1 二番機 [2012/11/03(土) 20:21:50]
図書委員の少女が拾った、そのプラネタリウムには。
2 二番機 [2012/11/03(土) 20:38:21]
Prologue.
ゆっくり。
これは放課後の書庫にぴったりの言葉かな、と。その少女はぼんやり思った。
紅い夕日の光。それに照らされて、ふわふわと飛び交う埃。
少し薄暗くて、秋の冷たい部屋。
遠くに聞こえる吹奏楽部の練習や、運動部の張り上げる声。
時間が流れている事を知らないかのように佇んでいる、たくさんの閉架図書たち。
高校図書館の閉架書庫は、そんな、どこか落ち着く不思議な空気に満ちている。
彼女はこの高校の図書委員で、友だちに頼まれた本を探している所だった。歩くたびに、スリッパがパタパタと音を立てる。
「あ、あった」
見つけた本は、書庫の一番奥の本棚。さらに、その棚のかなり高い段にあった。少女は本を取ろうと手を伸ばし、つま先で立ったのだけど、小柄な彼女の身長ではわずかに届かない。
そこで彼女は、こういう時のために書庫にいくらか置いてある木製の椅子を持ってきた。この椅子は、ふだん教室で使っているのと同じものだった。
スリッパを脱ぎ、椅子を台にして、彼女は無事に本を手に入れた。
外でヒヨドリの鳴き声。
さあ、早く戻ろうっと。
そう思った彼女の目に、ふと映ったものがあった。
本棚の上に置かれた、黄土色の小さい段ボール箱。
ずっと前から置いてあったものだけど、彼女にとってそれは背景と同じ様なもので、気にしたことなんて一度もなかった。でも、椅子に乗っていて、その箱に手が届きそうな今は違う。その箱の中身を確かめたい、という淡い好奇心が彼女の中に芽生えていた。
手に持っていた本を棚の低い段に寝かせて、段ボール箱を取ろうと手を伸ばす。その箱は台にしていた椅子より少し左にあったので、彼女も椅子の上で少し左に動いた。椅子の端。
「よいしょっ……と」
一度引っ張ってから、箱を持ち上げた。
その瞬間。
「――――――――え?」
微妙な均衡を保っていた椅子のバランスが、箱の重みで一気に崩れて。