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組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」
【第12回】 2012年11月14日
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渡部 幹 [早稲田大学 政治経済学術院 客員主任研究員]

良い大学、良い会社、良い結婚で生きていけるのか?
「堤防型社会」で負ける人、荒波に揉まれて勝つ人
――処方箋⑫“籍”を持つことで安心せずに“職人”の行動規範を持て

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 結果として、冒険しない、立ち向かわない、保守的な社員が多くなり、会社役員にもそういうタイプが増えてくる。堤防の内側で荒波に揉まれていなければ、そうなるのは当然だ。

産業の凋落に雇用のねじれ現象
すでに我々は限界を感じている

 それでもバブル崩壊期までは、こうしたタイプであることにそれほど大きな問題はなかった。だが、グローバル化の波が押し寄せている現在、社員が、特に会社のトップがそういう行動規範に則っていては、会社は立ち行かない。

 このことは、ソニー、パナソニック、シャープなど、かつて日本を代表する存在だった電機メーカー各社が苦境に陥っていることや、福島第一原子力発電所事故後の東京電力幹部の対応のマズさなどと、無関係ではないだろう。

 さらにこのことは、堤防の内側で安穏としている正規雇用社員と、堤防の外側で波に揉まれている非正規社員との間に「ねじれ現象」を引き起こしている。優秀なのにいつまでも非正規雇用のままの社員がいる一方で、彼らより無能な正社員が「勝ち組」として生き残る。

 このように考えれば、日本の「堤防型社会」がすでに限界に来ていることは自明だ。そしてこのことは、筆者のみならず、多くの方々がすでに感じていることだろう。

 だが翻って、自分自身の行動はどうだろうか。「楽になる」ために何かをする、という行動をとっていないだろうか。

 現在の状況では、就職活動は「正社員になって安心する」ために行なうものではない。その次のステップのためのチャンスをもらう場でしかないのだ。

 そう考えるならば、正社員になれたなら、それからが勝負のはずだ。そこからどれだけのスキルと知識を身につけ、人脈を広げ、会社のための価値を創出できる人材になれるか。正社員とは、そのためのチャンスを他の人よりも多くもらっているだけのことなのだ。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[早稲田大学 政治経済学術院 客員主任研究員]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学人間・環境学研究科助教を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

職場で「不快感」を訴える社員が急増している。成果主義的な評価制度を導入する企業が増えたことにより、チームワークよりも自分の業績を重視する社員が増え、「ギスギス職場」が生まれているからだ。一方で、年功序列と終身雇用が崩壊しつつある職場では、職場の「世代間ギャップ」もかつてなく広がっている。こうした職場は結束やコミュニケーションを失い、社員の不快感は増していく。職場の不快感を取り除くには、制度的な「仕組み」を導入するだけでは不十分だ。部下1人1の「心」に効く、メンタル・マネジメントの方法論を上司が体系的に理解しておく必要がある。この連載では、日本の職場で起こりがちな「不快感」の臨床例を毎回わかりやすく紹介し、それを解決するメンタル・マネジメントの方法論を、社会心理学的な視点を織り交ぜながら、詳しく解説していく。

「組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」」

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