発見!縄文時代のにいがた

 縄文時代前期に高度な漆工芸技術 【長岡市(旧三島郡和島村) 大武(だいぶ)遺跡】
 縄文時代の接着剤「アスファルト」 【東蒲原郡阿賀町(旧津川町) 大坂上道(おおさかうえみち)遺跡】
 広場を囲む環状の集落 【南魚沼市(旧南魚沼郡塩沢町) 五丁歩(ごちょうぶ)遺跡】


縄文時代前期に高度な漆工芸技術  −長岡市(旧三島郡和島村) 大武(だいぶ)遺跡−

 大武遺跡は、縄文時代から室町時代までの約5,000年の間に大きな谷が土砂で埋まった遺跡です。谷を埋めた土の中からは縄文時代から室町時代に至る土器や石器、木製品など多数の遺物が発見されました。右側の写真の赤い漆製品は、地表から約6.5mも下の谷底付近から縄文時代前期の土器・石器と共に出土しました。この赤漆塗製品は、現在縄文人を飾った「装飾品」と推定されています。
赤漆塗の装飾品の構造
 
発掘調査の後、赤漆塗製品について様々な分析や調査が行なわれました。その結果、写真に見える1本1本の糸状のものは、右下の模式図のような構造をしていることがわかりました。カラムシ、もしくは類似した植物繊維の2本の束を撚り合わせ、その上に生漆(ウルシノキから掻き取った樹液を濾してゴミを取り除いた漆)を塗り、さらにその上にベンガラ漆(漆に赤い顔料を混ぜたもの)を塗り重ねています。縄文時代前期にすでにこのような高度な漆工芸技術が存在したということは、大変な驚きでした。
 赤漆塗の装飾品の年代を探る
 装飾品がつくられた時期は、一緒に出土した縄文土器から、おおよそ縄文時代前期の初め頃のものであると推測できました。しかし、もう少し詳しい年代を調べるため、装飾品から6.3mgのサンプルを採取し、「放射性炭素年代測定法」により年代測定を行ないました。
 その結果、漆製品の年代は今から約6,600年前にさかのぼることが明らかとなり、日本の初源期の漆工芸技術を知る上で大変貴重な資料であることがわかりました。



赤漆塗の漆製品
一緒に石匙(いしさじ)・縄文土器片が見つかった



赤漆塗装飾品の構造模式図


漆を焼き付けた縄文時代前期の土器片
 
 国内最古の「漆の焼付け技法」確認!!
 調査の過程で、もう一つ重要な発見がありました。それは装飾品と一緒に出土した縄文時代前期前葉の土器片に「漆の焼付け技法」が確認されたことです。
 この技法は、高温で焼き上げた土器の温度が100〜200℃ぐらいまで冷めてきた後、あるいは土器を100〜200℃まで加熱した後に漆を塗り、土器の表面を漆と密着させるものです。
 漆製品と共に出土したことから約6,600年前のものであることは明らかであり、「漆の焼付け技法」が確認できる最古の資料であることが確認されました。


縄文時代の接着剤「アスファルト」 −阿賀町(旧津川町) 大坂上道(おおさかうえみち)遺跡−

 大坂上道遺跡は縄文時代の中期〜晩期(今から約4,500〜2,500年前)に営まれた集落跡です。
右側の写真は、今から約3,500年前の縄文時代後期の土器にアスファルトが保管されていたものです。
 アスファルトは現在道路の舗装に使われていますが、縄文時代には「やじり」や「ヤリの先」を木の柄に固定したり、壊れた土器や土偶を補修する接着剤として使用されていました。
 アスファルトが採れるのは石油産出地に限られ、日本列島では新潟県から秋田県にかけての日本海側の一部に限定されます。新潟県は数少ない産出地の一つで、1300年ほど前の奈良時代の文献にも、越後国(現在の新潟県)から燃える水と燃える土(アスファルト)が京に献上されたと記されています。アスファルトは縄文時代から私達の生活に欠かすことのできない貴重な資源であり、「特産物」として各地に運ばれ広く利用されたのです。

 
 


縄文時代の接着剤「アスファルト」が詰まった土器


広場を囲む環状の集落 −南魚沼市(旧南魚沼郡塩沢町) 五丁歩(ごちょうぶ)遺跡−

 五丁歩遺跡は今から約5,000年前の縄文時代中期前半の集落跡です。
 五丁歩遺跡からは6畳程の広さの竪穴住居と15畳程の広さの掘立柱建物が合せて59軒確認されました。竪穴住居は通常の住まいとして、また掘立柱建物は共同作業やまつりごとに使用されたと推測されています。これらの住居は集落の中心に設けられた広場を取り囲むようにして建てられていました。
 広場には、亡くなった家族を葬ったお墓が造られています。方形・円形に墓穴を掘っただけの単純なもので、石の墓標を立てていました。
 広場を取り囲む住居の外側にはごみ捨て場が設けられ、集落の人々は決められた場所にゴミを捨てていたようです。
 五丁歩遺跡に暮らした人々は、共同作業やまつりごとを行なう広場を中心に墓域・居住域・廃棄域を環状に配置する計画的な集落設計を行なっていたのです。

五丁歩遺跡出土遺物


上越市(旧中郷村)和泉A遺跡(縄文時代中期)の集落復元図  イラスト:間 栄子
新潟県内では、縄文時代に県内各地で環状にめぐる集落が営まれている。

upload:2003/02/04

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