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クマに多額県費、首かしげるヒト 受け入れ施設改修に数億円

阿仁熊牧場に移送されたツキノワグマ=7日、北秋田市

 ことし4月、女性従業員2人がヒグマに襲われ死亡した秋田県鹿角市の「秋田八幡平クマ牧場」(廃業)から今月上旬、ツキノワグマが受け入れ先の「阿仁熊牧場」(北秋田市)に移送された。残るヒグマを阿仁熊牧場に移すためには県が数億円をかけて施設改修する必要がある。事故から約7カ月。多額の県費投入に対し、県民の間に根強い疑問の声がある中、県には丁寧な説明が求められる。

◎維持管理費も

 県は7、8日、秋田八幡平クマ牧場のクマ全27頭のうち、ツキノワグマ全6頭を阿仁熊牧場に運び入れた。残るヒグマ21頭も、来夏までに移送を終える。
 阿仁熊牧場を所有する北秋田市は、牧場の施設を県の全額負担で改修することを受け入れの条件としている。牧場では現在、ツキノワグマ74頭、ヒグマ1頭を飼育しているが、今のままではヒグマを受け入れるスペースが不足するためだ。
 県によると、改修費は数億円規模。ほかに施設の設計委託費を12月補正予算に盛り込む方針だ。受け入れ後の餌代などの維持管理費についても、北秋田市は県の負担を求める見通しで、県の支出はさらに膨らむ可能性がある。
 残されたクマの所有者は、秋田八幡平クマ牧場の元経営者。個人所有の動物の保護を目的に多額の県費を投入することに県民からは疑問の声も上がる。
 県県民生活課によると、「人の生活も苦しいときに、クマを優先するのか」「一企業の問題に税金を使うのは不公平だ」などといった手紙やメールが寄せられている。
 担当職員は「(金額など)具体的な話が見えてくれば、さらに批判の声が高まるかもしれない」と気をもむ。

◎「丁寧に説明」

 佐竹敬久知事は、5月の記者会見では「動物愛護のためでも、何億円もの県費投入が賛同を得られるか疑問」と慎重な姿勢を示した。
 しかし、県によるクマの受け入れ先探しは難航し、殺処分が現実味を帯び始めると、動物愛護団体や県議会から「殺処分はかわいそう」「県のイメージダウンになる」との声が強まった。軌道修正を迫られていたところに8月、北秋田市から提案があり、県費投入にかじを切った。
 佐竹知事は「(クマを)ただ生き延びさせるだけでは、県民に理解されない」と述べ、受け入れ後の阿仁熊牧場をマタギ文化の学習拠点として活用し、観光振興につなげる考えを強調。だが集客力を上げる方策や学習施設としての具体的な活用策は示していない。
 後付けの理由に県民を納得させることができるのか。県は「これから丁寧に説明していかなければならない」(県民生活課)と話している。


2012年11月16日金曜日


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