TPP:安倍氏も衆院選にらみ、参加の可能性示唆
毎日新聞 2012年11月15日 21時51分(最終更新 11月15日 23時20分)
野田佳彦首相が参加に意欲を示す環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、自民党の安倍晋三総裁が15日、従来の慎重姿勢を修正して参加の可能性を示唆したことで、次期衆院選の大きな争点に浮上してきた。しかし、民主、自民両党とも党内では推進・慎重派が拮抗(きっこう)し、意見集約は進んでいない。どちらが政権についても交渉が急進展する展望は立たない状況だ。
安倍総裁は同日午前、日本商工会議所の岡村正会頭との会談で、TPPについて「我々は日米同盟関係にふさわしい交渉の仕方ができる」と述べ、米国などと協議のテーブルにつくことに前向きな姿勢をアピールした。
しかし、数時間後には同党の大島理森前副総裁が国会近くで開かれた全国農業協同組合中央会(JA全中)の緊急集会に出席し、「安倍総裁と確認した党の方針」としてTPP断固反対を明言。「総選挙では反対を表明した候補者や政党を推薦する」(万歳章JA会長)と踏み絵を迫られる中、安倍氏自身も数時間後に記者団から発言の真意を問われ、「民主党政権には交渉する能力がないと言った(にすぎない)」と釈明に追われた。
米国はオバマ大統領の再選を経てTPP交渉加速にカジを切っており、日本が党内の内向きな論理を超えた国益をどう判断するかは政権能力を測る試金石になる。安倍氏は、日米関係の立て直しを外交の最優先に位置付けており、仮に政権復帰すれば日本の参加を期待する米国と党内慎重派との板挟みに苦しむ可能性が高い。
一方の野田首相は、18〜20日にカンボジアで開かれる東アジアサミットでオバマ米大統領と個別に会談し、TPPへの参加に積極的な姿勢を打ち出す意向とみられる。強硬反対派には「選挙前に離党してもらった方が党にはプラス」(周辺)と判断。農業票を当て込む自民党との違いを鮮明に打ち出すためにも選挙公約にTPP推進を掲げる意向だ。
交渉に正式に加わるには、事前協議を進める米国の同意が前提になる。米国は総選挙後の日本の動向を見極めるため、当面は態度を保留するとみられる。