磐田−名古屋 試合後、500試合出場を達成しチームメートに胴上げされるグランパスGK楢崎=ヤマハスタジアムで(今泉慶太撮影)
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GK楢崎正剛(36)が通算500試合出場を果たした記念すべき試合を、名古屋グランパスは磐田に2−0で快勝。勝ち点52の4位。広島は浦和に0−2で敗れて勝ち点58で足踏みしたが、辛くも1点差で首位を守った。2位仙台は鹿島と3−3で引き分けて同57。残りは2試合で次節の24日に広島が勝ち、仙台が敗れて勝ち点差が4に開けば、広島の初の年間優勝が決まる。浦和は同52で3位。残留争いは14位大宮、15位神戸、16位G大阪が勝ってそれぞれ勝ち点を40、39、37とし、17位新潟は敗れて34のまま。G大阪と新潟は、次節にJ2降格が決まる可能性がある。
冷たい風雨にさらされていたアウェーのゴール裏から、歓喜の放熱が沸き上がった。試合終了後のあいさつ時、整列するかに見せた仲間たちに、楢崎がつかまる。そして『俺らの誇り、これからも共に』という横断幕を掲げたサポーターの万歳に合わせ、5度宙を舞った。史上2人目、GKとしては初となるJ1通算500試合出場。プロ18年目で金字塔を打ち立てた守護神はまさかの胴上げに、「別にいらなかったけど、みんな喜んでくれてるし、終わってみれば良かったです。変な天気だったけど」と照れ笑いを浮かべた。
偉業は、通算134度目の完封で飾った。相手のシュート数は9本だったが、決定機やファインセーブはない。難しいプレーを難しく見せない。それが楢崎の真骨頂だ。第2GKの高木は言う。「本人はスーパーセーブとか言われてもうれしくないはず。技、経験に裏打ちされた『当たり前』があるから」
その「当たり前」のレベルを、誰よりも高く設定してきた。オフは恒例のグアム自主トレで体をいじめ抜く。過去にはMF本田やDF吉田ら現日本代表の後輩たちを連れて行ったが、若手が音を上げるなかで楢崎だけは自ら課したハードメニューを黙々と消化する。
疲労を考慮した川崎トレーナーが軽減を提案しても、「何で?」と妥協を許さない。その姿勢が、「12年間見てるけど衰えは感じない」と川崎トレーナーが驚嘆する36歳の体を支えている。
ただ、選手生活はけっして順風満帆ではない。ここ6年間は左手や右スネ、左足首など毎年のように手術や長期離脱があった。今季も6月に左膝を手術。長年の酷使により半月板がめくれ上がった。しかし、苦しいチーム状況のなか、縫合による完治よりも最短で復帰するための切除法を選び、わずか1試合の欠場で復帰。その後は患部に水がたまる状態が続き、時には膝が抜けるような感覚に襲われるなかで、ようやくたどり着いた500試合だった。「先のことを考えて生きられるタイプじゃない。一つ一つをクリアしてきたなかで、いろんな道が見えてきた。次は501試合目の記念試合を飾ろうという気持ちです」。そう振り返った18年。有望な若手が次々に欧州に挑戦していく時代に、Jリーグのトップで生き抜いてきた自負もある。
「いいんじゃない、こういう選手がいても。それに近づこうとか、そういう選手もいるんだなという希望になってもいい」。打算のない生き方を積み重ねて建てた金字塔だからこそ、誰もが惜しみない拍手を送る。楢崎正剛という存在は、名古屋の誇りであり、すべてのJリーガーの希望だ。 (宮崎厚志)
◆楢崎500試合Tシャツを発売
名古屋グランパスは17日、GK楢崎正剛の500試合出場記念Tシャツを19日からウェブ限定販売(300着)すると発表した。缶入りで価格は4410円(税込み)。詳しくは名古屋グランパスの公式ホームページまで。
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