PC遠隔操作ウイルス事件 メールアドレスに見る犯人像
産経新聞 10月29日(月)9時50分配信
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犯行予告や声明などで使われたメールアドレス(写真:産経新聞) |
遠隔操作ウイルス事件で「真犯人」が犯行予告や犯行声明を出す際に使用したメールのアドレスに、平成9年の神戸連続児童殺傷事件で逮捕された少年(当時)が犯行声明に使った単語など、過去の重大事件に関係する言葉が盛り込まれていたことが28日、分かった。心理学の専門家からは「重大事件への共感からではないか」といった分析の声が上がる。メールアドレスに込められた真犯人の意図を読み解き、犯人像を追った。
遠隔操作ウイルス事件で、最初に真犯人を名乗る人物からメールが届いたのが、横浜市のホームページ。この際は、アドレスを「kichigai@schoolkiller.com」としていた。
この中にある「schoolkiller(スクールキラー)」は、神戸連続児童殺傷事件で犯行声明に書かれていた表記だ。
8月27日に福岡市の男性(28)のパソコンを遠隔操作し、お茶の水女子大付属幼稚園など4カ所に脅迫メールを送った際には、アドレスを「morokkosarin@excite.co.jp」としており、7年に一斉捜索が行われたオウム真理教事件で使用された毒ガス「サリン」が想起される。
「真犯人」はこのアドレスのパスワードを「vxgus1234」と設定しており、やはりオウムが使用した毒ガス「VXガス」が入っていた。
■漫画主人公参考か
10月9日に落合洋司弁護士(48)へ送られた犯行声明のアドレスは「onigoroshijuzo@yahoo.co.jp」。これは横浜市への犯行予告に記した「鬼殺銃蔵(おにごろしじゅうぞう)」と同一。この名前は10〜12年に人気漫画雑誌で連載された『鬼斬り十蔵』を参考にしたとの見方がある。
犯罪心理学に詳しい東海学院大の長谷川博一教授(臨床心理学)は、2件の重大事件に関連する言葉を盛り込んだことについて「世間を震撼(しんかん)させた大事件と同様、『自分も世間を震撼させることができる』と誇示し、同一視するためではないか」と分析。犯人像も「両方の事件を、多感な10代後半頃に経験した30代ぐらいの人物ではないか」と推察している。
最初の犯行予告に使った「鬼殺銃蔵」を、犯行声明のアドレスにも使ったことについては「遠隔操作が発覚し、これで終わりにするため、最初の事件に立ち返った可能性がある」と指摘する。
■「妖怪に見立てる」
アドレスはネット上での自身の“分身”ともいえるが、新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は大事件に関係する言葉を使った背景に「社会への不満があり、社会秩序を破壊した人々や組織にあこがれをもっている」とみる。
一方、奈良大の友広信逸准教授(犯罪心理学)は「数ある凶悪事件の中で、オウム真理教事件と神戸連続児童殺傷事件を連想させる言葉を選んだのには、意味があるのではないか」と話す。
「オウム真理教の一連のテロと、自分のサイバーテロを重ねていると推測できる。神戸連続児童殺傷事件も、一部のネットユーザーの間では神格化されており、そういう書き込みがあふれるネット社会の中で、共感を募らせていった可能性はある」としている。
主人公が妖怪を退治する物語の『鬼斬り十蔵』になぞらえたとすれば、「自分を主人公と同一化させて、警察・検察を妖怪に見立てているとも考えられる」と話している。
最終更新:10月29日(月)12時5分