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住宅解体申請足踏み 改修か取り壊しか、悩める被災者 石巻
 | 築約30年の自宅の解体を決めた千葉さん。外観に大きな損傷はないが、内部は津波で大きな被害を受けた=石巻市塩富町 |
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東日本大震災で住宅約3万3000棟が全半壊した宮城県石巻市で、被災住宅の解体申請が足踏みしている。市の推定で解体が必要な物件は約440棟に上る。生活再建の見通しが立たず、取り壊しか、改修かを決断できない被災者も多い。公費解体の申請期限が年末に迫り、市は「申請後にキャンセルもできる」と手続きを呼び掛けている。
旧北上川河口に近い石巻市湊地区は、1階が津波にえぐられた建物や、住宅跡の更地、改修を終えた家々が混在する。 「帰りたい思いと、元の暮らしに戻れるだろうかという不安が半々。どうしたらいいの」。市内の仮設住宅で暮らす女性(68)は浸水した自宅を解体するかどうか悩む。 近所の人たちは仮設に入ったり、家族宅に身を寄せたりして離れ離れになった。「また一緒に暮らしたいね」と電話で語り合った。しかし1軒、また1軒と取り壊され、地区外への移転を決める人が続いた。 改修しても約800万円かかり、貯金はほぼ底を突く。災害公営住宅への入居も頭に浮かぶ。「地域の将来が見えない状況では決められない」 震災で全半壊するなどした私有物件の解体費用は国費で賄われる。国の事業計画は年度内にがれきの解体・撤去を完了するよう定める。宮城県沿岸部の自治体の多くは受け付けを原則的に終了した。津波被災の住宅が多い石巻、東松島両市も12月28日で締め切る。 石巻市によると建物解体などの申請は約1万1600件寄せられ、9割は完了、または着手済みだ。損壊程度から解体が必要と推定する物件は約440棟残り湊地区や渡波地区に目立つ。仮設住宅の物置代わりにする所有者も多いとみられる。 申請期限が迫り、取り壊しを決める人も出ている。市内の借り上げ仮設住宅で暮らす千葉かよ子さん(63)は「改修にも新築と同じぐらいの費用がかかる。水害も多い地区だし、同居する孫たちのためにも安心できる場所で再建する」と話す。 市は申請期限のチラシを作成し、仮設住宅への配布を始めた。一方、被災者側の事情で年度内に解体、撤去に着手できない事態も想定。新年度にずれ込んでも対応できるよう国と検討する。
2012年11月19日月曜日
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