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警告
この作品には 〔残酷描写〕
〔15歳未満の方の閲覧にふさわしくない表現〕が含まれています。
15歳未満の方はすぐに移動してください。
苦手な方はご注意ください。
怖がる少女を幸せにする話
作者:雨月
悲しいのなら優しさを
傷ついたのなら癒しを
淋しいのならぬくもりを
少女には笑みを

差し上げたくなるわけです!
苦しくて、悲しくて、仕方なかったのです。
ですが、物語の中なら誰でも幸せにできるのです。
するしかないでしょう!←

主人公、傷ついてます。
ローテンションです。
怖がってます。
それでもOKならどうぞ。



怖い。
この世界は怖い。
死ぬ勇気さえもない私は、今日を生きることだけを考える。



元いた世界のことを思う。
私は普通だった。
両親がいて、友達がいて、苦手教科に頭を悩ませながらも笑っていた。
突然だった。
塾からの帰り、遅くなってしまったと街灯の下を走っていた私はいつの間にか森にいた。

いつの間にか異世界にいた私は、混乱のうちに冒険者ギルドに所属している男たちに保護された。
幸いにも魔術の才能があった私は、この街の冒険者ギルド長のつてで、魔術師見習いとして面倒を見てくれる保護者の下で住むことになった。

「おぉ、またやってきたんか。頑張ってるかぁ?」

薄汚れた簡易の鎧をまとう髭面の男が声をかけてきた。
ギルドの依頼掲示板を見ていた私の頭を撫でる、というよりは、ぐしゃぐしゃにする。

「え、えぇ。」

怖い。
粗野な男たちは、いとも簡単に魔獣を狩り、賊を倒し殺す。
目の当たりにしてきて、自分も少しだが経験を積んできたが、未だに恐怖は薄れない。

怖い。

身長の差が激しいのも原因の一つかもしれない。
私の身長は158センチ。
16歳でこの身長だから、もう伸びないかもしれない。
周り、特にギルドの男たちは身長は高い。
180センチは低い方で、200センチ、2メートルを越す大男がうようよいる。
壁に囲まれたような形になる私は、引きつらないように笑みを浮かべるだけで精一杯だった。

怖い。

でも、死ぬ勇気さえない。

手に慣れ始めた短剣は、未だに小さな獣しかさばけず、使える魔法は初級をようやく出るくらいで、一人で旅をするまでの攻撃力のある魔法はまだ使えない。

関わり合いたくない。

それでも生きていくためには、ギルドの依頼を週に一度は受けねばならず、ランクの低い依頼しか受けられない私は数をこなさなければいけない。

ギルドの男たちは、何かにつけて私をかまう。
小さい私が珍しいのかもしれない。
こちらは、女性でさえも背が高い。
170センチの女性が普通の中で私がいると、まさに子供と大人だ。
普通の獣とは違う、魔獣という魔力を帯びた獣がすぐ街の外にいる世界だからか、こちらの人々は気性が荒い。
特に男性の気性は荒く、すぐに喧嘩になり、血が飛びちる。
それでも周りの男たちは、はやし立て笑う。
魔獣を狩る、冒険者ギルドだからこそ余計に気性が荒いと、近所のおばさんは笑っていたが、街の中でも、大通りを少し離れたあたりでは同じような光景が繰り広げられていたことを知っている。

怖い。

私は絶対的な弱者だった。
名の売れている保護者のおかげで、ギリギリ何もされずに生きているという現状だ。
それでも、保護者が私に大して関心を持っていないことを知られたら、この現状も変わってしまうかもしれない。
身寄りも親もいない、異世界からの少女。
敵対したいとは思わない保護者がいるから手を出さない。
保護者の目の届かないところだったら?

引きつらないように気をつけながら愛想笑いを浮かべる私に、何度か逃げたくなるような値踏みをされる目線を投げられたことがある。

この世界は、私に優しくない。

それでも、死ぬ勇気はない。

簡単に命を終わらせられる野うさぎに止めをさす。
今日の夕飯だ。
未だ暖かさを残す身体に自分が重なる。

こうなりたくはない。

何も抵抗できずに、小さく鳴いて息を止める姿に、強く、そう思う。

怖い。
この世界は、怖い。

気をつけていたはずだった。
私はこの世界が怖かったのだから。

「い、やぁ・・・」

のしかかる男の体重。
口に手を抑えられ、必死に身をよじる。
埃っぽい匂いと男の汗の臭いが強く感じられ、鳥肌が立つ。
震えが止まらない。
それでも、私は、簡単に殺される野うさぎにはなりたくなかった。
必死に魔力を手のひらに集め、何かを早口に言い募る男に向けて飛ばした。
言い訳めいた言葉で私を押し倒し、身体をまさぐってきた男に、私は、初めて魔法を ”人” に向けて放った。

それは簡単な発光魔法だった。
ただし、恐怖と混乱の中、必死に集めた魔力は発光を強烈にし、衝撃を伴った。
突然の眩い光に気づいた人々が集まり、男は私の上から飛ばされ、駆けつけた保護者によってすぐに拘束された。

私はその日、初めて保護者の胸にすがりついて泣いた。

冷ややかな美貌の人嫌いの魔術師である保護者は、男性だったから。
細身の体でも、180センチと低めの身長でも、不用意に近づくのは怖かった。
慰めるように頭を撫でる、温かい手に、久しぶりの人肌に、私は意識を飛ばした。


それからしばらくは、保護者の家から出なかった。
出させてもらえなかったとも言うが、私は出る気がなかった。
食料の買い出しも、私の仕事だったが、保護者が全て家に届けてもらえるように手配してくれた。
温かい日差しを浴びつつ、魔法書を読み、わからぬところは保護者に少しずつ教えてもらう日々に、少しずつ、少しずつだが、傷を癒していった。
ようやく街の中で買い物出来るくらいになった頃、その少年と出会った。
少年といえど、身長は保護者と同じ身長だったが、ひだまりのように笑う彼の雰囲気が、怖い、この世界とは少し違うように思えて、会うたびに話すようになった。

幾度か会ってわかったことがある。
彼は、この街にお忍びで来ている貴族だと、なんとなく理解した。
隠しているつもりもないのか、柔らかな雰囲気と綺麗な所作と話し方。
言わないから、こちらも尋ねない。
貴族相手にどんな言葉を使ったらいいかわからないから。
階級社会なんてなかった世界から来てわかったことは、貴族に逆らうということは、簡単に殺してもらえる野うさぎが幸せに思えるくらいの目には合うということだった。
”貴族”に逆らってはいけない。
でも、街の中で会って話す少年には、言いたいことを言ってもいい。
少し、心を許してしまったのだと思う。
はしゃいでいたのだと思う。
物珍しい少女だと、その街の権力者に目をつけられるほどに。

私は、保護者の青年をじっと見つめた。
彼は、目をそらさなかった。
自分が言った言葉が、私にとってどれだけ辛いかを知っていていた。
どれだけ残酷なのかを。
街の権力者は、この街だけではなく、国自体にも幅を利かせる有力者で、名を売る魔術師でも簡単に反抗できる相手ではなく、彼が私に何になれと言っているのかも、わかっていた。
有力者が私と話してみたいと言ったのだと と彼は私に言った。
その言葉通りだったら、彼はこんなに辛そうに、痛みを耐えるように言わない。
彼を親のように、兄のように慕い始めた私を、彼も娘のように、妹のように感じてくれているのだと、その時実感した。

私は、野うさぎになりたくなかった。
野うさぎでは、なくなったと思った。

でも、それは思っていただけだった。

私は簡単にいいようにされてしまう弱者で、そして、女だった。

気付いたら、少年によく会う噴水広場まで来ていた。
少年はいなかった。
そろそろこの街を立つのだと言っていた。
今日だったのだろうか。
水が空に弧を描く噴水に近づくと、青白い顔の自分が映った。
私は、慰み者になるのか。
保護者の青年の元に帰ることは許されるのだろうか。
そのまま囲われてしまうのだろうか。
あぁ、でも、少年がこの街を立っていたらいい。
会えない私を待つ少年がいる と思うと、何ふり構わず脱走してでもここに来ていただろう。
少年がここを立てば、私は彼の思い出の中で、綺麗な私だけを残すことができる。

あぁ、それはなんて甘美なのだろうか。

ふと、水面が揺れた。
雨でも降ってきたのかと思ったら、水面に映る私は泣いていた。

「どうしたの?」

涙を拭うこともせず、振り返ってしまった。
少年が驚いたように目を開く。
温かい炎のような朱金色の髪は日に煌き、優しい琥珀色の瞳に青白い顔で涙を流す私が映った。

「何があったの?何かされた?」

問いただす少年に首を振り、目にゴミが入ったと、笑った。
ちゃんと笑えたと思ったのに、少年の歪んだ顔を見る限り、失敗したらしい。
その日は、温かい飲み物と甘いお菓子を手速く買い、私に持たせてすぐに家に帰らされた。
初めて私が住む保護者の家まで送ってくれたというのに、私がどこに住んでいるかなど知っているようだった。

「君の保護者は有名だから。」

と、不思議そうに見た私に彼は笑った。
その笑顔に安堵し、別れを告げると、彼は また明日 と言った。
すぐにこの街を立つのだと思っていた私は彼に会える日が長くなるのを嬉しく、同時に不安に思った。
彼が立つ前に、私が彼の前から消えなくてはいけないことになることを。
かの有力者の下に呼ばれたのは、一週間後だったから。


次に彼に会ったとき、彼は、それは豪華な衣装に身を包んでいた。
金糸をたっぷり使った刺繍細やかな衣装。
彼の背後に膝まづく騎士達。

「僕、実は王子様だったんだ。」

冗談っぽく、片目をつぶる仕草に、思わず声を上げて笑ってしまったが、 はた と夢ではないことを、彼の手が私の頬に触れたことで気づいた。

「ねぇ、僕のものにならない?」

怖い、怖い、この世界。
きっと彼のものになったとしても、この世界はきっと怖いままなのだろう。

けれど、

「この前言っていた、林檎と蜂蜜のパイはもっと改良が必要だと思うんだ。」

日だまりのように暖かく笑うこの人がいるのなら、権力や陰湿な陰謀が渦巻く世界だって、今までのように 怖い 怖い と泣いて叫んで

そして

「力なきうさぎのままでいいのなら、一緒に林檎と蜂蜜のパイを改良しましょう。」

笑って生きていけると思った。




震える身体を抱きしめる。
愛しく可愛い僕のうさぎ。
その黒い瞳をきらめかせて笑ってほしい。
君が僕に笑いかけてくれるのなら、君が ”怖い”と思うものを全てなくそう。
もう二度と、絶望にその瞳を染めないように。



以下、物語の雰囲気を壊す裏設定?です。
壊れてもいい方はどうそ。




保護者。
少女を保護して、襲った男を拘束したあとフルボッコしました。
もう、ぼっこぼこに。
ギルド関係者と保護者宅周辺の男性連中に戦慄が走りました。
え、ロリコン?いや、聞こえて、ちょ、やめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
みたいな。
引き取る経緯としては、保護された時に恐慌状態な少女に気づき、他の奴よりもましだろう と引き取ったはいいが、年頃の少女との接し方なんて全く分からず、 まぁ、そのうち慣れるだろう と野良猫扱い。でも、鈴(安全装置)付き。
魔法やら魔法技術やらの研究はばかりやりすぎて、権力者たちとの付き合いとかをおろそかにしていて、権力者にゴリ押しされて、少女を差し出さなきゃあかんくなって、嫌々ながらもそういう付き合いの必要性に思い至り、今後頑張る。
もし次に少女が困ったときに助けれるように。
実は結構な年寄りだけど、ヒッキーすぎて人付き合いが下手。
でも、懐いた猫が可愛くて(主人公)娘みたいな妹みたいな、不思議な関係が居心地よくて気に入っていたのに、その関係を壊されそうになって、やっと必要性に気づく という。
魔術とか魔法とか、すごい。でも、宮廷魔術師とかにはならなかった。人付き合いとかの関係で。

王子。
権力者の動向の視察の際、主人公と出会う。
基本、くだらない話ばかりしている。とても幸せそう。
怯えるうさぎ とか思っていたら懐いてきて手放せなくなってきた。
というタイミングで、権力者が主人公に目をつけられたと聞いて、側近たちの前で よし、潰そう! と早速実行に移そうとして側近たちに 待て待て待て待て待て!! とか必死に止められてやっと気持ちに気づく。

ようやく、あいつを潰せそうなんだ・・・ がプロポーズっぽい言葉。

それでも、えっ・・・(ドキッ) とかなるのがうちの少女ちゃんな訳です(笑)
国にはびこるしつこい輩だということを、後々知り、そんな人間から自分なんかを守るためだけに敵対し、潰そうとしてくれたことに愛を感じた訳です。
第一王子・・・より、第三王子くらいなら幸せになるかな?
次期宰相候補とか、大公としての実績作りとしてもいい案だと側近からは思われているけど、王子の中では、99% 僕のうさぎさんを苦しめた罪を購ってもらおうか?(にこっ)←冷笑  みたいな。
あとの1%は、今後の未来(二人でラブラブ)への実績作りの為 くらいかなぁ。
真綿でくるまるような愛しかたしてくれます。
怖い、怖い世界で、温めてくれる優しい人 って認識されてます。
側近さんたち一同「騙されてる、騙されてる・・・!」とか言ってるけど、王子の笑みで黙殺です。
幸せならそれでいい・・・!! ←
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