紆(う)余(よ)曲(きょく)折(せつ)の末、日本維新の会と太陽の党が合併を果たし「第三極から第二極」を目指す新たなステージに入った。だが、両党合意の政策骨子では、橋下徹氏が「センターピン」と位置づけた原発や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で維新側に妥協があった。橋下氏が旗印を曲げてまで合併を急いだ背景には、石原慎太郎氏と組まなければならない事情があった。
橋下氏は大阪市長就任から1年に満たず、肝心の大阪都構想はまだ緒に就いたばかりだ。ここで市長を投げ出し、国政に転じれば、支持の低下とともに、役所側の抵抗などで構想が骨抜きになりかねない。
日本維新を立ち上げて2カ月弱。橋下氏は、17日の会見でも「大阪市政の業務はきちんとやる」と強調したが、党代表との「二足のわらじ」にも限界はある。一方で、政権選択選挙に臨む以上、首相候補を示す必要があると考えたが、党内で橋下氏に代わるシンボル的存在は見当たらない。
自ら国政に踏み出せない状況の中で、トップにふさわしい人物は党外に求めるしかなかった。その中で見定めたのが、政治経験が十分で、かねて尊敬の念を抱いてきた石原氏だった。「最強のリーダー」と絶賛する石原氏の知名度に、党を託そうと考えた。
石原氏は橋下氏に共同代表就任を提案したが、橋下氏は固辞した。「決める政治ということを考えれば、決定権者は一人の方がいい」。それが、橋下氏にとってベストの選択だった。
だが「真正保守」を根底に位置づけきた太陽と維新のメンバーでは、そもそも肌合いに違いがある。橋下氏自身「真正保守とか言っているメンバーとは組めない」発言した経緯もあり、感情的なしこりも残る。
「石原代表」を得るため、根本的な違いを内包したままの新たな船出。今後「小異」が火種となりかねない危険性も秘めている。