在日韓国青年会が、昨年5月から進めてきた「我々の歴史を伝える運動―自分探しの旅」全国キャラバンがこのほど終了しました。北は北海道から南は九州まで、全国各地を訪ねて、その地に住む同胞1世が歩んできた歴史を調査しました。
■新たなコミュニティー構築へ
調査に当たった青年は、本国から渡ってきた1世たちが築いた在日同胞社会の広がりに驚いたといいます。強制連行や徴用、本国での土地収奪によって生活の糧を奪われた同胞たちの渡日から始まった在日同胞社会ですが、1世たちは日本という異国で、したたかに生き抜いてきました。解放後、それこそ何もない中から、ヤミ米を運び、密造酒を作り、豚を飼って自らの生活を築き上げてきたのです。
行政から何の支援も受けられない日本社会の中のアウトサイダーとして生き抜くために、必然の結果として集落は密集し、同胞相互の互助精神によって、運命共同体と呼べるコミュニティーが形成されていったのです。これがまさに在日同胞社会の本質的な原点ではなかったでしょうか。
調査に当たった青年は半面、同胞のつながりの中で築かれた在日同胞コミュニティーが、時間を追うごとに崩れつつある状況も痛感したと指摘しています。かつてあった集落は、年代を追うごとに同胞が離れ、今では全く姿を消した地域もあることが調査の過程で分かったと言います。多くの同胞がより広範囲に分散して居住するようになった結果からです。
そして、分散居住による集落の風化だけにとどまらず、同胞社会のコミュニティーとの接触が希薄化することによって、同胞同士の連帯感を育むことが困難となっています。その子孫においてはさらにコミュニティーと乖離していかざるを得ない現状を認識させられたようです。
その結果、今こそ新たな同胞のコミュニティーを再生する時であると訴えています。同胞社会の将来を真剣に考える青年の切実な思いでしょうし、コミュニティー再生が可能だという手応えを感じたからに他なりません。
■団員とのつながり深めて
民団は、団員の相互扶助のために様々な活動を展開してきました。同胞同士の絆を深めるために開かれてきた「10月のマダン」をはじめ歳末の相互扶助、敬老会、若年向けには林間・臨海学校やクリスマスなどオリニの企画など各世代に対応した催しを実施してきました。日本社会の中にあって、在日韓国人として民族的に生きたいという同胞が存在する限り、私たちは歩みを止めるわけにはいかないのです。
コミュニティーの再生に欠かせないのは、同胞を糾合する精神的な支えと物理的な援助です。今後も団員一人ひとりとのつながりを深め、より有機的な同胞社会をめざしましょう。
(2002.01.16 民団新聞)
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