(使徒襲来まであと1週間…そろそろ彼を呼ぶか。指令に許可貰わないとな)

 帰宅したシンゴはそう思い携帯を取り出すと、ゲンドウに電話をした。
 プルルル…

 「もしもし、シンゴですが」
 『…何か用か?』
 「ええ。使徒襲来も近いので、一人仲間を呼びたいと思っているのですが」
 『構わんよ、君の仲間なら疑うまでも無い…どのような人物か、楽しみにしておこう』
 「ありがとうございます。では」
 『ああ』

 電話を切ると、今度はその“仲間”へ電話をかけた。


助っ人 
第10話 「もう一人の助っ人」



 「やあ、久しぶりだね」
 『そうだな。三ヶ月ぶりくらいか?』
 「そのくらいだね」
 『で、なにか用か?』
 「うん。使徒襲来が近いからそろそろ第三に来てもらいたいんだけど、今どこにいるの?」
 『名古屋だ。準備ができ次第そっちに向かうから、明日の10時頃には着けると思うぜ』
 「行動が早くて助かるよ」
 『それはお前もだろ』
 「じゃあ、箱根湯本駅の駐車場に来て」
 『分かった。じゃあな』
 「じゃあね」
 シンゴは電話を切った。

 (明日が楽しみだ)
 


 -箱根湯本駅 駐車場-  

 翌日の朝10時前、仲間と待ち合わせをしたシンゴはこの場所で待っていた。

 (そろそろかな)

 グルルルォォオオオン

 (来た!)
 
 水平対向エンジン独特のエンジン音が耳に入った瞬間、彼はそう思った。
 やがて、姿を現したオレンジ色の996型ポルシェ911は、後輪を滑らせたかと思うと、ドリフトを決めてシンゴのZの隣に停車した。そして、ウィンドウが下がる。

 「久しぶりだね、ジュン」
 「それ、昨日電話でも言っただろ。ま、確かに久しぶりだな」
 「とりあえず、ネルフまで来てもらえる?」
 「分かった。案内してくれ」

 Zとポルシェはスキール音を響かせ駅を後にした。



 -総司令執務室-

 プルルルルル プルル…ピッ

 「…何か用か?」

 仕事の都合で2時間ほどしか眠れなかったゲンドウは、眼をこすりながら“早く出ろ”と言わんばかりに喚く携帯を手に取り、シンゴからの電話だと分かると通話ボタンを押した。

 『司令ですか、今仲間と本部に向かっています。着いたら司令にご挨拶に伺いたいんですが』

 電話が発する音声にエンジン音とスキール音が混じっているのは気のせいではないだろう…。

 「…相変わらず行動が早いな、君は。だいたい何分後だ?」
 『そうですね…10分程度だと思います。それで、赤城博士とユイ博士も呼んでおいて頂けますか?』
 「…分かった」
 『疲れていらっしゃいます?』
 「…ああ、仕事が片付かなくてな…」
 『もう少しお体を気遣った方がよろしいのでは?あまり無理はなさらないでくださいよ」
 「…ああ。君も電話しながら運転して事故を起こさないように気をつけたまえ」
 『ハハハ…(汗)肝に命じます…では」
 「ああ」

 ゲンドウは電話を切ると、応接セットの準備をして、発令所にユイとリツコを呼び出すよう伝えた。
 そして10分後…

 「「失礼します」」 「紹介します。仲間の真義色《まぎいろ》ジュンです」
 「真義色ジュンと申します。これからネルフでお世話になります、よろしくお願いします。
 「「「よろしく(頼む)」」」
 「彼には技術部第0課に所属してもらい、MAGIのグレードアップを担当してもらおうと考えています」
 「実力は折り紙つきって訳ね」
 「頼もしいわね。なにか困ったことがあったら私達に言ってくださいな」
 「分かりました、お力をお借りする事になると思いますが、よろしくお願いします」
 「「こちらこそ」」

 挨拶を終えたジュンはシンゴと別れると、早速MAGIを見に行った。シンゴも、使徒戦への最後の準備を済ませるべく、司令室を出て、通路を歩きながら電話をかけた。
 プルルル…

 「あ、スミレさん、用事があるのですが、今大丈夫ですか?」
 『ええ。では、ユイさんの執務室まで来ていただけますか?少し早いですが、昼食を食べながら話しましょう』
 「分かりました。では後ほど」
 『ええ』

 シンゴは電話を切ると、ユイの執務室へ向かった。



 -ユイの執務室-

 シンゴが到着すると、スミレはすでに食事の用意をして待っていた。一言二言言葉を交わし席について、いただきます、と食前の挨拶を済ませて、食事に箸をつける。

 「それで、用事ってなんですか?」

 食事を2/3ほど食べ終わったころ、スミレが切り出した。

 「実は、使徒をおびき寄せるリリスの波動を発生させるために、ターミナルドグマにリリスのダミーを作ろうと思っています。それで、協力していただきたいのですが、いいでしょうか?」
 「ええ、もちろん」
 「助かります。では、明日、午前9時にここに来ていただけますか?」
 「分かりました」

 シンゴは食事を食べ終わると、食後の挨拶と礼を言ってユイの執務室を後にした。その後、ジュンが行っているマギのグレードアップの手伝いをして一日を終えた。
 翌日、朝の9時、シンゴがユイの執務室を訪れると、スミレが薄いピンク色のワンピースに白のパンプス、髪はポニーテールという格好で待っていた。

 「行きましょうか♪」
 「…あの、その服装は…?」
 「ユイさんに選んでもらったんです。どうですか?」
 「似合ってますけど…今日はターミナルドグマに行くんですよ?」
 「ええ。ですから、気分だけでも明るく、と思って」
 「いや、そうじゃなくて……LCLで汚れちゃうかもしれませんよって意味で言ったんですが…」
 「あっ…」

 5分後、シンゴは作業着に着替えたスミレと共にセントラルドグマに向かった。



 -ターミナルドグマ-

 少し前までリリスがいた場所には、今はただ紅い十字架だけが立っている。シンゴたちは、その十字架の下にいた。

 「では、始めます。僕の肩の辺りに手を置いてください」
 「これでいいでしょうか?」
 「はい」

 シンゴが十字架に手をかざすように伸ばすと、下にあったLCLが吸い上げられるように十字架の前に人型に集まり、リリスのダミーができあがった。

 「終りましたよ」
 「え?もうですか?早いですね」
 「あなたの力をコピーして形にしただけですからね。これからは、スミレさん自身や仲間を守るために力を使ってください。少なくとも、ゼーレを壊滅させるまではブレスレットを持っていたほうがいいでしょう」
 「分かりました」
 「では、戻りましょうか」
 「ええ」

 二人はターミナルドグマを後にしようとしたが、シンゴの携帯が鳴った。

 「すみません、先に戻ってもらえますか」
 「?…分かりました」

 シンゴはスミレを先に帰し、携帯を見た。自分がいる地下深くのセントラルドグマまで連絡を入れられるのは、施設内に張り巡らされた通信網を使える主要人物と、力が使えるジュンだけである。そして案の定、ジュンからだった。通話ボタンを押す。

 「どうした?」
 『メルキオールとバルタザールのグレードアップは終ったんだが、カスパーはダメそうだ』
 「やっぱりか…」
 『ああ。乗っ取って上書きはできそうだが、今の状態をベースに改良するのは無理だ』
 「そうか…今セントラルドグマのヘヴンズ・ドアの前にいるんだけど、カスパーのコアを持って来れる?」
 『できないことはないが…コピーするのか?』
 「うん。………で、今入ってる方は、生き返らせるよ」
 『!? …確かに、そうすれば戦力になるな。じゃあ、今から持ってくぜ』
 「うん、頼むよ」

 シンゴは電話を切り、閉めかけのドアに寄りかかった。

 (悪い方に転ばないといいけどな…)
   
 To be continued...

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