ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」
【第12回】 2012年11月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
渡部 幹 [早稲田大学 政治経済学術院 客員主任研究員]

良い大学、良い会社、良い結婚で生きていけるのか?
「堤防型社会」で負ける人、荒波に揉まれて勝つ人
――処方箋⑫“籍”を持つことで安心せずに“職人”の行動規範を持て

previous page
2
nextpage

 逆に考えれば、教育を充実させれば日本の大学が世界トップ20に入ることも可能であるはずだ。しかし、海外のランキング評では「日本の大学に教育の質を求めるのは無理」とまで言われている。

 この大学教育の質の低さと前述の商社員の話は、無関係ではないと筆者は考えている。それは日本の持つ、ある種の「文化性」のために起こったものだ。

良い大学、良い会社、良い結婚――。
籍を持つことで安心する「堤防型社会」

 その文化性とは、日本が「籍」を持つことで安心を得る「堤防型社会」であることだ。

 少なくとも、戦後から現在にかけて日本人が求めているのは、「良い大学に入って安心」「良い会社に入って安心」「良い人と結婚して安心」など、「あるところに籍を置けば、とりあえずその後は安心できる」という人生である。それはつまり、籍を置くことは、堤防の内側に入ることであり、後は堤防の外のことを考えずに、安心していられる人生を求めることである。

 この価値観は、日本の社会制度と日本人の心性に大きな影響を及ぼしてきたと筆者は考える。日本人が人生において、最も努力し、最も真剣に決断するのが、この「籍」を得るための行動だからだ。

 高校や大学の入試、就職活動、結婚、子供の学校選びなどなど、何かの「籍」を得るためには多大な才能と努力が必要とされる。そして「籍」を得て、堤防の内側に入った後は安心していられる。

 逆に「籍」を得られない人は、「負け組」のレッテルを貼られる。この見方からすると、いわゆる「Fラン大学」(偏差値の低い大学)の学生や「浪人」は、良い大学の「籍」を得られなかった人々だ。

 また、いわゆる「派遣さん」と呼ばれる非正規雇用社員は、正規雇用という「籍」を得られない人々だ。婚活を続けていても良い伴侶を得られない人は、文字通り「籍」を入れられない人である。

previous page
2
nextpage
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング

話題の記事


渡部 幹(わたべ・もとき)
[早稲田大学 政治経済学術院 客員主任研究員]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学人間・環境学研究科助教を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

職場で「不快感」を訴える社員が急増している。成果主義的な評価制度を導入する企業が増えたことにより、チームワークよりも自分の業績を重視する社員が増え、「ギスギス職場」が生まれているからだ。一方で、年功序列と終身雇用が崩壊しつつある職場では、職場の「世代間ギャップ」もかつてなく広がっている。こうした職場は結束やコミュニケーションを失い、社員の不快感は増していく。職場の不快感を取り除くには、制度的な「仕組み」を導入するだけでは不十分だ。部下1人1の「心」に効く、メンタル・マネジメントの方法論を上司が体系的に理解しておく必要がある。この連載では、日本の職場で起こりがちな「不快感」の臨床例を毎回わかりやすく紹介し、それを解決するメンタル・マネジメントの方法論を、社会心理学的な視点を織り交ぜながら、詳しく解説していく。

「組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」」

⇒バックナンバー一覧