「大阪市選管」の呆れた高額報酬
片手間の仕事に月額43万円の驚くべき実態。議員OBへの退職金上乗せ疑惑も浮上。
2009年5月号 POLITICS
ある区の選管事務局の担当者は「専門知識が必要ですから」と話すが、それなら一般人ではなく弁護士に頼めばよいのではないか。委員長は委員の互選で選ばれることになっているが、それも形式的なものらしい。経験年数が長い人がなるのが一般的だが、大阪市のある委員OBは「私が初めて委員に選ばれた時は、初会合に行くとすでに役所が準備した紙が1枚置いてあり、一番上に1人だけ名前が書いてありました。この人が委員長になるのだなと思いましたが、実際にそう決まりました」と話し、役所主導で委員長が決められていることを打ち明けた。またある市議OBは「役所は一度推薦すると欠席が多いなどの問題がない限り、なるべく同じ人にしてほしいと言います。それはこの制度に疑問を抱いたり、アレコレ口出しせず、素直に従ってくれる人がありがたいからです」と解説する。
委員20年で総額3千万円も
それを裏付けるような驚くべき実態がある。大阪市が渋々出してきた1990年以降の委員会名簿を見ると、なんと現在まで20年近く選挙管理委員を務めている人物がごろごろいるのだ。つまり連続5期も務めているのだ。区によってばらつきはあるものの、10年以上はざらで、長期にわたって同じ人物が選挙管理委員を務めていることがわかる。月額報酬は92年の改定でほぼ現在と同じ水準になっており、そうすると20年近く務めている人は単純計算で3千万円近い報酬を得たことになるのだ。月額報酬だけで家1軒が建つ計算であり、呆れた高額報酬だ。
ある区の選管委員OBは「全額が私の収入になるわけではないです。一部は忘年会の積み立てや旅行の積み立てに充てられていました。最近は旅行はなくなったが、忘年会は今でも続いているようです。預金通帳は区の選管事務局である総務課長が管理していました」と語った。委員だけでなく、役人もその忘年会に付き合うはずだから、この積み立ては必要で、アレコレ考えず現状に異を唱えない人物が長期間やってくれるほうが都合がよいのだろう。ただ、大阪市選管は「市民に誤解されかねないので、通帳で管理するのをやめました」と言う。
ある自治体の議員OBは「支援者に対する便宜供与と指摘されても仕方がないと思います。選挙の際に集票マシンと化してくれる人は、選挙管理委員になってしまうと、自分の選挙の時にも動けず困るのでそういう人は選びません。自分の選挙に長年貢献してくれた年配の人への論功行賞として与える場合や、選挙戦を有利にするために相手陣営につくとこちらが困る人、例えば地元連合自治会の会長経験者などを選んで公職ポストとして与えるケースが多いですね。うまく使わせてもらうということです」と本音を語る。
長年にわたって居座り続けるのは単に月額報酬のうまみだけでなく、名誉も同時に得られるおいしいポストだからだ。確かに選管委員は務めた年数が長くなると、褒章などの対象になる。
議員、地元の有力者らにとって「おいしいポスト」だけに、税金の無駄遣いと知りながらも自ら変えようという意思は働かないようだ。今回の情報公開に対し大阪市の選管関係者は「確かに変えなければならない時期にきているんですがね……」と財政健全化の意図を察知し、困惑の表情を見せた。民主主義には金がかかると言われるが、この制度だけは何とかしてほしい。
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