そっちこそ俺の華麗な剣捌きを見て腰抜かすなよ 無駄だろうな。ここはもともとプレイヤーを落っことすためのトラップだろう。そんな手軽な方法で脱出できるとは思えないよ リズは怒り顔のほうが似合ってるぜ。その意気だ ……もうちょっと助走距離があればイケたんだよ ま、ともかく、こう暗くなっちゃ今日はここで野営だな。幸いこの穴にはモンスターはポップしないみたいだし ダンジョンで夜明かしは日常茶飯事だからな そうか……リズは職人クラスだもんな。ダンジョン潜ってると、行きずりのプレイヤーと野良パーティー組んで野営するとか、けっこうあるよ 高級品なんだぜ。断熱は完璧だし、対アクティブモンスター用のハイディング効果つきだ ……誰かを見殺しにするくらいなら、一緒に死んだほうがずっとましだ。それがリズみたいな女の子なら尚更、な とまあ、そういうわけだ。――この剣の鞘が要るなぁ。見繕ってもらえる? あそこから……街じゅう眺めて、見つけた 今日からこの剣が俺の相棒だ。代金は……向こうの世界で払うよ 昨日、村で聞いたウワサなんだけどな……。この辺の、森が深くなってるとこ……。出るんだってさ――幽霊 ちゃうちゃう、ホンモノさ。プレイヤー……人間の、幽霊。女の子だって 笑いごとじゃないぞ。それにびっくりして手を滑らせて、見事に落っこちてな…… うん。死ぬと思った。テレポートがあと三秒遅れてたら戦死者リストに仲間入りさ そうか。そこまでの覚悟なら俺は止めん。何事も経験だ 晩飯は激辛フルコースに挑戦しような アスナ、一応すぐ武装できるように準備しといてくれ。街からは出ないつもりだけど……あそこは《軍》のテリトリーだからな…… そんなこと、ないです。サーシャさんは立派に戦ってる……俺なんかより、ずっと あの武器は、必要パラメータが高すぎて君じゃ装備できない。俺たちが助けに行くよ。こう見えてもこのお姉ちゃんは無茶苦茶強いんだぞ 疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ。行こう、きっと何とかなるさ うむ、きっと将来はいい剣士になる カエルの肉!ゲテモノなほど旨いって言うからな、あとで料理してくれよ こいつ、やばい。俺の識別スキルでもデータが見えない。強さ的には多分九十層クラスだ…… 俺が時間を稼ぐから、早く逃げろ!! ああ……。ユイは俺たちの子供だ。家に帰ろう。みんなで暮らそう……いつまでも…… そういつもいつも……思い通りになると思うなよ!! ぶっちゃけて話そうぜ。俺がアルゴからクリスマスボスの情報を買った、っていう情報をお前が買った……という情報を俺も買ったのさ ……この世界で死んだあと実際にどうなるのか、知ってる奴はここには一人も居ないんだ それを言うなら、まだ半年だ。忘れられるわけないだろうが……全滅したんだぞ、俺以外…… そうじゃないんだ……俺の責任だ。前線に上るのを止めることも、宝箱を無視させることも、アラーム鳴った後でさえ全員を脱出させることだって、俺にはできたはずなんだ…… ……君は死なないよ ……それじゃあ……それじゃあ、意味ないんだよ……俺独りでやらなきゃ…… ――全員斬るか 俺、すっかり泣き虫になっちゃったよ……、アスナ ……いやぁ、参った。スグは強いな、ヒースクリフなんか目じゃないぜ ち、ちがう!!長年の習慣が…… でも、やっぱり楽しいな。またやってみようかな、剣道…… ごめん……ごめんアスナ……俺……なんにもできないよ…… ど……どういうことだこれは…… ……相変わらず不景気な店だな。よく二年も潰れずに残ってたもんだ アルフ……ヘイム・オンライン?……どういう意味だ? そりゃ確かにハードだ。でも、いくらハイスペックでも人気出ないだろ、そんなマニア向けの仕様じゃ そそっかしい奴だなぁ。もっと落ち着いて食え 俺だよ……ユイ。解るか……? そ、そうか。ううむ……こりゃもうビーターというよりチーターだよな…… おお、戦闘中かな。見に行こうぜ うう、いてて……。着陸がミソだなこれは…… 重戦士三人で女の子独りを襲うのはちょっとカッコよくないなぁ ええと……あの人たち、斬ってもいいのかな? どうする?あんたも戦う? うーん、俺的には正義の騎士が悪漢からお姫様を助けた、っていう場面なんだけどな ……そうか、御免な。せっかく会えたのにな……。またすぐ戻ってくるよ、ユイに会いに 夢じゃない……すぐに現実にしてみせるさ…… 他のプレイヤーを、あんたの大事な剣や鎧みたいに、装備欄にロックしとくことはできないって言ったのさ 人間界はもうちょっとややこしい場所なんだよ。気安くそんな真似したらハラスメントでバンされちゃうよ 俺が生きてる間は、パーティーメンバーを殺させやしない。それだけは絶対嫌だ いやー、そこまで考えてなかったって言うか……俺、たまにあるんだよな……。戦闘中にブチ切れて、記憶が飛んでたりとか…… がおう!! 殺伐とした戦闘のあとの空気を和ませようというウィットに満ちたジョークじゃないか…… ――そんなふうに言う奴には、嫌っていうほど出くわしたよ。一面ではそれも真実だ、俺も昔はそう思っていた。でも、そうじゃないんだ。仮想世界だからこそ、どんなに愚かしく見えても、守らなきゃならないものがある。俺はそれを――大切な人に教わった…… ごめん、偉そうなこと言って。悪い癖なんだ 俺たちより先行してるのかどうか微妙だな。ともかく急ぐしかないか。ユイ、サーチ圏内に大人数の反応があったら知らせてくれ ここで逃げ出すのは性分じゃないんでね 双方、剣を引け!! この野郎……。絶対泣かせてやる 勿論大嘘だ。ブラフ、ハッタリ、ネゴシエーション 構わない。俺にはもう必要ない ……馬鹿馬鹿しい お前もその野武士ヅラのほうが十倍似合ってるよ! 珍しいな、アスナ。こんな所に顔を出すなんて 取引だ。こいつを料理してくれたら一口食わせてやる 感想文を八百字以内で書いてきてやるよ 悪いな、お前さんのトコの副団長は、今日は俺の貸切りなんだ あんたよりはマトモに務まるよ 武器を替えて仕切りなおすなら付き合うけど……もういいんじゃないかな まだ生きてたか、クライン おい、何とか言え。ラグってんのか? ま、まあ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく ボスにちょっかい出す気ならやめといたほうがいいぜ ……あんまり締め付けると、俺のHPがなくなるぞ ……こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、しつこく聞かれたり……いろいろあるだろう、その…… 何でもするさ。大事な……攻略パートナーの為だからな さっさと用を済ませて、なんか暖かいものでも食いに行こうぜ おい、あそこで入場チケット売ってるのKoBの人間じゃないか!?何でこんなイベントになってるんだ!? ……逃げようアスナ。二十層あたりの広い田舎に隠れて畑を耕そう …………もうずいぶん昔……、一年以上前かな。一度だけギルドに入ってたことがある…… 外周から飛び降りた。最期まで俺を呪っていただろう……な…… 見たいと言うならみせるさ。ただ、今更こんな低層の迷宮で時間を潰すのはごめんだな、一気に突破するけど構わないだろう? お前みたいな奴がなんでKoBに入った。犯罪者ギルドのほうがよっぽど似合いだぜ その……エンブレムは……《ラフィン・コフィン》の……!? 俺の命は君のものだ、アスナ。だから君のために使う。最後の瞬間まで一緒にいる ……君は……何があろうと還してみせる……あの世界に…… いや……、クラディールが狙ったのも、そして奴をあそこまで駆り立てたのも俺だ。あれは俺の戦いだったんだ 二十二層の南西エリアの、森と湖がいっぱいあるとこ……あそこに小さい村があるんだ。モンスターも出ないし、いい所だよ。ログキャビンがいくつか売りに出てた。……二人でそこに引っ越そう。それで…… いい眺めだからってあんまり外周に近づいて落っこちるなよ ……俺はそんなふうに考えたこと無かったな……。強くなるのは自分が生き残るためってのが第一だった ず、ずずずるいぞ!!自分だけ逃げるなよ!! おお、陸を走っている……肺魚なのかなぁ…… ……すまんアスナ、俺そんな深い意味で言ったんじゃなくて、ただ昼寝したかっただけだと思う…… 協力はさせて貰いますよ。だが、俺にとってはアスナの安全が最優先です。もし危険な状況になったら、パーティー全体よりも彼女を守ります ……ごめん……俺、弱気になってる。本心では、二人で逃げたいと思ってるんだ。アスナにも死んで欲しくないし、俺も死にたくない。現実世界に…… ……つまり……ゲームをクリアできるにせよできないにせよ、それとは関係なくタイムリミットは存在する……ってことか…… ……この世界に来てからずっと疑問に思っていたことがあった……。あいつは今、どこから俺たちを観察し、世界を調整してるんだろう、ってな。でも俺は単純な真理を忘れていたよ。どんな子供でも知ってることさ ごめんな。ここで逃げるわけには……いかないんだ…… ああ……。必ず勝つ。勝ってこの世界を終わらせる 桐ヶ谷……桐ヶ谷和人。多分先月で十六歳 ごめん……ごめん……。君を……あの世界に……還すって……約束したのに……俺は…… ……すまなかった。君の友達、助けられなかった…… ……マンガじゃあるまいしなぁ。……笑わないって約束するなら、言う 絶対生き返らせられるさ。心配ないよ そうか。――どんなオンラインゲームでも、キャラクターに身をやつすと人格が変わるプレイヤーは多い。善人になる奴、悪人になる奴……。それをロールプレイと、従来は言ってたんだろうけどな。でも俺はSAOの場合は違うと思う 俺は、ここで悪事を働くプレイヤーは、現実世界でも腹の底から腐った奴なんだと思ってる ……俺だって、とても人のことは言えた義理じゃないんだ。人助けなんてろくにしたことないしな。仲間を――見殺しにしたことだって…… 君には慰められてばっかりだな。……そうかな……。そうだといいな そいつで気持ち悪がってたら、この先に進んだら大変だぞー。花が幾つもついてる奴や、食虫植物みたいなのや、ぬるぬるの触手が山ほど生えた奴まで…… そうは行かないな、ロザリアさん。いや――犯罪者ギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん、と言ったほうがいいかな でもその男は、以来を引き受けた俺に向かって、あんたらを殺してくれとは言わなかった。黒鉄宮の牢獄に入れてくれと、そう言ったよ。――あんたに、奴の気持ちが解るか? だいじょうぶ。俺が逃げろ、と言うまでは、結晶を用意してそこで見てればいいよ ――十秒あたり400、ってとこか。それがあんたら九人が俺に与えるダメージの総量だ。俺のレベルは78、ヒットポイントは14500……さらにバトルヒーリングスキルによる自動回復が十秒で600ポイントある。何時間攻撃しても俺は倒せないよ ああ……。五日も前線から離れちゃったからな。すぐに、攻略に戻らないと…… レベルなんてただの数字だよ。この世界での強さは単なる幻想に過ぎない。そんなものよりもっと大事なものがある。だから、次は現実世界で会おう。そうしたら、また同じように友達になれるよ ご、ごめん!まさか当てたほうが折れるとは思わなくて…… ……そりゃ構わないけどね。俺一人のほうがいいんじゃないのか?足手まといは御免だぜ