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狛犬 学術的に比較

2012年11月14日

写真

県内の特徴的な狛犬の写真パネルと、調査を進めている主幹学芸員の石田敏紀さん=鳥取市東町2丁目の県立博物館

 全国多くの社寺にある石像「狛犬(こま・いぬ)」の学術的な比較研究を、県立博物館が進めている。県内では、これまで約700組を調べて、島根の影響を受けた物が多いことを確認した。同館主幹学芸員の石田敏紀さん(47)は「地域の歴史文化を知る入り口に使え、『狛犬学』にでも育てばおもしろい」と話す。25日には、県外の研究者を招き、同館でシンポジウムがある。

 狛犬は各地に愛好家がおり、写真集も多い。形によって「出雲型」「なにわ型」などの呼び名もあるが、統一様式で調べられていないため比較が難しく、型の定義も定まっていないという。

 そこで石田さんは、狛犬の比較分類に目をつけ、2010年度から調査を開始。手始めに、方言調査などで博物館に協力している調査員約100人に、県内の社寺にある狛犬を決まった角度から写真撮影してもらい、寸法や年代、由来などの情報を集めた。

 それらを比較した結果、現存する県内最古の狛犬は貴布禰(き・ふ・ね)神社(米子市)にある1784年制作の2体で、各像の制作年代によって県西部から東部へと広がってきた様子がつかめた。通常は一角獣の狛犬と獅子で一対だが、鳥取では大半が2体とも獅子像で、筆先のように立った尾の形などの輪郭に出雲地方で多い特徴が見られた。石田さんは「鳥取へは島根から20〜30年遅れて伝わったようだ」と推測している。

 また、三朝町や日南町の江戸時代の像に、大阪や広島県尾道市などで多い型が存在。オオクニヌシをまつる鷲峰(じゅう・ぼう)神社(鳥取市鹿野町)には、江戸時代の石工・川六が作った犬のチンの狛犬があった。オオクニヌシが「イノシシ」がらみで命を落としたため、同音のシシを避けたとみられ、江戸時代の庶民が「古事記」の内容を知っていたことをうかがわせている。

 石田さんは「地元の氏子らが奉納する狛犬をたどれば、その地域の当時の経済状況や文化水準、地域間交流の様子など、幅広く推測できる。地元の歴史をより深く知ってもらう取っかかりとして活用できる」という。いずれ、調査結果をインターネットで公開したいとしている。

 シンポジウムは、25日午後2時からで、タイトルは「岡山・島根・奈良の狛犬大集合」。参加無料。常設展示室の一角では、県内の狛犬の写真パネルと解説を12月3日まで展示している。(中田和宏)

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