今回の「なりすまし」は、いずれも悪意が込められたリンクをクリックしたことに端を発している。横浜市や大阪市への脅迫では、いずれも犯人によって短縮URLにされていた。「人間、どうしても見たいリンクもある」(西本氏)が、まず短縮URLはクリック前に一呼吸おいた方がよいだろう。
元のURLにはリンク先のサイトやサービス名が含まれている場合が多く、検索などによってその真偽を確認することができる。
ここで北河氏が薦めるのが「LongURL」というサイトだ。変換窓に短縮URLを入力し、変換ボタンをクリックするだけで元のURLを表示してくれる。
それでも予想がつかない場合、「怪しいサイトは代理で調べてもらうという発想」で西本氏が薦めるのが「aguse(アグース)」だ。サイトのURLを入力するだけで代理でアクセスし、スクリーンショットを表示してくれる。サーバー情報の表示やマルウエアの検出も行う。ウイルスのパターン定義ファイルは、ロシアの情報セキュリティー大手カスペルスキー研究所のものが使われており、1時間おきに更新されているという。誰でも無料で利用できる。
遠隔操作ウイルスについては、犯人は無料ソフトに見せかけて配布に成功している。「ウイルスソフトでチェックすればよい」と思うかもしれないが、対策ソフトでは今回のような新型ウイルスは検出できない場合が多い。
国内の対策ソフト3大シェアを誇るトレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーのウイルス定義ファイルが更新されたのは、いずれも騒動の後。ウイルス作成者が、これらの対策ソフトで検出されないことを確認した上で攻撃に及ぶ場合もある。
インターネット上には無料ソフトが多数存在し、善意の開発者が作った非常に役立つものもある。企業が運営するおすすめソフトの紹介サイトなどを活用すれば、リスクを減らすことは可能だ。例えばソフトウエア販売のベクターの「ソフトライブラリ」(掲載数ウィンドウズ用約9万本・マック用1万本)やITニュースサービスのインプレスウォッチ(東京・千代田)が運営する「窓の杜」(掲載数ウィンドウズ用約1000本)などは、掲載されているものの約8割がフリーソフトで編集部が動作確認をすませている。
■通信記録やソフト起動記録は残す
自身のパソコンのパケット通信記録や、ソフトウエアの起動記録を残しておくことも有効だ。筑波大学発ベンチャーのソフトイーサは10月22日、「パケット警察forWindows」を無料で公開。パケット通信やソフトウエアの起動記録が残るため、パソコンを遠隔操作された場合でも証拠になりうる。セキュリティー会社ネットエージェント(東京・墨田)も「PacketBlackHole Probe(パケットブラックホール プローブ)」のパケット記録機能を無料公開しており、同社のホームページからダウンロードできる。
突然逮捕された場合には、パソコンは押収されて「弁護士でも見られない」(日本大学法科大学院で刑事訴訟法を担当する早乙女宜宏弁護士)。ログを証拠として使うためは、「DropBox」や「Evernote(エバーノート)」など、外部のファイル共有サービス上に保存するなどの工夫が必要になる。「パケット警察forウィンドウズ」も、外部にログを直接保存する機能の実装を検討している。
事前に任意で事情聴取され「『逮捕されるかもしれない』と予測できる時は、ログを印刷して弁護士に渡しておくのも有効」(同弁護士)。早乙女弁護士は、依頼者にあらかじめ手渡されていた電磁記録のプリントを、弁護活動に活用したことがあるという。
スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)やタブレットの普及で、ネット人口は今後も増加する。公衆無線LANの整備やLTEの普及も相まって、ネットにアクセスする敷居はますます下がるだろう。「インターネットは街歩きと同じ。でも守ってくれる警察官はいない」(西本氏)。
同氏はこうも指摘する。「自分は今どんな街にいるのか。最大限、情報を集めて危険度を判断し、適切な装備を持つことが必要だ」。無限に広がり続けるネットの世界では、ある程度「自己責任」が求められる。そう覚悟することが、快適かつ安全にその利便性を享受する秘訣かもしれない。
(電子報道部 富谷瑠美)
遠隔操作、ウイルス、Tor
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