-ネルフ 職員駐車場への通路-

 ミサトは仕事が早く終わったため、上機嫌で自分の愛車の元へ向かっていた。時計を見ると、まだ18時をまわっていなかった。

 (レストランでご飯食べがてら、ドライブでもして帰ろうかしら)

 そんなことを思っているうちに、自分の愛車、ルノー・アルピーヌ A310が見えてきた。しかし、その隣に停まる車が見えると、歩みを止めた。

 「なんなのよ、これ…誰の車なの?」

 そこにあったのは、エアロパーツが取り付けられた漆黒のダットサン 240ZGだった。


助っ人 
番外編 第1話 「-N・S・O・C Story- NERVスポーツカーオーナーズクラブ結成!?」



 ノーマルよりも大きく張り出したオーバーフェンダー、リップスポイラーがついたフロントバンパー、ダックテール型のリヤスポイラー、エアロボンネットはそれぞれカーボン製で、低い車高、太いタイヤ、深リムのワタナベアルミホイールが迫力を放っている。Gノーズと呼ばれる、独特な形状のノーズの向かって右側にはNACAダクトが設けられ、内装は剥がされ、ロールバーが組まれている。

 (かなり手を入れてあるわね…)

  ミサトがそう思ってZを眺めていると、シンゴがやってきた。

 「葛城一尉じゃないですか。どうしたんです?こんなところで」
 「あら、狩威くんじゃない。見かけないZが停まってたから見てたんだけど、誰が乗ってるのかしら…」
 「それ、僕のですよ」
 「ええっ!? ホントに?」
 「はい」
 「その歳で旧車なんて渋いわねぇ」
 「よく言われます」
 「ねえ、私、今日ドライブしながら帰ろうと思ってたんだけど、一緒にどう? 夕食も奢るわよ」
 「いいですね、行きましょう」
 「それじゃあ、郊外に××っていう中華料理の店があるんだけど、分かるかしら?」
 「ああ、あの店ですか。分かります。そこに行けばいいんですね?」
 「ええ」

 2人はそれぞれ車に乗り込むと、エンジンをかけた。
 クルル ブオォン   キュルルル ドルルゥン

 (すごい音…私のルノーがおとなしく見えるわ…)

 ミサトがそう思いながら横を見ると、シンゴが手で“先に行きます”と合図をしていた。こちらも手でOKサインを出すと、Zはやや後輪を滑らせながら発車した。

 (結構とばすわね…負けてらんないわ)

 ミサトもZに装着された縦のデュアルマフラーを見ながら、アクセルを踏み込み後を追った。



 -第三東京市 郊外の道路-

 ブロロオォ……ブオォォン…
 ミサトのA310はシンゴのZの後ろについて走っていたが、ここに来るまでに何度も引き離された。特に坂道では、Zは“本当に登っているのか”と思わせるほどの加速を見せ、ミサトは度肝を抜かれた。

 (すごいトルク、エンジンにも手を入れてるわね…後で聞いてみようかしら)

 そんなことを考えているうちに、目的の中華料理屋に着き、2人は車を降りた。

 「随分とばしたわね。それにしても、あのものすごい加速には驚いたわ。エンジンもいじってるんでしょ?」
 「やっぱり分かりました? 実はDOHC化したL24エンジンを積んでるんですよ」
 「…マジなの?」
 「ええ。他にも、鍛造ピストンを入れたり、エアクリーナーを交換したり…いろいろやってありますよ」
 (いくら掛けたのかしら…)
 「腹も減ってきましたし、入りましょうか」
 「え、そ、そうね」

 店に入った2人は幸い、混んで居なかったのですぐに席につくと、料理を注文した。

 「そういえば、他にスポーツカーに乗っている職員の方っていらっしゃるんですか」

 シンゴはふと、ミサトに気になったことを訊ねた。

 「そうねぇ…ドイツ支部にならいるんだけど…本部では見かけないわね」
 「そうですか。そのドイツ支部の方は何に乗っていらっしゃるんです?」
 「ロータス エランよ。古い車にしてはかなりキレイに乗っていたけど、今はどうか知らないわ」 
 「エランですか、中々の名車ですね。その方は日本に来る予定は?」
 (加持さんかな?あの人エランに乗ってたんだ…)
 「そういう話は聞いてないわ。でも、なぜ?」
 「ツーリングって台数が多い方が楽しいじゃないですか。だから誘えればいいなぁと思ったんですが…」
 「そうね、じゃあ、本部でスポーツカー乗りを探してみるわ」

 そんなことを話しているうちに、料理が運ばれてきた。すでに時刻は8時前だったため、2人とも腹を空かしており、すぐに料理をたいらげた。そして水を飲みながら食後の余韻に浸っていると、シンゴが口を開いた。

 「そうだ、“NERVスポーツカーオーナーズクラブ”なんていうものを作ってみてはどうでしょう。スポーツカー乗りが集まるんじゃないですか?」
 「名案ね!会長は狩威くんかしら?」
 「葛城一尉がそれでいいなら。一尉は副会長ですか?」
 「そうなるわね。なんだか面白くなりそうだわ」
 「ええ、そうですね。僕、車に貼るステッカーを作ってきますよ」
 「おっ、中々本格的じゃない。じゃあ、できたら私にもちょうだいね」
 「分かりました。今日はこの辺で御開きにしましょう」
 「そうね」

 勘定を済ませると店を出て車に乗り込む。

 「今日は奢っていただいてありがとうございました」
 「いいのよ、そんなに高い物じゃないんだから。それに、いいもの見せてもらったしね。じゃあ、また明日」
 「はい、お疲れ様でした」

 2人は車のエンジンをかけると、アクセルを踏み込み、帰路についた。
 
To be continued...

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