映画『アーティスト』から学ぶ、プライドの高いダメ男の扱い方とは?
【相談者:20代女性】
「俺は昔、スゴかった……」と、過去の栄光を見てばかりで現実は全然ダメな彼と、うまく付き合うにはどうしたら良いですか?
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みなさん映画は観てますか〜? 最近映画ではなく、恋愛相談ばかり頂く恋愛jpで「映画」のアドバイスが担当の、利根川です。
担当といっても映画を薦めるのが僕の仕事で、恋愛の魔術師ではないので(笑)、お悩みと同じような経験をしている映画や1シーンをお勧めし、少しでも答えのヒントになれば……と思いご紹介させていただきますね。
ご質問ですが、男の僕からするとなかなか痛いとこですが、よく聞きますね。
過去の成功と、今の自分を冷静に判断できない男性……。その彼に気持をどう伝えるのか、伝わるのか。
そうですね、この場合男性とは「どんな生き物なんだ」という所も大事な点かもしれません。
では、とっておきの最高の映画を1本ご紹介いたします。
●『アーティスト』配給・発売元:ギャガ
ご存知、第84回アカデミー作品賞の名作です。この作品はね、作品賞以外にも監督賞、主演男優賞、なんと計5部門を受賞した名実共に最高の映画です。
なんと云っても、フランス映画として初のアカデミー作品賞を受賞したことも話題になりましたが、「モノクロサイレント映画」です!
この、電車に乗ったら示し合わせたように、みんなで携帯の小さい画面をみてる時代に、モノクロサイレントです! 携帯で昨日やってたTVドラマをみる時代に、モノクロサイレントです!
僕もね、あんまモノクロサイレントって観た事がないんですよ。チャップリンとか、そんなイメージしかなくてね。なので、映画館でモノクロサイレントってどんなもんかな……と、期待半分睡眠準備半分。いやぁ、良かったです。本当に素晴らしくって、気づいたらチョッパーのパジャマに着替える前に映画のエンドロール! 本当に見入ってしまいました。
最近は携帯ないと不安だし、メールなんて一日何百通するかわからない時代、言葉や文字に囚われた時代ですよね……、その中言葉や文字がないんですもん(笑)ま、多少あるにせよ、役者の演技や表情、想像力だけで楽しむ感じが逆に新しさを感じる気がしました。
舞台は、1927年のアメリカハリウッドっ! フランス人の監督だけどハリウッドっ!
映画産業は「サイレント映画」から「トーキー映画」(声あり)への移行期。サイレント映画界で大スターのジョージ(ジャン・デュジャルダン)。愛犬のアギーと共演した新作の舞台挨拶で、ヒロイン放っておいて大喝采です。頂点です、何しても許されちゃうくらいの大スター!
その大スタージョージが、映画スターを目指す新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)に出会うところから始まります。このぺピーがまた愛らしく、女性らしく、カッコいいんですね。物事もはっきり云うし、前にガンガンでるあたりが、働く現代女性と通ずる所があるかもしれません。
でね、憧れの大スタージョージの楽屋を訪ねたぺピーが最高なんですね。ジョージのスーツに腕を入れて、その腕を自分にまわして、自分がジョージに抱かれているような妄想したりと(笑)可愛らしいんですね。たまたま楽屋に戻ったジョージは、笑顔でペピーを見つめるんですよ。
これ誰かやってくれないかなぁ……ま、僕が目撃してしまったら普通にドアを閉めてしまいそうですが(笑)大スターは違うんですね。大スターの対応。
売れる手ほどきとしてなんと!? つけボクロ描いてあげるんです。つけボクロ描いてあげるのが大スターってことです。ではなくて、仕草が全て余裕のある紳士なんですね。それに対して、ペピーはジョージがいない間に、鏡にルージュで「ありがとう」ですよ。このお洒落すぎる2人!
家かえって鏡に「ありがとう」なんて書いてあったら、僕なら……やはりドアを閉めてしまいそうです。
さて、時代はトーキーへの移り変わりの時代です。芸術とは「サイレントだ!」と岡本太郎ばりに主張する大スタージョージはプロデューサーと喧嘩別れしてしまい、時代に取り残されます。自分で監督・主演したサイレント映画は大コケ。それに引き換え、時代にのったペピーは「トーキー映画」で一躍大女優へ。
財産も失い、離婚までして、酒に溺れるジョージと大スターになったぺピー。それでも静かに慕い合う切ない2人。自ら破滅の道をたどるジョージを陰ながら慕い続け、ジョージが家財をオークションにかければ全て買う、まさに「無償の愛」というか「無垢の純愛」というのか、なんですかね。もう観て下さいっ終わり!
失礼、もうちょい、今回のご質問についてはここからなんですね。
●どん底に落ちて、何もなくなったジョージ。それでもプライドだけは大スターなんです。
どんなに、独りになっても、プライドだけは持ち続けます。どんなにダメ男になってもプライドだけは失くせない、プライドを傷つけられたら素直になれないんですね。『男とはプライドの生き物』というんでしょうか。
ペピーが影でジョージの誰も買ってくれなかった家具を全部引き取ってくれてたなんて知ってしまったら、プライドが傷ついてどうしょもなくなってしまうんですね。
見せないで! 不器用なんですよ。
そんなペピーの愛にジョージが応えられるように、ペピーは手を差し伸べます。
さて、プライドに縛られ逃げ道がなくなったジョージに、どうペピーは愛を伝え、手を差し伸べるのか……続きは是非観て見てくださいね。
いかがでしたでしょうか、本当に綺麗なラブストーリです。
女性の大きな「愛」に応える男の愛の表現方法は、「責任感」などでしか表せられないと、昔誰かが言ってました。そんなことをふっ……と思い出しました。
きっと、男性は不器用なプライドで生きているジョージにとても共感するんでしょうね、そうそう男ってそうなんだよみたいにね(笑)。逆に、相手に少々強引でも自分の愛情を一生懸命伝えよう、陰ながらも献身的に支えようとするペピーに共感する女性の方は多いかもしれませんね。
是非、男女の愛の表現方法なんかも比べてみてください。
ちなみに、主役の2人以外に名演技をしているのが、ジョージの愛犬のアギー! 犬好きの方には最高です(笑)。名演技過ぎて、カンヌ映画祭では犬に与えられる賞「パルムドッグ賞」を受賞しています。
是非名犬アギーの気持ちにも共感してあげてください(笑)。
あとは映画観て笑って、泣いて、感じて、きっとヒントがあると思いますよ。
ハッピーエンド目指して……。
現実は映画よりも映画っぽい。
利根川でした。
(ライタープロフィール)
利根川建一(映画専門家)/映画アドバイザー。TV番組編集の仕事を経て株式会社MMCにて年間2000件以上の映画祭・映画会・上映会の作品アドバイスや映像についての業務に約10年間に渡り、携わっている。現在は映画好きのための映画ではなく、映画祭や上映会を成功させるために、様々な人が共感できる映画を観る視点・用途・テーマに合わせたアドバイスを行う。「映画で人が豊かになれば」という思いで日々尽力している。
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