毎日フォーラム・あしたの日本へ:宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事長 立川敬二氏
2012年04月10日
◇民間需要も含め宇宙の総合的な利用促進へ
日本の宇宙開発をリードし、航空分野の技術研究機関でもある「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」は、東日本大震災でも衛星や航空機を使った災害対策支援や原発事故後の対応で注目を集めた。同機構の立川敬二理事長に宇宙からの災害支援と今後の宇宙開発などについて聞いた。(聞き手 本誌・田中公明)
−−東日本大震災ではどのような支援活動を行ったのか。
立川氏 陸域観測技術衛星の「だいち」が震災直後に観測画像を約400枚撮影し、関係省庁に配った。災害状況の把握ということで観測衛星の重要性が示された。非常時の通信体制でも技術試験衛星「きく8号」と超高速インターネット衛星「きずな」が活躍した。文部科学省の放射能測定の一環として、航空機で福島県上空を飛び測定した。
しかし、だいちは昨年5月に寿命が来てミッションを終了した。後継機の早期打ち上げが必要だ。きく8号はアンテナの直径が約18メートルだが、30メートルのアンテナを持った衛星も提案している。これだと普通の携帯電話で衛星通信が使えるようになる。地震の予知が宇宙からできないかと世界的な関心が高まっている。現象の把握から予測につながる研究をしていきたい。
−−位置を知らせる衛星測位システムの整備は、国の最重要施策でもある。
立川氏 10年9月に打ち上げた準天頂衛星「みちびき」は技術実証が行われ、常時見える衛星が日本の上にいる測位衛星の有効性が確認された。実証試験では数メートルの誤差が10センチくらいの精度になった。この実証が評価されて、内閣官房の宇宙戦略本部で重要施策とされ、補正予算もついた。将来的には、持続測位が可能となる7機体制を目指すという閣議決定もある。7機打ち上げると、アメリカの測位衛星を使わずに単独の衛星測位システムを完成することができる。
−−GPS機能がさらに向上する。