お は し の お は な し  |  wa.re.bashi

 

お は し の

お は な し

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02 NPO法人日本箸道協会

普段意識しない、お箸について。

まずは知るところから。そうしてご飯を食べることで、いつもより美味しく食べることができるかもしれません。

日々、浮かんだ疑問について、NPO法人日本箸道協会の牟田さんにお話を伺いました。

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牟田 実 Minoru Muta
特定非営利活動法人 日本箸道協会 副理事長
商社、大手フードサービス会社を経て現在(有)食と生活ラボ代表。
食と生活ラボ
http://shoku-labo.com/blog/
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おはしのおはなしi

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おはしのおはなし

▼ NPO法人日本箸道協会について教えて下さい。

お箸の持ち方や和食のマナーを勉強しようというのではありません。「箸」と「道」を分けて考えていただくところがポイントです。「箸」というのは、日本の食文化や食事をすることを象徴しています。 一方、「道」というのは、剣道、茶道、華道と同じく、生き方に通じています。 つまり箸道というのは、箸を使うその向こう側にある「生き方」について、人生修養をしていこうという姿勢を示しています。 ですからゴールはありません。常に自分なりに上を極めていきたいという気持を持ち続けていただくことが「箸道」です。

▼ どのような活動をされていますか?

日本の食文化のすばらしさを次世代や海外へ伝えていきたいと考えています。 それを目的に、NPO法人日本箸道協会は、2008年の8月に発足しました。
具体的な活動内容は、まず子供向けに箸や箸置きを作る教室を行っています。子供達自身で作らせることで、子供たちが、箸や箸置きに関心を持つようになります。 箸と箸置きを正しく置くだけで、「箸を正しく持ちなさい」と言わなくても、自然に正しい姿勢になったり、茶碗の位置やお椀の位置も正しく決まるんですね。そして、あえて何も言わなくても不思議とできるようになるんです。

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残念ながらまだ「大名」と「将軍」は出ていません。「侍」は受けたら合格というレベルですが、上級ではジュンサイやなめこのようなつかみにくいもの、骨の付いている煮魚などの箸の使い方が検定の内容です。

また、テレビ局から箸に関わることでクイズの問題の監修や、歴史の検証などでの問い合わせが来ます。我々は研究者じゃないので、専門の研究者に聞いて頂くのが良いのですが、なかなかそういう方がいらっしゃらないようです。テレビ番組の中で、ドラマの部分で女優さんや男優さんに色っぽく食べる方法をご指導したりもしています。

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ビジネスマンの世代の方には、食事のいただき方を指導しています。例えば、骨のある魚が出たらどう食べていいのか、なかなか難しいケースもありますよね。それで、どう食べたら、かっこよくいただけるか、品良くいただけるかを皆さんと一緒に勉強会をしています。鮎の骨抜きなどきれいに自然にできたら、大人の人というイメージですよね。年齢層は、30代から50代くらいまでの幅広い方が参加されています。皆さんあらためて食事の楽しさを学んでいます。

外国人の方には、箸の使い方の検定を行っています。箸の機能には、挟む、混ぜる、切る、剥がす、包む、乗せるなど、たった二本の棒なのに色々な使い方があります。そういったことを外国人の方に教えています。証明書を発行していて、初級が「侍」。お箸は二本だから、二本ざしの侍からきています。中級クラスが「大名」。一番上級が「将軍」とグレード別に名前をつけています。

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▼ 日本の食文化とお箸の関係についてどうお考えでしょうか。

日本の食文化を語る時に、箸は欠かせません。私たちは、毎日使っているにも限らず、箸について知らなすぎると感じていました。食べ方をみれば、その人の品格が問われてしまうとよくいわれますね。それだけ、箸の使い方は大切です。

日本料理では「箸でいただく」ということの裏に色々なものがあります。例えば、料理は箸でいただくのが前提なので、口に入る大きさが基本です。そのため、包丁とまな板があります。包丁とまな板って実は海外には無く、中国などで見かけるものは、食材を大きく切るためだけのものです。繊細な「ささがき」や「桂剥き」といった手法は日本独自の文化で、お箸でいただくためのものなんです。

▼ 日本の箸文化と海外の箸文化の違いについて教えて下さい。

箸は中国や韓国、台湾などでも使われていますが、日本だけが特殊な使い方をしています。他の国では、箸とさじがセットなんです。中国では、ご飯はお箸、スープはレンゲでいただきます。韓国だとその逆でご飯はスプーンで、キムチなどをお箸で頂きます。日本だけがご飯もお味噌汁もおかずもお箸で頂きます。茶碗蒸しは例外ですが、基本的にはお箸だけを使っていただくという点が日本独特です。

また日本では、箸や茶碗は、お父さん用、お母さん用と個人専用になっています。さらに箸は、目的別に「取り箸」や天ぷら用の「衣箸」もありますね。日本以外の国では、個人専用の食器というのはあまり見られません。

おはしのおはなし

おはしのおはなし

▼ どのようにお箸を選べば良いですか?

特に決まりはないです。あくまで好みの問題です。 目安の一つとして「咫(あた)」というのがあります。親指を90度に立てます。その親指の先端と人差し指の先端を線で結び、直角三角形をイメージします。その長辺の長さが「一咫」です。この長さの1.5倍、つまり「一咫半」が持ちやすい箸の長さと言われています。メジャーが無かった時代は「咫」でものを測っていたといわれています。箸としては、あくまで、好みの問題なので、長めの箸が好き、短めが好きというのもあります。持って見て、自分が一番持ちやすいものを選びましょう。良い箸であれば、塗りが剥げても工房で塗り直しができ、長く使えます。

日本は独特の箸文化を持っているのです。そこで、一般的には、英語では箸のことを「Chopsticks」と言いますが、私たち日本箸道協会では、「Hashi」と呼んでいます。


▼ 料理とお箸には何か関係がありますか?

飲食店では、高い箸を使っているから高級なお店と言うことではありません。その料理と箸が合っているかが大事ですね。1万円もする料理を出しているのに、立ち食いそば屋さんにあるような割り箸の「元禄」だったり、逆に値段の安い料理に、高級料亭で出すような「天削(てんそげ)」の箸を出していると、どういう店なんだろうって思ってしまいます。いろいろ勉強することでお店や料理を見極める力も付きます。

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▼ 亡くなった方の遺骨をお箸で拾うしきたりがありますが、それも関係していますか?

私たち日本人は、生まれた時からこの世を去るまで、実はお箸と深い関係があります。赤ちゃんが生まれると健やかに育つことを願って「お食い初め」という儀式があります。ここでは、箸で食べ物をつかみ、赤ちゃんの口まで運ぶというものです(実際には赤ちゃんなので食べることができないので、真似をだけですが)。亡くなったときは枕元にご飯に箸を立てた「枕飯」を置き、箸に脱脂綿に水を含ませて「死に水」をとらせます。「骨あげ」も箸で行います。日本語の中で、「箸を取る」という言葉がありますが、それは「いただきます」の意味で、「箸を置く」は「ごちそうさま」の意味です。食事も人生も箸で始まり箸で終わるんです。

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おはしのおはなし

▼ お箸は日本の歴史では、どのように使用されてきましたか?

箸自体は、古事記にも記載があります。天照大神(アマテラスオオミカミ)が須佐之男命(スサノオノミコト)を地上に降ろした時に、川で箸を見つける話があります。当時の箸はU字型のピンセットのような形をしていたのではと言われています。箸という字は意外にも昨年常用漢字になりました。それまでNHKなどでは、ひらがなで「はし」と表記していました。挟んだ時に「はし」で挟んで食べるから「はし」という説もあります。箸は、何かと何かを繋ぐという意味を持ち、何かと何かとは、あの世とこの世を繋いでいると言われています。その点で、柱や橋、ハシゴも同じように何かと何かを繋ぐという点では同じ意味を持ちます。昔は旅先でお弁当を食べた際に箸を折って捨てていました。使った箸にその人の魂が残り、動物に食べられてしまうのを避ける為、折ってそこから魂を出して捨てていたんだそうです。

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戦国時代、千利休がお茶の前に小腹を満たす為に出したものが、懐石料理の始まりと言われています。懐石料理をお客様にお出しする際、千利休は、自ら吉野の赤杉を使って箸を作ったと言われています。そんなことから、真ん中が太く両側が細くなった両口箸は、利休箸とも呼ばれています。この両口箸は、片側を人が、もう片側は神様が使用し、箸はとても神聖なものとされていたようです。 神様にお供え物をする際に、箸が使用されていました。魏志倭人伝という文献によると、倭の国の人(日本人)は手食していたとあります。では、いつ頃から箸が食事で使用されるようになったのか。それは正確にはわかりません。608年に遣隋使の小野妹子が、派遣先の随から随の使者を同行して帰国した際に随で使用していた箸とさじを用意してもてなしたのが最初ではと言われています。その後、宮廷料理や貴族の社会で使用され次第に一般へと広まったと言われています。

▼ お箸にまつわる話で、今まで一番驚いた話を教えて下さい。

驚くことばかりです(笑)。例えば韓国のお箸は金属で出来ているのですが、何故かというと、食べ物に毒が入っていると色が変わるためといわれていました。また、女性が自分の喉を刺す自害のための道具にするためという説もあるようです。 天削(てんそげ)という箸の形は、出雲大社や伊勢神宮の屋根の千木(ちぎ)と同じ形になっています。そこから神様が入ってくるという神聖な形なんですね。なので大皿に盛ってあるものから小皿に移す際に、「直箸じゃマナー違反」という理由で、逆側を使う人がいますが、天削の場合は良くないことですね。

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▼ "和RE箸大作戦"を初めて聞いた時の印象を教えてください。

使用した後に自然に戻すことは、素晴らしいことだと思います。良いワリバシは正目で作られているので、綺麗に割れますし、木材の香りもしますよね。


▼ 今後どのようなことに取り組まれる予定ですか?

子供達との箸作りや会食を楽しんでやっていきたいですね。「食事が本当に美味しかった」と言って頂けるようなことをやりたいです。
どうやって食べたら一番美味しく頂けるか、例えば職人さんがこだわって作った料理法や食材などのお話を聞く。それだけでも料理を楽しめます。「ああ、美味しかった」と言える、そんな食事が出来るのが我々の目指す箸道です。

2011.03.02 特定非営利活動法人 日本箸道協会

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特定非営利活動法人 日本箸道協会
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ワリバシカンパニー
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ワリバシカンパニー箸渡使の活動日記
http://baiten.tobimushi.co.jp/blog1/

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作成日:2011 年 05 月 02 日

  • 著者:wa.re.bashi
発行:wa.re.bashi

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