東日本大震災:福島第1原発事故 福島健康調査で秘密会 県、見解すり合わせ 本会合シナリオ作る
毎日新聞 2012年10月03日 東京朝刊
「データだけを明らかにすれば数字が独り歩きして住民の不安をあおりかねない」。原発事故に伴う福島県の県民健康管理調査で専門家が「秘密会」(準備会)を開いて調査結果への見解を事前にすり合わせていた背景には、県や関係者のこんな思惑がうかがえる。
検討委員会の山下俊一座長は公の場などでこれまで「今回の事故で誰も大量被ばくしていない。エビデンス(科学的根拠)から見て危険な人たちはほとんどいない」と繰り返し強調してきた。だが、秘密会では調査結果について本会合でどうやりとりするかの「シナリオ」まで事前に協議。県民の不安解消を目的とした調査結果への信頼を揺るがし「最初に結論ありき」だったとの不信感が高まるのは避けられない。
秘密会を今後は開かないという県の方針は当然だが、そこでどのような議論が交わされてきたのかも明らかにする必要がある。不信の払拭(ふっしょく)には徹底した情報公開しかない。【日野行介】