放射線:「正しい知識を」福島2市村の小、中校で独自授業
毎日新聞 2012年11月08日 11時16分(最終更新 11月08日 12時10分)
原発事故のあった福島県の2市村が、子供たちの放射線への理解を深めようと、独自の教育指導計画を相次いで作成した。福島市は2学期から計画に沿った授業を始め、飯舘村も今年度中の授業開始を目指している。福島市教委は「子供たちは低線量被ばくに長期間向き合わなければならない。正しい知識を身につけ、判断力を養ってもらいたい」としている。
文部科学省は事故後、子供に配る副教材として「放射線等に関する副読本」を作成、福島県教委も教員向け指導資料を作った。だが、福島市は空間放射線量が比較的高く、「市の実態に即した放射線教育を進める必要がある」として、市が委嘱した放射線の専門家や小中学校の教員ら10人が今年5月から8月にかけて、市独自の指導資料作りをしてきた。
指導内容は学年ごとに異なり▽小学2年では放射線量が高い側溝付近では長時間過ごさない▽小学5年では藻類や魚類などに含まれる放射性カリウム40の量や、ガンマ線やベータ線など放射線の種類▽中学2年では内部被ばくと外部被ばくの違い−−などを学ぶ。
市内には警戒区域などからの避難者も多く、どのように「心のケア」をしたらよいかも教える。作成に携わった市立岡山小の佐藤哲校長は「知らない場所での生活はストレスが多く、避難先が変わって転校を繰り返したという児童もいる。心の変調に自分で気がつき、コントロールすることも必要」と説明する。
放射線授業は1年間に2時間、中学3年は理科の授業を含め計3時間を学ぶ。
全村避難した飯舘村も今年8月、「放射線教育指導計画」を作成し、放射線の知識は「必ず身につけなければならない大切な力」と明記した。村教委の広瀬要人教育長は「子供たちが正しい知識を身につけ、いわれなき差別や風評被害を防ぐことにもつなげたい」と話している。【神保圭作】
【福島市が作成した指導資料の主な内容】
学年 指導内容
小学2年 ・側溝や水たまりでは放射線量が
高いなど、学校敷地内で線量に
違いがあることを学ぶ
小学5年 ・自然界に存在して食材に含まれ
る放射性物質の数値を比べる
・どんな時にストレスを感じるか
話し合い、自分に合ったストレ
ス解消法を見つける
中学2年 ・人体が放射線を受ける場合の影
響を理解する。普段の生活で、