ガザ攻撃:仲介役不在 「アラブの春」で親イスラエル消え
毎日新聞 2012年11月18日 08時30分
【カイロ前田英司】イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ攻撃は、昨年の民主化要求運動「アラブの春」により、周辺国にイスラエルとの明確なパイプを持つ「仲介役」が不在の中で、激化の様相を強めている。米国はエジプトやトルコの調停に期待するが、両国はかつての親イスラエルの立場になく、ガザへの連帯に傾斜する。イスラエルは米国の理解を後ろ盾に攻撃を強めるが、「出口」を見誤れば泥沼化する恐れもある。
今回の衝突は、ガザ側からの散発的ロケット弾攻撃に対し、イスラエル側が14日に大規模空爆を始めたことで激化した。
エジプト国営の中東通信によると、モルシ大統領は一連のガザ攻撃を「あからさまな人権侵害」と非難。「エジプトは以前と違う。アラブ諸国とて同じではない」と指摘し、民主化闘争で倒れた親米・親イスラエルのムバラク前政権との違いをアピールした。
ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは、モルシ大統領の出身母体であるエジプトの原理主義組織ムスリム同胞団の流れをくむ。
一方、トルコのエルドアン首相は17日、エジプトを訪問。モルシ氏、カタールのハマド首長とガザ情勢を協議した。
トルコは非アラブの地域大国としてイスラエルと良好な関係を維持していたが、イスラエル軍による前回08年末の大規模なガザ侵攻以降、対立が先鋭化した。トルコ紙ヒュリエト(電子版)によると、エルドアン首相は今回のガザ攻撃と来年1月に控えるイスラエル総選挙との関連を指摘し、「ネタニヤフ政権は(安全保障を支持獲得に)利用している」と批判した。
エジプトのカンディール首相に続き、チュニジアのアブデッサラーム外相が17日、ガザを訪れて「イスラエルは地域情勢の変化を理解すべきだ」と訴えた。チュニジアもアラブの春で親欧米のベンアリ前政権が崩壊した。