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【芸能・社会】

41歳でつかみとった初主演 「放浪記」に執念

2012年11月15日 紙面から

 森さんは、若いころ主演作に恵まれず、「あいつよりうまいはずだがなぜ売れぬ」と愚痴めいた川柳を口にしたこともあったと明かす。

 そんな森さんが、41歳でつかみとった初主演舞台「放浪記」の林芙美子役にはすさまじい執念を燃やした。

 初演の翌年に実現した再演では体調を崩して高熱を出し、近くの日比谷病院に入院し劇場に通った。枕元で東宝の幹部が主治医に、代役を立て森さんを休演させることを相談。森さんは「やっと得た主役をほかの人にもっていかれるのはイヤだ」と思い詰め、「私は休みません、絶対に出ます」と言おうとした。

 すると、森の性格をよく知る主治医が「この人は舞台を休ませるとかえって悪くなる」と進言。降板話がなくなって大喜びしたと、森さんはこのエピソードをよく話していた。

 共演者も大事にした。公演前には脇役の俳優らと楽屋でお茶会をするのが楽しみだった。

 2000年には、売り物の「でんぐり返し」の演出を森さんに配慮して封印した。近年は、加齢にともなって老化が進行したのは事実。東宝幹部も「舞台上で何かがあっては」と森さんの降板を検討。実際、森さんに数年前、打診をしたことがあったがある幹部は「森さんに怒られてしまい、もう何も言えなかった」と振り返る。

 07年ごろから、森さんの表情が誰の目にも衰えて感じられた。すでに09年の2000回公演は決まっていた。ある共演者は「公演は無理ではないか…」と感じたという。

 森さんはいつまで「放浪記」を続けるのか−ファンもメディアも過熱していた。実は08年の公演時、共演するベテラン俳優が舞台そでで「森さん、もういいんじゃないの」と強く迫ったことがあった。たまたま近くで聞いてしまった別の俳優は「緊張した空気になった。森さんは固まったように何も言わなかった。森さんは続けるというのが信念。言った方も覚悟を決めていったのでしょうが心変わりすることはなかった」と振り返る

 親交のある和田アキ子(62)は、09年2月ごろ、森さんと食事した際、あまりに元気がない様子に「森っち(森さんのこと)、無理しなくっていいよ」と声をかけた。5月に2000回公演を控えていた。和田に森さんは「お客さまが待ってくださっている」ときっぱり答えたという。

 森さんのすごいのは、公演直前になって元気を回復したこと。「顔に張りが戻っていた。2000回公演への執念としか言えない奇跡だ」と当時、東宝の関係者は話した。 (竹島 勇)

 

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