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人口減少 ニッポンの未来
【第5回】 2012年11月16日
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西川敦子 [フリーライター]

人口が減るのに街は失業者であふれる!?
「雇用貧乏国」ニッポンの厳しすぎる未来

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 2004~2008年の平均上昇率を見ると、1.19%。今後もこのスピードで上昇するものと仮定すると、生産年齢の減少率0.9%を上回って進むことが考えられる。これなら、生産年齢人口が減ってもどうやらカバーできそうだね。

 ただ、困ったことがある。不足分をカバーできる分、就職できない人たちがあふれてしまうことだ。

馬田氏提供

 それを表しているのが上の図。一番上の点線は「労働意欲人口」を示している。失業者や専業主婦、お年寄りなど、働いていない人を含む「働きたい人全体の人数」だよ。そして下から2番目の点線は、実際の就業者数。見ての通り、2つの点線の間にはだいぶひらきがあるよね。

 つまり、失業問題は、生産年齢人口が減ってもこのままでは解消される見込みがない。それどころか、このグラフ以上に深刻なものになる可能性もある。

失業者がサービス産業に殺到する未来

 なんでこんなことが起きてしまうんだろう?

 「工場の機械化やロボット化によって、労働生産性が向上するから」というのは、もう説明したよね。ほかにも理由はいくつか考えられる。

 たとえば、2025年の国内の市場規模(いろいろなモノ、サービスの売り買いの額の大きさ)は、今より1割減るとされている。人口そのものが減るだけじゃなく、年金暮らしのお年寄りなど、買い物をひかえる人が多くなるからね。

 しかも今後は、家電製品や衣類など、いろいろなモノがますます海外から輸入されるようになる。安い海外製品に押されて、日本の製品はだんだん、人気がなくなってしまう――なんてこともおおいに考えられる。そうなると、国内にある工場は今以上に、人を雇わなくなってしまう。

 ただでさえ、今の日本のメーカーは海外に工場を移し、現地の人びとを積極的に雇っているからね。この動きは、国内の市場規模が小さくなっていく以上、今後も活発になっていくはずだ。

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


人口減少 ニッポンの未来

現在、約1億2800万人と言われる日本の人口。しかし、国立社会保障・人口問題研究所では、人口が2030年には1億1522万人、さらに2060年には8674万人になるとの予測が立てられている。どんどん人口が減り、縮んでいく日本の社会。いったい私たちの行く手には何が待ち受けているのか?この連載では、これからの時代を担う今の子どもたちに読み聞かせる形式を取りながら、日本の未来をいろんな角度から覗いていく。

「人口減少 ニッポンの未来」

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