-セントラルドグマ-
少し時を遡って…
ユイとスミレをユイの執務室へ送ったシンゴは、冬月に話し掛けた。
「副司令、実はもう少しつきあっていただきたいのですが」
「構わんが…何かね?」
「レイの素体についてです」
「! …どうするのかね」
「実は素体にもレイの魂の欠片と言うべきものが宿っています。それらをかき集めてレイに還そうと考えています。本当はこの後司令をお呼びして立ち会ってもらう予定でしたが…副司令、代理として立ち会っていただいて司令に報告をしていただけませんか?」
「分かった。代役を務めさせていただこう」
「ありがとうございます」
シンゴと冬月はヘヴンズドアを出るとドアを閉めて歩いていった。
助っ人
第9話 「レイ、補完」
数分後、二人はある部屋に辿り着くと、中へ入って行った。その部屋のプレートにはこう書かれていた。
“人工進化研究所 第三分室”
コンクリートが剥き出しになった部屋を横目に更に奥へと進むと、巨大な水槽に取り囲まれた場所に出た。中央には円筒状の水槽があり、人間の脳を彷彿とさせる形をした天井の機械とつながっている。
照明をつけると水槽の中がはっきり見えるようになり、何があるか知っていた冬月でさえ、その異様な光景に
顔をしかめた。
しかし、シンゴは違った。彼は微笑んでいるようにさえ見えた。
「今、解放してあげるから。君たちはひとつになって元の場所へ戻るんだ」
そう言うと両手で器を作るようにして前へ差し出す。
すると、素体たちは青白い小さな光となってシンゴの手の器の中に集まり、一つの光になった。そしてシンゴが光を包むようにすると、彼の手に吸い込まれていった。
「無事、魂を回収できました。僕は今からレイにこの魂を渡してきます。副司令は指司令にご報告をお願いします」
「分かった」
2人はエレベーターに乗ってセントラルドグマを後にした。
-ネルフ付属病院-
ネルフ本部内で冬月と別れたシンゴは、レイに合うため彼女の病室に来ていた。
「やあ、調子はどう?」
「…回復はしているわ。あと2週間ほどで退院」
「そう。でも、今日退院できるようにするよ。実は、さっきセントラルドグマの素体から君の魂の欠片を集めてきたんだ」
「!!!」
「今日はそれを君に渡しに、いや、還しに来たんだけど、君はこれを受け取るかい?」
「……ええ」
「そう…じゃあ、はじめるよ。すぐ終わるから楽にしてて」
シンゴはそう言うと、何かを包むように両手を前にだした。すると、徐々に青白い光の球が手の間に現れた。それを押すように手を動かすと、光の球はレイの鳩尾のあたりに吸い込まれた。
レイは自分の魂が満たされていくのを感じた。そして気が付くと、先程まで自分を襲っていた体の痛みが消えていた。
「痛くない…なぜ?」
「君の肉体を一瞬だけ力が使えるようにしたんだ。それで、君自身の力が肉体を回復させたんだよ」
「そう…あ、ありがとう////」
「どういたしまして。さて、怪我も治ったことだし、帰る?」
“帰る”その言葉を聞いてレイの脳裏に浮かんだのは、コンクリートが剥き出しの壁の部屋だった。シンゴが来た時から、彼女の中で“あの部屋は第三分室のようで落ち着ける”というイメージは無くなっていた。
(あそこにはもう、戻りたくない…)
そう思ったレイはうつむき、無意識に言葉を漏らした。
「…イヤ」
「えっ…」
シンゴは一瞬、なにかまずい事を言ってしまったか、と戸惑ったが、レイの考えていることが分かると、口を開いた。
「君には家族がいるだろ?君が帰るべき場所は、その家族のところだよ」
“ハッ”という擬音がつくような勢いで、レイは顔をあげた。
「帰るかい?家族のところへ」
「ええ」
レイがそう答えて微笑んだのを見て、シンゴは携帯を取り出し、ゲンドウに電話をした。
「もしもし」
『何か用か?』
「ええ。副司令から、綾波さんの話は聞いてますか?」
『ああ』
「彼女が帰宅したいそうなので、迎えに来てもらえますか?」
『分かった。こちらも今仕事を終えたところだ。ユイと一緒にそちらに向かおう』
「お願いします」
シンゴはそう言うと、電話を切った。
「今司令が来るから、荷物をまとめて待ってて」
「分かったわ」
数分後、碇夫妻がやってきた。
「入るぞ」
「ええ」
「レイちゃん、もう大丈夫なの?」
「はい、狩威さんが治してくれました」
「そう。どうやったのかが気になるけど、それはまた今度聞くわ」
「では帰ろう、レイ」
「はい」
3人はシンジが訓練をしている試験場へと向かった。碇一家はシンジとレイが学校へ行きやすいように近々、ミサトの住むマンションへ引っ越す予定だそうだ。
シンゴは3人を見送ると、帰宅するために駐車場に向かった。
To be continued...
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