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組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」
【第12回】 2012年11月14日
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渡部 幹 [早稲田大学 政治経済学術院 客員主任研究員]

良い大学、良い会社、良い結婚で生きていけるのか?
「堤防型社会」で負ける人、荒波に揉まれて勝つ人
――処方箋⑫“籍”を持つことで安心せずに“職人”の行動規範を持て

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 そうすると、籍を得た後の人々の行動は、「籍を失わないように」「堤防の外にはじき出されないように」という目的が第一となる。クビにならないように、退学にならないように、離婚だけはしないように……と。

 そういった価値観の下、社会制度もまた、堤防型の整備をする。終身雇用制、年功序列制、入社後の手厚い社会保障や福利厚生、大学や高校の入試、盛大な結婚式なども、全て「堤防の内側で安心」、裏を返せば「堤防の外側に行けば人生終わり」という状況をつくり出すのを、助長するものだった。

「投げ出されない」ことが重要
堤防型社会の価値観と社会制度

 この価値観と社会制度のマッチングは、戦後の日本ではうまく機能してきたと言ってよいだろう。熾烈な受験競争に勝ち残った若者は、一流大学という「堤防」の内側に入り、その後さらなる「堤防」の内側でより強固な安心を得るための「一流企業入社」を目指す。

 また、結婚して家を持つという行動が社会的な信用につながるため、結婚式には親戚、仕事関連の人を招き、相当なコストをかける。このことは、婚姻関係という「堤防」の堰を高くし、離婚する際の心理的、経済的なコストを高くすることになる。

 結果として、離婚することのハードルが上がり、「家庭内離婚」状態でも正式な離婚はしないという、「堤防から出ない」選択が増える。

 堤防の中で安心に浸ることのできる人々の行動規範は、「堤防の外に投げ出されないこと」に尽きる。

 会社をクビにならないように、大学は成績最低でも卒業はできるように、家庭内離婚でも表向きは結婚を続けていられるように、「ミスをしない」ことが最も重要となり、リスクを承知でチャレンジするような行動が否定されがちになる。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[早稲田大学 政治経済学術院 客員主任研究員]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学人間・環境学研究科助教を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

職場で「不快感」を訴える社員が急増している。成果主義的な評価制度を導入する企業が増えたことにより、チームワークよりも自分の業績を重視する社員が増え、「ギスギス職場」が生まれているからだ。一方で、年功序列と終身雇用が崩壊しつつある職場では、職場の「世代間ギャップ」もかつてなく広がっている。こうした職場は結束やコミュニケーションを失い、社員の不快感は増していく。職場の不快感を取り除くには、制度的な「仕組み」を導入するだけでは不十分だ。部下1人1の「心」に効く、メンタル・マネジメントの方法論を上司が体系的に理解しておく必要がある。この連載では、日本の職場で起こりがちな「不快感」の臨床例を毎回わかりやすく紹介し、それを解決するメンタル・マネジメントの方法論を、社会心理学的な視点を織り交ぜながら、詳しく解説していく。

「組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」」

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