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【09総選挙 中部ニュース】世襲を問う(下) 有権者の目利き 試す2009年8月16日 世襲は自民党の専売特許ではない。世襲制限を今回のマニフェストに盛り込んだ民主党だが、親が地方議員の場合はルールの適用外。愛知3区(名古屋市昭和区など)に出馬する民主前職、近藤昭一(51)の父、故昭夫は名古屋市議を9期務めた。 1996年に初出馬した昭一は、父の地盤の愛知5区を引き継がず、3区に鞍(くら)替え。逆に3区を地盤とする同僚の民主前職、赤松広隆(61)が5区から出た。昭一は「選挙区が違い、世襲の意識はない」と話すが、自民党は「仲間内の地盤交換」と冷ややかな視線を送る。 いわゆる“隠れ世襲”は、三重5区(伊勢市など)の民主新人、藤田大助(32)も。父の正美(57)は三重県議会議長も務めた現職県議。大助が民主の公認候補に決まった昨年、自民党を離党した。 正美の保守票がどこに流れるか案じる声が出たが、後援会幹部は「伊勢は自民というより正美個人のシンパが多いから」。8日夜、伊勢市内で開かれた大助の演説会。正美の姿はなかったが、父の威光は肌で感じる。「最初は戸惑ったおやじの支援者も徐々に応援してくれている」 世襲のうまみは地盤(後援会)、看板(知名度)、カバン(資金)をそっくり引き継げること。愛知県の選挙区に出馬予定の民主新人(48)は東京出身の元銀行マン。党の公募で30人の中から選ばれた落下傘候補で「世襲は意欲のある人材の政界進出を阻む『参入障壁』」と言い切る。 世襲批判は、もともと政界内部から出た。4年前に自民党が大勝した小泉郵政選挙後、「政権たらい回し」で麻生太郎(68)まで世襲の首相4人が続いた。民主党代表の鳩山由紀夫(62)も祖父が元首相の政治家一族だ。 自民党も次回総選挙から世襲制限を導入する。が、民主主義の“本家”で育ったニューヨーク出身の愛知県犬山市議、ビアンキ・アンソニー(50)は「選挙に出る権利を縛るのはナンセンス」と首をかしげる。 米国でも世襲議員はいるが、日本に比べ格段に少ない。政権交代が当たり前の選挙戦では、候補者の資質や政策が最大の判断基準で「親の七光」だけでは通用しないという。世襲の是非を決めるのは、有権者の一票との立場だ。 その有権者。衆院解散の10日前、愛知県春日井市で開かれた宮崎県知事、東国原英夫(51)の講演会。東国原は総選挙への出馬が一時取りざたされ、聴講した女性(51)は「人を笑わす世界にいたから庶民の気持ちが分かる。出たら応援するわ」 歯切れのいい発言やジョークで人気を集めるお笑い芸人やタレント出身の政治家。神戸女学院大教授の内田樹(58)は「世襲がはびこる政治に物足りなさを感じる国民のささやかな抵抗」と分析する。 世襲は政治を良くするのか、それとも弊害をもたらすのか。有権者の目利きもまた問われている。(敬称略)(取材班=寺本政司、鎮西努、太田鉄弥) 【米英の世襲議員】 米政界では大統領や上院議員などを生んだケネディ家が有名。アダムズ家やブッシュ家は父子が大統領を務め、2000年の大統領選は共和党ブッシュ氏と父が元上院議員だった民主党ゴア氏による史上初の2世対決が話題を呼んだ。英国では世襲貴族らで構成する終身の上院議員がいるが、ブレア政権下の1999年、約800人から92人に削減。任期制の導入も検討している。
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