承前

 

「キングって言うんだってな、手前ぇ。ご大層な名前でうろちょろしやがって気にいらなかったが、これでようやく決着ってヤツだ。大した事もねぇのにこのジャック様に喧嘩を売った覚悟はできてんだろうな」

 そこではたった今闘いが終わったばかりだった。洒落な短ジャケとパンツに身を包んだ、グラビアを飾ってもおかしくはない美貌の伊達男と、規格外のジーンズにブーツを穿き、裸の上半身に袖を引き千切ったGジャンを羽織っただけの、ビヤ樽のように太い四肢とそして太鼓のように膨らんだ腹を曝す見るからに野卑な男との一騎打ち。
 この街の最下層を掌握する二大巨頭同士の激突は、しかしその体格差そのままに決着した。勝利者の名はジャック。敗北し、横たわっている者の名はキングと言った。

「くく、お楽しみの時間だぜ」

 ジャックはさほどのダメージを感じさせない動きで、俯せに横たわるキングの脇に片膝をつくとそのまま千切れかけたジャケットを後ろ手に肘のあたりまで引っ張り、余った裾を固く結び上げて腕を固定した。そして腰を無遠慮に持ち上げ、尻を突き出した無様な体勢を取らせる。

 ずるっ…

「おお、やっぱりな」

 ジャックは一人で頷くと、持ち上げたキングの腹の下に指を回し、手探りでベルトのバックルを無造作に捻り千切った。そして逆の手でそのままズボンを引き下ろす。

「……んっ……な、うあっっっ???!!!!」
「気付いたか?がははっ。白くてよ、まるで女みてぇにいいケツだな。どうも勝った後はいつも興奮しちまう。いつもならそこらの女にぶち込みに行く所だが、もう我慢ならねぇ。手前ぇで済ます事にするぜ?へへ、なんせ足技がうるせぇヤツはケツの締まりが良いって聞くからなぁ」

 キングの正気付く声が上がった。そして、同時に驚愕の声も。自分の置かれている状況と、そのあまりに無様な格好に思考が凍結しそうなる驚愕を必死に抑えながら、僅かに動く頸を後ろに捻り、視界の端にその元凶の顔を捉える。

「ジャック………貴様っっっ……!!!」
「ひひ、男ってぇ割には、いいケツ持ってるじゃねぇか、キング?」

 ジャックの目の前には、後ろ手に縛られて尻だけを突き上げる姿で四つん這いにされた生尻が曝されていた。しかし、それは何かが違っていた。いや、それは男ではありえない尻だった。丸く、白い尻。そしてなにより、その尻を覆う布はあきらかに女物なのであった。
 だが、その尻を愛でる男はそれを全く無視し、その尻を男の尻と呼んで嬲っていた。芋虫のような指を乗せ、じっとりと揉み込むように撫で回し、それに充分堪能するとその布をも引き下ろし、大きく曝された尻の窄まりに指を滑らせていく。

「や、やめろっ!そんな所を……!!ひ、拡げるなっ!!この変態がっ!!」

 肉体が言うことを聞かない歯がゆさが滲む声だった。縛られているからではなく、ダメージが抜けていないからこその無力感が、キングの言葉を虚勢にまで貶めていた。

「おうおう、解説までしてくれるのかよ、この負け犬はよっ!へへっ、そそるぜぇ、その声、もっと言えよ、もっとしてやるからよ、ひひっ!手前ぇは負けたんだぜ?この街で負けたら、どうなるかなんて道端のクズでも知ってる事だぜ!!」

 負け───何よりも心臓を抉る一言だった。その言葉が浴びせられる度に肉体から力が失われ、そして反対にどす黒い疼きが溜まっていく。

「うっ……くっ……!!」

 ぎりっ……

 負ける気はしなかった。だが、敗れた時の覚悟はできていた。最悪、殺されるよりも悲惨な末路がある事すら受け容れた上で今回の決闘に挑んだのだ。しかし、これはそれら全てを上回る屈辱であり、恥辱だった。
 キングは噛み裂く唇から血を流し、奥歯が欠けるほどの音を立ててそれに耐えていく。

「綺麗にしてやがるな。ひひ、質が違うぜ、良く締まりそうだ」

 嘲弄そのものの声だった。
 自分の美意識からは遠く離れたブタのような男に、自分の尻を、いや、尻穴を弄られ、嬲られる。耐えなければならない辱めなのは判っていた。だが、尋常に耐えられるようなものでもなかった。

「糞が……!この、ブタ野郎がっ……!!!」
「なんだと手前ぇ?!」

 どむっ

「がっ……!!」

 脇腹に拳がめり込み、キングの呼吸が一瞬止まる。

「ならそんな俺に負けた手前ぇはなんだ?このメスブタが!!弱ぇくせにデカい口叩いてんじゃねぇ!!」
「ごふっっ!!!」

 逆側からの痛みに、キングはさらに悶絶する。

「くそが!もうちっと愉しみながら犯ろうとおもったが、手前ぇには世の中の仕組みってヤツをたっぷり教えてやらなきゃならねぇらしいな。なら、まずはその現実を覚えさせてやるぜ。弱ぇヤツは強ぇヤツに従わなきゃならねぇってあたりまえの事をな!!」

 じぃぃ…

 不吉なジッパー音が響き、そして曝された尻の肌越しにもはっきりと感じられる熱の塊が現れた。

「げへへ…壊してやるぜ……」

 ジャックは取り出した時に既に棍棒のように膨れ上がっていたモノに吐き付けるように涎をまぶすと、そのまま押し拡げた茶色の窄まりに向けてねじこんでいく。

「うぎぎぎいいいいいっっっ?!!!???!!!!」

 無茶苦茶な話だった。まるで濡れていない、それも一度も使った事のないであろう穴に、明らかに規格外の太さを持つモノが強引に入っていくのだ。

「いがっ……がはっ!……おお…あがぁ……いぃぃぃいいいっっっっ!!!!」

 耐えるつもりではいても、悲鳴を押しとどめる事はさすがに不可能だった。肉が裂け、生温い感触が腿を伝った直後から、キングは食いしばる歯の間から溢れ出す絶叫と共に身を捩って痙攣する。

「暴れるんじゃねぇよ!おお、いい、いいぜぇこのケツは。俺のを根本まで咥え込んで離さねぇ……おぅ……予想通りの締め付けだ…うぉ、おおっ!」

 粘ついた厭らしい声が、キングの背中に垂れ滴るようにして吐き出されていく。
 男とも女ともつかない尻の穴を、ただ尻だけを剥き、下着すらつけたままで犯していく自分に酔っているのか、ジャックの表情は醜く歪んで蕩けていた。

 ピピピッ!

 突然電子音が鳴った。

「くそ、なんだこんな時によ、気が削がれるじゃねぇか!!」

 ジャックはジャケットのポケットに指を入れると、鳴り響くそれを取り出して耳に当てた。

「俺様だ……何……ビッグが?……判った。直ぐに行く」
「うひっ……いっ……ひっ!…いぎぃっ!…ひぃぃいいっっ!」

 だが、その間ですら、その腰は尻穴を貫く事を止めなかった。左手だけで尻肉を鷲掴み、何の勢いの変化も無しにその尻穴に醜い肉棒を突き入れ続ける。

「かはっ……いっ……ぐぎぎいぃぃぃっっっ……いひぃぃいいいっっっっっ……!!」
「ちっ!お楽しみの時間だってのに、あの禿野郎が!」

 微量の恐怖の入り混じった、とてつもない憎悪を含んだ声だった。

「おいキング、ちょいと本気だすぜ。ひひ、締まりがいいからもうちっと愉しんでたかったんだがな、用事ができちまった」

「いっ?!?!?!ぎ、ぎぃいいっっっっ!!!!ひあいあいいいいいっぃいいいっっっっっっっ!!!!!!」

 今迄を倍加させたような、既に表現のしようもない痛みがキングの肛門に襲いかかった。容赦というものを一切排除した、自分勝手で激しい挿入が、濡れる事すらできない処女穴をひたすらに蹂躙していく。

「おお、いいぜぇ、いいぜぇ!ケツの穴が、俺のチンポコをぐいぐい締めつけてきやがるっ!もっと、もっとだ、おら、おらっっ!!!」

 白人特有の軟体動物のようなペニスが、痛みに爛れる粘膜に塩を塗り込むようにその肛門を擦り上げ、そこに与える痛みと引き替えに堪えようのない快感を受け取っていく。

 ぱんっ!!ぱんっっ!!

「うぎぃいいっっっ?!!いひっ!ひぎぎぎいっっっ?!!!あああああああっっっっっ?!!!!!」

 突然、尻肉が派手な音をたてて鳴り、瞬時に白い肉に赤い腫れの痕が浮かび上がった。

「うおおっ!締まりやがるっっ!!!マゾかよ、このケツはよっ!いい締まりだぜぇ!うお、おおっっ!!」

 張る度に痙攣し、引き締まる尻の穴に酔いしれるように、ジャックは容赦なくその白い肉を叩き、そして腰を振った。
 まさに排泄の為だけの快楽運動だった。思う様突き込み、そして張り叩く。叩くと鳴る玩具に興じる子供のように、嬉々とした淫らな欲情にまみれた顔でジャックの手と腰がなんの躊躇もなくキングの尻を内と外から犯し、嬲り、蹂躙し続けていく。

「うおお、いくぜ、いくぜぇ!」
「んぎぃっ!っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!」

 やめろ、とも、だすな、とも言うことはできなかった。ただ耐える事。歯ぎしりと呻きと悲鳴。キングにはそれしか選択する事はできなかった。それだけが自分の誇りを保つ唯一の手段であった。

「おおおおおおっっっっ!!」

 挿入運動を続けていた股間がぴたりと密着し、押し潰すように体重が尻にのしかかってくる。そしてひときわつよく押し付けられたと想うと、肉の中で蠢いていたモノが膨れ上がり、そしてのたうった。

 ぶりゅりゅっっ!!びゅぅぅっっっっ!!!!

「っっっっっっっっっっっっ?????????!!!!!!!!!!!」

 キングの背中を、尻の奥に猛烈な勢いで精液が注ぎ込まれていくという吐き出しそうに非現実的な感覚が駆け上がっていく。

「んぐぅぅぅっっ!!!!んぃぃぃぃいいいいっっっっっっっ!!!!」

 半分以上白目を剥き、その感触を痛みの向こう側へと無意識に追いやりながら、身を固くしてキングはそれに耐えていた。

 

「ぐはぁ……良かったぜぇ、お前ぇのケツはよぉ。けけ、いい格好だ。負け犬そのものってやつだな、そのケツを上げた格好、なかなかにそそるぜぇ」

 放出の余韻を味わい尽くしたジャックがその尻から手を放しても、硬直した肉体はその体勢を保ったままだった。逆流し、溢れ出すジャックの精液が、元の位置を取り戻し、その本来の機能を回復した股間の布にべっとりと受け止められていく。

「も、もう……終わり……か?この…ブタ、野郎」

 か細いが、形が見える程の憎悪を滲ませた呟きがジャックの耳を打った。

「ああ?!」

 ゴスッ!!

「ぎひっ!!!」

 切り株のように広いジャックのブーツの裏が赤く腫れ上がった丸い尻を踏みつけ、押し潰すように捻った。

「言うじゃねぇかよ?まだ入れられ足りねぇってか?この変態マゾ野郎が!ケツに無理矢理入れられたくせに、ひっぱたかれて締めつけるようなヤツのくせしやがってよ!!ああ?人の事をさんざ罵ってくれやがったが、自分の方が変態じゃねぇのか?」
「が……っ……!!きっ、きさ……まっ…!!」
「がははっ!わかってる、わかってるぜぇ?!負け犬の遠吠えってヤツだろ、判るぜ?みんなそう言いやがるからな。ま、もっと聞いてやっててもいいんだが、俺も忙しいんでな」

 

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