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冬の時代の入口の解散 - 消費税も原発も争点にはならない
ずっと、今年中の解散はないだろうと予想していた。解散するなら、民主党は別の代表・総理に切り換え、支持率を一時的に回復させ、目先を変えた上で行うだろうと思っていたからだ。代表選で党首交代がなかったため、来年7月のダブル選挙まで引き延ばす魂胆だろうと推測していた。野田佳彦自身、昨年8月の代表選のとき、「私は解散総選挙はやりません」「ルックスが悪いので選挙に勝てないことは知っています」と言っている。明らかに、野田佳彦はワンポイントであり、選挙の前に顔を変えることは、野田政権が発足して以来の民主党の想定事項だったと言える。選挙は勝つためにやるのであり、解散権はウイニング・ストラテジーに沿って勝機を選ぶ切り札だ。その常識から考えれば、今回の解散は常軌を逸した自爆行動と言える。下野覚悟、党壊滅覚悟の解散。田崎史郎や大越健介などマスコミの政局屋たちは、商売繁盛の機会到来で大はしゃぎして、不意を衝いた攻めの解散だとか、乾坤一擲の決断だなどと言い、野田佳彦を褒めそやかしているが、中身を冷静に見れば、これは「追い込まれ解散」であり、自滅を前提とした「話し合い解散」でしかない。錯乱解散と呼んでもいいだろう。少なくとも、民主党の支持者はこの解散を歓迎していない。歓迎しているのは、自民党と極右とマスコミである。年を越して半年待てば、安倍晋三も橋下徹も「人気」が失墜するのは火を見るより明らかだった。


私は前に記事で、野田政権が解散するときは、民自公による選挙後の大連立を前提にした「候補者調整」の選挙になるだろうと予想したことがある。何度かそう論じた。橋下維新が出て来る前、谷垣禎一の時代の観測である。今回、ほぼ実質的にその形の選挙になった。ただし、違うのは、民主の現職議員が大量落選して、自民の議員に置き換わる形での「候補者調整」という点だ。民主と自民はイーブンの勢力で大連立するのではなく、民主が50議席ほどに減り、公明と同格になった形で大連立するのである。水戸黄門の助さん格さんの一人になる恰好。現在、マスコミが語っている選挙結果の蓋然性は、自民が過半数を制し、公明・民主と三党連立の安定政権となる図である。これは何かと言うと、極右の自民を創価学会と連合が両側から支えるという政治図だ。助さんが創価学会、格さんが連合、黄門様が右翼。何と素晴らしい日本の政治だろう。右翼にとって理想的な政治配置だ。ただし、この三党連立は、総裁が谷垣禎一で、橋下維新の台頭を前提とする前はこれで決まりだったが、極右である安倍晋三の場合は、自公民の大連立vs第三極という構図に収まるとは限らない。政策軸的には、安倍晋三は石原慎太郎や橋下徹の同志であり、現在の自民は極右政党になりきっている。おそらく、安倍晋三は民主とも維新とも組み、大政翼賛会を敷き、改憲の発議へと踏み出すだろう。

この3年間の政治は、民主党の内紛劇で明け暮れた。消費税、社会保障、TPP、重要な政策の対立と抗争は、国会の中で二つの党派や勢力の間で行われるのではなく、民主党の議員集会の中で激しく衝突が繰り広げられ、そして、民主党は割れて議員数を減らし、同時に政党として右へ右へと旋回して行った。一人一人が変節を遂げ、自民党と同じ右翼と新自由主義の路線の集団へと変身して行った。議員たちはマニフェストを裏切り、国民を裏切って行った。民主党は、本来、鳩山由紀夫、菅直人、小沢一郎の保守リベラル政党だった。今、民主党の政権中枢を構成している面々は、07-09年の民主党の中ではメインストリームではなく、政策的には異端の右端に位置していた者たちだ。党内では少数派に属する、自民党と最もコンパチビリティの高い連中であり、07-09年の選挙の際は、自分たちの信念や本心とは異なるマニフェストを訴えてで有権者を欺していた面々である。民主党は、3年前の面影を全く残さない別人の政党になった。別の言い方をすれば、松下政経塾に乗っ取られ、小さなサイズになったと言える。そして、連合は、経団連の労務部門になり下がり、ナショナルセンターとしての意味を完全に失った。連合の政治への発言力は、この選挙を機に失われることになる。民主党は右へ右へ変質したが、それに合わせて、自民党は極右へ極右へと立ち位置を寄せて行った。マスコミも一緒に極右化した。

今回、野田佳彦は「身を切る改革」を解散に刻印し、この問題に焦点が集まるように細工した。このまま選挙戦が進行すれば、マスコミは議員定数削減の話題で報道を埋め、選挙戦を通じて無駄話が喋々されることになるだろう。これは、消費税を隠し、また消費税の論議から増税派を正当化するための巧妙な仕掛けでもある。マスコミの中には消費税増税に反対の者はいない。「消費税増税を国民に納得してもらうため」の「身を切る改革」が当然視され、問題がスリカエられ、消費税増税の政策的妥当性の問題が消し飛ばされてしまう。本来、この選挙は消費税増税の是非を問わなくてはいけない選挙だ。その経済への影響を論じ、社会保障の財源の方策を論じ、政策の判断を国民に問わなくてはいけない選挙である。しかし、自公民とマスコミは、これをスリ換え、選挙で消費税増税が国民の審判を受けることのないように、「身を切る改革」を前面に出す論点工作を打ってきた。それは、自公民とマスコミが、消費税増税を推進してきた同じ勢力であり、消費税増税法案をリセットしたくないからである。消費税増税に反対する陣営は、これを争点にするためには、一つの大きな勢力を作って対峙する構えを見せないといけない。共産と社民と生活だけでは、中小野党の一部であり、14分の3とか15分の3の勢力にしかならない。国民は、消費税を選挙の重要な争点にするべきだと考えている。その要求を実現するためには、政治勢力の設計が必要だ。

昨夜(11/14)、テレビ報道がこの選挙の争点をどう設定するか注目して見ていたが、日テレの糟谷賢之、NW9に出た政治部記者、報ステに出た田崎史郎、3人ともほぼ同じことを言っている。争点は二つで、一つは、「決められる政治の安定的な体制ができるかどうか」、もう一つは、「第三極が結集してどこまで勢力を伸ばせるか」である。糟谷賢之は、前者のところを、「民主党政権の3年間を問い直す選挙」と言い換えた。NHKと田崎史郎は、自公民大連立を前提し歓迎している。この姿勢は今回の選挙報道の基調になり、自公民vs第三極という対立構図で言説をシフトすることだろう。つまり、原発も消費税も争点ではないのである。原発をどうするかは主要な論点にされない。マスコミの選挙報道から除外され、二の次にされる。同じく、消費税も主要な論議にはならない。原発と消費税の民意を問おうとする勢力は、選挙の対立構図の中に顔を出さない。増税は決定事項として前提され、消費税増税反対論は少数異端として排除される。300小選挙区では、ほとんどで自民候補が「頭一つリード」と打たれ、都市部で橋下維新が割り込む攻防をニュースにするだろう。原発と消費税を争点にして、自公民に勝利する勢力を作るために、私はずっと中道左派の「オリーブの木」の結集を言い、生活党の支持者に呼びかけてきたが、反応は鈍く、中道左派やリベラルを興そうとする言論の動きには繋がらなかった。相変わらず、小沢一郎はナンセンスな「第三極結集」を言い、橋下徹に秋波を送っている。

橋下徹が小沢一郎と組むと言うためには、生活党が社民党と絶縁し、憲法改定と集団的自衛権を明確に言うことが必要だ。そうでなければ、相棒の石原慎太郎が折れることはないだろう。生活党にはマスコミという敵がいる。マスコミは、橋下徹と石原慎太郎を「第三極」の正統としており、そこに小沢一郎が潜り込むことを警戒して報道する。マスコミの支持を得て、マスコミの狂躁と共に勢力を伸ばそうとする橋下徹は、選挙戦の中で、徐々に小沢一郎を斬り捨てる態度を明確にするだろう。今回の選挙では、マスコミが圧倒的な力を持つ。選挙全般を仕切る。マスコミが敗北させようとする勢力は、原発反対、消費税増税反対、TPP反対の勢力である。共産、社民、生活、民主の中のマニフェスト遵守組(川内博史や鳩山由紀夫)だ。マスコミが勝利させようとする勢力は、原発推進、消費税増税推進、TPP推進、生活保護削減、改憲・対中強硬派の勢力である。自民、第三極(橋下・石原)、野田民主だ。マスコミと米国と官僚の思惑を阻止できる政治力学はない。これから1か月、最悪の時間が過ぎ、最悪の選挙結果を迎える。冬の時代の始まりだ。


by thessalonike5 | 2012-11-15 23:30 | Trackback | Comments(0)
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