FILE008:「この形 ありえない・・・人間は失敗作だ」
2007年7月27日放送
遠藤秀紀(比較解剖学)
サルなど霊長類に関する研究で名高い京都大学霊長類研究所。ここに自ら「解剖男」と称する教授がいる。遠藤秀紀。「パンダの手の‘第七の指’」の発見で世界的に知られる解剖学者だ。
実は人間が編んだ動物の進化の歴史ほど不完全なものはない。生物進化の樹形図は次々と塗り替えられている。「動物はなぜこんな形をしているのか?」遠藤はあらゆる動物の死体を解剖しながら、動物の「身体」の数億年に遡る進化の歴史をよみがえらせていく。
そして今、遠藤は独自の人間観をもつに至った。それは「ホモサピエンスとは行き詰まった失敗作である」というものだ。遠藤は考える。「我々ホモサピエンスには種としてどんな未来が待っているのだろうか?」
実は爆笑問題と遠藤は同い年。方やメディアの最前線を突っ走り、方やひたすら動物と向き合い進化の謎に挑む人生を送る。あまりに違う道を歩んできた彼らは同世代として意気投合するのか、反目するのか?そしてお互いの考えるヒトの未来は?
遠藤秀紀(えんどうひでき)
爆笑問題の対戦感想
田中:先生、キャラが最高ですね。面白い人だなと思ってね、話しやすかったですね。動物とか子どもの頃から好きだったので、今日の話は特に興味深い感じがありました。フェイフェイとかホワンホワンとかね、びっくりしましたよ。
太田:まぁな。それと、動物園の話はすごく貴重だと思いますね。俺らがやっていることも、結局そういうジレンマの中でやっているわけでね。「どれだけ国家が文化を大切だと考えるのか」みたいなところのジレンマが、先生の中にものすごくあるのが伝わってきたし、俺の中にも同じようなものがあるんだよね。日本ってさ、しょうがないんだね、そういうのが特徴としてあって、余裕がないんだよ外国みたいに。ゆとりというかね。遠藤先生はやっぱり現場でいろんなことにもまれながら、それでも解剖を続けているっていうのは、素晴らしいですよ。
田中:そうそう。楽しかったよ。
太田:楽しいじゃ済まないけどね。考えさせられるものがありましたね。
ディレクター観戦後記
今回は番組始まって以来最も若い研究者の方、しかも爆笑問題のお2人と同い年。それぞれ全く違う道を歩んだ末にこの番組で出会うことになったわけですが、収録は最初から、昔の友達との再会を撮影しているような雰囲気。途中から「これ、深夜ラジオの収録じゃないの?」という気がしてくるほどの和気藹々とした状況で、番組担当者としてこの上ない至福のひと時をすごさせていただきました。その雰囲気をできるだけ壊さないように編集したつもりですが、いかがだったでしょうか?
遠藤先生を取材して何より驚かされたのは、その強烈なバイタリティーです。解剖学、鉄道はもちろんのこと、実は、怪獣に関しては映画制作のアドバイスまで手がけていらっしゃいますし、ひそかに小説も書いていらっしゃいます。一体どうやって時間をやりくりすれば、それだけたくさんのことをこなすことができるのかと思うほどです。そもそも、動物の死体を求めて日本のみならず世界に足を伸ばして研究をしているんですから(この番組が放送される頃、遠藤先生は東南アジアでフィールドワークをしているとのことです)。動物・鉄道・怪獣・小説・・・それぞれの分野で自分の美意識を追い求めている。私が思うに、遠藤先生はつまるところ、「美の求道者」なのです、たぶん。
収録終了後、遠藤先生に感想を聞いたところこんな答えが返ってきました。
「やっぱり同い年でしょ。非常におもしろかったのは、考えていることや悩んでいることって、仕事は違っても似た部分がとても多いんだなぁってこと。
「そういうのを、頬がピクピク動くところとか目の動きとか、そういうところで感じたかなぁ・・・」
恐るべし、解剖男!言葉にならない心の動きを、体の形から読み取っていたとは・・・。
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