そのようないじめ被害者に本来与えるべきなのは、『加害者は敵だ』というメッセージである。学校で『仲良く』することを強制され、加害者でも『友だち』『仲間』だと思い込んでいる被害者は『敵』というメッセージを受け止めることで、しかるべきポジティブな行動がとれるようになる。
ところが、いじめ被害者は『死なないで』というメッセージを受け止めると、『自分が置かれている状況は、生きるか死ぬかなんだ』と思ってしまう。有名人の『死なないで』というメッセージが、ごった煮になった選択肢集合の中からわざわざ『生きる-死ぬ』の選択肢を拾い上げ、被害者の目の前に据えてしまうのである。結果的に『死なないで』はその字面に反し、被害者を自殺に向けて内向させる役割を果たすことになる。
以上のように、選択肢集合のなかで潜在化されていたA『生きる-死ぬ』という選択肢へといじめ被害者を誘導し、感情に『生きるか死ぬか』という選択のストーリーを与える『死なないで』というメッセージは、きわめて有害と言わざるをえない。
WHO(世界保健機構)は世界中の報道機関に対し、生活上の困難に直面している人に「生きるか死ぬか」という選択肢を示すような報道はしてはならない、という声明を出している。おそらく、日本のマスコミはそのことも知らないのだろう」(『いじめ加害者を厳罰にせよ』p.104-106)
私はこのように、マスメディアによって人々が信じ込まされてきた「あたりまえ」を片端から潰していった。
「いじめチェックリスト」はでたらめだ。「いじめは傍観者も加害者」という言い方は、路上で暴力団に絡まれた人を身を挺して助けようとしない普通の市民に「お前も暴力団だ」というに等しい暴論だ。日本の「人権派」が主張している少年法の保護教育主義は、人間の尊厳をくつがえす反人権の考え方だ。
じっくり面接したこともない人たちによるいじめやその他の犯罪に対して、「これが解決法だ」と自信たっぷりに答えたり、○○障害といった診断名をつけたりする専門家と称する有名な識者たちは、マスコミ芸人に身を落とした自称専門家たちだ。本物の専門家はそういう「テレビの企画にあった」発言をしないから、ほとんどテレビに出ることができない。
さまざまな問題で「愚民化」が進む日本
また拙著では、被害者自身が「友だち」として加害者グループに「飼育」される「友だち家畜」という現象についても詳しく論じた。友だち家畜にされた被害者は、加害者グループは「友だち」だと自分に信じ込ませようとし、「友だち」であるために涙ぐましい努力をする。そのおかげで加害グループに都合のよい「カモ」にされてしまう。
また、加害グループはきめ細かく被害者を「しつけ」「調教」する。被害者は、いじめられることを「遊びとして」楽しんでいるかのような笑顔を顔に貼りつけて、加害グループの後をついて回る---という形で、加害者たちに連れ回される。このことを最初に私に教えてくれたのは、かの大河内清輝君の第二の遺書「旅日記」のこんな記述だ。
「イルカ島のイルカの目を見たらとても悲しそうだった。イルカは人間のいいなりになっているけど、人間が人間のいいなりになるなんて・・・」(豊田充『清輝君が見た闇』大海社)
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