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地上げ屋と血みどろバトルに私たちが勝ったわけ

野村孜子2008/04/09
不動産の立ち退き交渉で違法な報酬を得て逮捕された不動産会社社長の名前は、私たちには決して忘れられないものでした。26年前、私たち棟割り長屋7軒の住民も、この男に巧妙で陰険で執拗な地上げ攻勢を受けたからです。当時は警察も役所も何もしてくれません。私たちは協力してこの地上げをあきらめさせ、長屋を守り抜きました。
大阪 事件 NA_テーマ2
目 次
 (P.1)
 ◆警視庁に逮捕された容疑者の名前に覚えが
 ◆パンチパーマに派手な背広、しかし大声は上げない
 ◆腐った牛骨を放り込んでも警察は手出しせず
 (P.2)
 ◆世論に訴え、学会で発表、民事訴訟も起こす
 ◆裁判でやっと勝つ。朝治に300万円の支払い命令
 ◆今から思っても「よくたたかった」私たち


◆警視庁に逮捕された容疑者の名前に覚えが
 「やっぱりなあ」。3月初めの新聞やテレビで、資格がないのに不動産の立ち退き交渉をして多額の報酬を得ていた疑いで、不動産会社社長の朝治博(あさじ・ひろし)容疑者(59)が警視庁に逮捕されたというニュースが大きく報道され、私は大きくうなずきました。この「朝治博」という名には、忘れようにも忘れられない深い恐れとうらみがあるのです。

地上げ屋と血みどろバトルに私たちが勝ったわけ | <center>野村さんたちが当時住んでいた7軒の棟割り長屋(大阪府堺市)</center>
野村さんたちが当時住んでいた7軒の棟割り長屋(大阪府堺市)
 私は大阪南部の堺市で、昭和初期に建ったという7軒の棟割長屋に義父の代から住んでいました。今から4半世紀以上も前、1982年のことです。朝治博と名乗る男が我が家に突然やってきて、「この家は自分が買った。出て行ってくれ」と迫ったのです。朝治は当時は「関西実業の社員」と名乗っていました。こんな会社は実際にはなく、架空会社だったことが分かったのは後のことです。

 彼は「底地買い」の使いっ走りでした。古い借家の底地を、借家人が居ようが居まいが地主から安く買い取って住民を追い出し、更地にしてから高値で転売する商売です。「底地買い」と呼ばれ、大阪から発祥した商売だそうです。いかにも大阪的商法という感じです。「地上げ屋」という言葉はバブル期に広まったのでしょう。当時はまだ全く聞きませんでした。

◆パンチパーマに派手な背広、しかし大声は上げない
 今回の事件でも報じられているように、朝治は穏やかさを装い、決して大声は上げません。一見紳士風で理路整然とした話し方です。しかし、パンチパーマに派手な裏地の背広。その容貌、口調は威圧的で、私たちに恐怖心を起こさせるには十分でした。

 私たちが立ち退きを断ると、一転して脅し・嫌がらせが始まりました。たまたま7軒のうちの1軒の人が病弱で1人暮らしでした。その住人を追い出した家に、朝治らは数人で入り込んで深夜に大騒ぎをしたのです。大声を上げて騒ぐ、壁をたたく、柱をのこぎりで挽く、ラジオかテレビの大音響を立てる。

地上げ屋と血みどろバトルに私たちが勝ったわけ | <center>追い出された空家に投げ込まれた腐った牛骨</center>
追い出された空家に投げ込まれた腐った牛骨
 当然私たちは、110番して警察を呼びましたが、朝治らは「自分が買った家で何をしようが勝手だ」などとうそぶくのです。警察は本当に朝治らの家なのか確認もせず、何の手出しも出来ないで帰っていきました。売買契約書と称する紙切れをピラピラさせたようですが、そんな偽の書類を作ることなど、朝治らには朝飯前なのです。

◆腐った牛骨を放り込まれても警察は手出しせず
 さらに、その空き家の引き戸を壊す、門扉は持ち去る、はては腐った牛骨を放り込んで悪臭を放たせる、と嫌がらせは頂点に達しました。腐った肉片のついた骨を詰め込んだ麻袋を3個も部屋に運び込んで放置したのです。その袋を切り裂いてむき出しにした牛骨にハエがわんわんとたかり、家の外にまで悪臭が漂っていました。

 朝治は警察の電話での問い合わせに「自分の家のもの(腐った牛骨のことです)を勝手に持ち出してもらっては困る」などと信じられない返事。警察は次々と上役も来たものの、またもや沈黙です。結局、市役所の清掃課が来て、小型トラックで持って行ってくれました。

 私たちは、精神的にも肉体的にも追い詰められていきましたが、それに対抗できる一番の方法は、お互いの励ましと団結しかありませんでした。でも、それにも限度があります。かといって怖がってばかりでは平穏に暮らせるわけがありません。

 警察には渋る弁護士を伴って、せめてパトロール強化をと要請、市役所は市民相談課、総務課、庶務課、建築課などをたらい回しされながら、底地買い被害に遭った市民のための窓口作れの要望、はては地方裁判所、人権擁護局など考えられる機関には全部足を運んで訴えました。しかし、行政は「民対民の問題」だとし、役所のかかわる問題ではないと突き放したのです。


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