結果として、冒険しない、立ち向かわない、保守的な社員が多くなり、会社役員にもそういうタイプが増えてくる。堤防の内側で荒波に揉まれていなければ、そうなるのは当然だ。
産業の凋落に雇用のねじれ現象
すでに我々は限界を感じている
それでもバブル崩壊期までは、こうしたタイプであることにそれほど大きな問題はなかった。だが、グローバル化の波が押し寄せている現在、社員が、特に会社のトップがそういう行動規範に則っていては、会社は立ち行かない。
このことは、ソニー、パナソニック、シャープなど、かつて日本を代表する存在だった電機メーカー各社が苦境に陥っていることや、福島第一原子力発電所事故後の東京電力幹部の対応のマズさなどと、無関係ではないだろう。
さらにこのことは、堤防の内側で安穏としている正規雇用社員と、堤防の外側で波に揉まれている非正規社員との間に「ねじれ現象」を引き起こしている。優秀なのにいつまでも非正規雇用のままの社員がいる一方で、彼らより無能な正社員が「勝ち組」として生き残る。
このように考えれば、日本の「堤防型社会」がすでに限界に来ていることは自明だ。そしてこのことは、筆者のみならず、多くの方々がすでに感じていることだろう。
だが翻って、自分自身の行動はどうだろうか。「楽になる」ために何かをする、という行動をとっていないだろうか。
現在の状況では、就職活動は「正社員になって安心する」ために行なうものではない。その次のステップのためのチャンスをもらう場でしかないのだ。
そう考えるならば、正社員になれたなら、それからが勝負のはずだ。そこからどれだけのスキルと知識を身につけ、人脈を広げ、会社のための価値を創出できる人材になれるか。正社員とは、そのためのチャンスを他の人よりも多くもらっているだけのことなのだ。