衆院選:差し止め求める 「1票の格差」弁護士ら提訴
毎日新聞 2012年11月16日 21時49分(最終更新 11月17日 00時57分)
「1票の格差」の是正を求めて国政選挙ごとに選挙無効訴訟を起こしてきた山口邦明弁護士らのグループが16日、来月投開票の衆院選を実施しないよう差し止めるとともに、「1人別枠方式」の定数配分規定を廃止した改正法案の提出を国に義務付ける訴訟を東京地裁に起こした。衆院選を巡っては前回09年選挙について最高裁が「違憲状態」と判断しており、原告側は、是正せずに実施すれば「投票価値の平等が害されたまま投票を行うという重大な損害が生じる」と主張している。
解散に先立ち16日、衆院の格差是正のため小選挙区定数を「0増5減」とする関連法が成立した。しかし新たな区割り作業が間に合わないため、次期衆院選は現行制度のまま行われる。現行制度に基づく09年衆院選(最大格差2・30倍)について最高裁大法廷は11年3月、都道府県ごとに小選挙区の定数1をあらかじめ割り当てる「1人別枠方式」を批判した上で、小選挙区制下の衆院選では初の「違憲状態」と判断しており、違憲状態のまま選挙に突入する異常事態となっている。
このため、次回衆院選に対しては、仮に無効訴訟が起こされた場合、小選挙区制度下の衆院選で初の「違憲」判決とともに、衆参両院を通して初めての「無効」判断が出る可能性を指摘する司法関係者も少なくない。
一方、民自公3党の関係者には「関連法さえ成立していれば無効判断に至らない」との見方もあるとされる。
今回の訴訟は選挙前に選挙の実施自体の差し止めを求めるもの。差し止め対象は、憲法7条に定められた、天皇が国事行為として総選挙を公示するに当たっての「内閣の助言と承認」。選挙実施に関わる最初の手続きを止めることで、その後の全ての手続きを止める狙いがある。公示は12月4日と迫っており、早期の判断を求めるため、仮の差し止めを求める申立書も提出した。
山口弁護士は東京都内で記者会見し「違憲状態のまま衆院選を行うのは三権分立下での司法のけん制機能を無視するもの。絶対に見逃すことができない」と話した。
衆院選の1票の格差を巡っては、「一人一票実現国民会議」を主導する升永(ますなが)英俊弁護士らのグループも、開票日翌日に全国の高裁・高裁支部の全60裁判部に選挙無効訴訟を起こす意向を明らかにしている。選挙無効訴訟は公選法の規定で1審が高裁となる。【石川淳一】