で、「淡々と事実のみを紹介する極めて客観的な記事」という冷静な評価もあった。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国ビジネス最新情報」を提供する「チャイナビズフォーラム」主宰に。現在、中国で修士課程に在籍する傍ら、「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)。


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ビジネス・流行・社会問題など、日本人にとって無関心ではいられない中国の最新動向を追う。長年、上海において現地の日本人社会、日本人のビジネスに警鐘を鳴らし続けてきたジャーナリストによるレポート。

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