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China Report 中国は今
【第112回】 2012年11月19日
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姫田小夏 [ジャーナリスト]

あのときの張本人たちは今――中国メディアの“反日デモ検証報道”から見えてくるもの

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 彼らの標的とされた車に、張慧さんが運転するホンダの新車があった。蔡洋が率いるデモ隊が前方から突進してくるのが見えたが、別の道から逃げようにも渋滞で動けなかった。彼女はすぐに車から降り、跪いて叫んだ。

 「どうか壊さないで!中に子どもがいるんです!」

 車の中には姉と姉の息子(17歳)が乗っていた。にもかかわらず、ひとりの若者がフロントガラスを脚で蹴破ると、それ以外のデモ参加者も後に続き、棍棒でホンダ車の破壊にかかった。

 さらに記事は、主犯格である蔡洋の人物像について、次のように触れる。

 蔡は、友達と会えばネットゲームで“闘う”のが好きだった。好きな番組は抗日をテーマにした連続ドラマ番組だが、中でも抗日戦争の英雄を描いた「雪豹」は大のお気に入りで「三度も見た」という。彼の仲間たちはチャンバラものを好むが、中国で放送されているのは国産の抗日ドラマが多い。

 また蔡の友人は、蔡と仲間の日々の生活そのものも、反日感情が非常に色濃いものであることを指摘する。

 「仲間の間で意見の違う者を“漢姦”(売国奴の意)と呼んでいる。人を罵るときに使う言葉だ」「仲間うちでは、誰かが何かを買えば、それが日本のものかどうかにまず反応する」

 一連の描写から、蔡が育った家庭と現在の暮らしぶりは決して楽ではなく、ゆえに日本製品など縁のない貧しい状況だったことが推察される。反日の奥には、高価な日本製品を所有し日本車を運転するような“富裕層に対する妬みや恨み”が心の奥深くに潜んでいたのかもしれない。

 さらに記事は車を壊された側の張さんの生活にも触れる。彼女にとっても実は日本は遠い国だった。訪日旅行などまだ遠い先の話、家庭の中の日用品はほぼ国産ブランド、唯一の“日本”が娘の読む「哆啦A梦」(ドラえもん)だった――。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国ビジネス最新情報」を提供する「チャイナビズフォーラム」主宰に。現在、中国で修士課程に在籍する傍ら、「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)。


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ビジネス・流行・社会問題など、日本人にとって無関心ではいられない中国の最新動向を追う。長年、上海において現地の日本人社会、日本人のビジネスに警鐘を鳴らし続けてきたジャーナリストによるレポート。

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