木を守るエコ活動のひとつとして広がる「マイ箸」をきっかけに、お箸は、無頓着に使う単なる日用品から、デザインに自分らしさや好みを投影して大事にする愛用品へと変わってきました。
日本で使われているものの9割が若狭地域で作られているという、塗り箸。
細い木のキャンバスに、緻密で美しい意匠をほどこした若狭塗り箸の世界を、お箸の歴史をまじえてひもといてみましょう。
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なめらかな漆の艶めき。その中に浮かび上がる、地元の海でとれるあわび貝や卵殻を使った素朴で味わい深い装飾。長さたった20数センチ、直径わずか数ミリの2本の細木は、こうなると立派な芸術品です。
 
まさに、たかがお箸、されどお箸の若狭塗り箸。400年以上受け継がれている伝統を守りながら、さまざまなお箸を作っている箸メーカー「イシダ」のブランド“一双”の中には、古来の手法そのままに、お箸の身近さ、手軽さからは想像できないほどの手間と時間をかけて創り出されるものがあります。
 
たとえば、「黄金松」と名づけられたひと組。若狭塗り独特の「研ぎ出し」という伝統技で仕上げるまでに2年という長い年月を要するというから驚きでしょう。まさに匠技です。
 
 
若狭地域では、漆器塗りが盛んになったのは江戸時代初期の1600年代の半ば。その頃、ある塗師が作業台に乾燥して付着した漆をきれいにしようと研ぎ落としたところ、いつも使っている赤、黄、朱などの色漆が重なり混ざり合い、それは美しい色柄になって現れたことが、研ぎ出しの始まり。
その後、箔や絹糸、貝卵殻、松葉などを使って紋様を加える技法が生まれました。
 
 
その行程は、緻密で丹念な作業の積み重ね。塗っては乾かす、を30〜40回繰り返します。
お箸の素材は、硬い天然木。建築や家具の端材(はざい)を、箸の形に削ったものを、反りや曲がりがないか確かめ、まずは下地塗り。デザインに応じて貝などを付け、それらが落ちないように黒漆で押さえ塗りを施します。
その後、いくつもの色漆を塗り重ね、また箔や糸を巻いて装飾を加えた後、さらに4〜5色の色漆を塗りこみ、最後に箸の頭に塗りを施して漆塗りが完了。
そこから今度は、仕上がりの箸よりかなり太くなっているもののの表面の漆を少しずつ研ぎ落としていくことで、幾重にも塗り重ねた色漆や、漆の下に埋め込んだ箔や貝などの紋様を削り出していきます。
 
 
研ぎは、息を詰めての慎重さと勘を要するとても繊細な作業。
 
言うまでも無く、経験豊かな職人にしかできない技です。2〜3日をかけて乾燥させねばなりません。
完成まで長いもので2年かかる理由です。
 
いまは、いくつかの行程が機械化され、古来のものに対してその技法は新・若狭塗りと呼ばれています。
しかし、それは手早く大量生産するために簡略化されたものではなく、一部の手作業を機械で行なっているもので、ひと組みの箸が出来上がるまで、何度も塗りと乾燥を繰り返す作業工程の多さや緻密さはほとんど変わりません。
 
若狭塗り端づくりの伝統美は、いまも生き生きと息づいているのです。
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玉響/雪(たまゆら/ゆき) 1,260円 スワロフスキー 天然木 漆 先角 /23cm
 
いま、日本で作られている塗り箸の9割近くが若狭でつくられています。
津軽塗りや輪島塗りの箸も、実は若さ塗りの職人が渡って技法を伝えたのがきかっけです。
 
それにしても、なぜお箸に凝った意匠を施し、工芸品にまで高める文化が生まれたのでしょうか。それを知るために、お箸のルーツを探ってみましょう。
 
堤(つつみ) 2,100円 天然木 漆 六角 /21cm
秋波(しゅうは) 1,890円 若狭塗 堆朱 天然木 フェノール /21cm
 
ヒトは長い間手づかみで物を食べていました。道具を使うようになった理由は諸説ありますが、火を使うことを覚えてから、熱い物を食べるために箸のようなものを使い始め、その後、肉を主食とするヨーロッパ系の民族やナイフやフォーク(カトラリー)を発明したといわれています。
 
ちなみに、世界で現在も手食をしている人口は、全体の44%。箸食文化が広がっているのは、アジア圏で中国、韓国やベトナム、日本がその代表ですが、家庭で使うお箸のデザインにこれほどこだわり、凝っているのは日本だけと言っても良いでしょう。
 
 
 
現在、使われている箸は、紀元前1500年の殷の時代の中国で、祖先の霊や神様に食べ物を供えるために使われた器具がルーツです。その後、王侯貴族が食用に象牙の箸を使い始め、やがて日用の食器になっていったのです。
 
日本でも、弥生時代に中国から箸が伝来し、最初はやはり祭りごとや儀式で使われていました。
初めて箸を食事に使ったのは、聖徳太子だといわれています。608年、中国からの正式な使節団が初めて来日することになり、「彼らを手食でもてなすわけにはいかない」と、かつて中国に渡った遣隋使たちに、大陸での接待方法を詳しく聞き、宴料理に箸を添えてもてなしました。
 
花筏(はないかだ) 2,100円 紫檀 あわび貝 上部:ポリエステル 下部:漆/21cm
陽炎(かげろう) 1,575円 蒔絵 天然木 漆 先角/20.5cm
 
それまで、日本人はかしわの葉を器にして手で食べていましたが、その百年後には箸食文化は庶民に広まり、やがて若狭で塗り箸が作られるようになって全国に普及したのです。
 
つまり、お箸はもともと供物を扱う神聖な祭器であり、もてなしのための礼器のひとつだったのです。この小さな日用品に宿るそうした意味。
器から“いのち”を口へ運び、“いのち”をつなぐ身近な道具として大切にする気持ちが、若狭塗り箸を創り出す時間と美しさの中に込められているのではないのでしょうか。
 
宵待月(よいまちづき) 1,575円 輪島塗り 天然木 漆 /22.5cm
 
 
 
リアス式海岸に縁取られた若狭湾を抱く地では、あわび貝など装飾にうってつけの貝がとれ、一方、緑の山々では木と漆がふんだんにとれました。
 
塗り箸が若狭で作られるようになったのは、自然に恵まれていたから。新鮮な魚介が揚がる若狭地域の食文化の豊かさ、食べる楽しさに貪欲な人々の気質も、若狭塗り箸の美やこだわりと無縁ではないでしょう。
 
お気に入りの塗り箸をマイ箸に。エコなだけではなく、いつもの食事がもっとおいしくなるかもしれません。
 
野分兎(のわきうさぎ) 3,150円 貝象嵌 黒檀 上部:ウレタン 下部:漆/23cm
十六夜(いざよい)1,050円 天然木 ポリエステル 八角 先角/21cm
 
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