「そういえば、私は何を手伝えばいいの?」
「とりあえず、スミレさんに服を貸してあげてほしいんですが…ついでに私服を何着か見繕ってもらえると助かります」
「私からもお願いします」
シンゴとスミレはそう頭を下げた。
「そんなことならお安い御用よ。早速行きましょう…と言いたいところだけど、どうやって移動するの? この格好のままじゃ彼女、目立つわよ?」
「それは僕の力を使います。どこに行きます? あ、服の支払いはこれでお願いします」
シンゴはネルフのロゴが描かれたカードをユイに渡しながら訊ねた。
「私の執務室までお願いできるかしら?あそこなら私の服があるし、私以外の人は許可無く入れないから」
「分かりました」
シンゴはそう言うと、直径2メートル程の黒い穴を展開した。
「この中に入ってください」
「分かったわ。なんだかワクワクするわね!」
「ええ」
ユイとスミレが穴に入るとシンゴが穴を閉じて真っ暗になり、次の瞬間にはユイの執務室の床に立っていた。
「あら、随分と早かったわね。ちょっと残念」
「そうですね、もっとトンネルみたいになっていると思ったんですが…違いましたね」
驚かない2人は天然なのだろうか…。
助っ人
第8話 「スミレ、人間界デビュー」
スミレはユイの私服を借り、着替えた。着ていたポンチョは純白のブレスレットへと姿を変えた。
「素敵なブレスレットね。よく似合っているわ」
「これは私の持つ使徒の力を引き出すためのものです。シンゴさんが人間界で暮らしやすいように配慮して人間に近い肉体を創ってくれたので力がほとんど使えなくなりました。ですが色々と手伝ってほしい事があるそうで、力が必要無くなるまでは身につけていてほしいと」
「そうだったの。じゃあ、行きましょうか」
「ええ」
2人は私服を買いに行くべくユイの執務室を出たが、そこでリツコに出くわした。
「ユイ博士、こんにちは。そちらの方は?」
「あら、りっちゃんじゃない。彼女は毬里スミレさんよ」
「はじめまして。毬里スミレと申します。元第2使徒リリスと言えば分かって頂けるでしょうか…?」
「!!! …まさか狩威くんがこんなに早く行動を起こすとは思わなかったわ…よろしく、毬里さん。私のことはリツコでいいわ」
「こちらこそよろしくお願いします、リツコさん。ユイさんもリツコさんも、私のことはスミレと呼んで下さい」
「「じゃあ、そうさせてもらうわ(ね)」」
シンゴを含め事情を知る者達はリツコがユイに対して敵対心を持つことを危惧していたようだが、実際そんなことは無く、むしろ仲は良いようである。
最近も、食堂で一緒に昼食をとりながら話し込んで仕事に戻るのが遅くなり、二人して冬月に説教されている姿が目撃されたそうだ…。
「これからスミレちゃんの私服をデパートに買いに行くのだけど、りっちゃんも一緒に行く?」
「行きたいのは山々なんですが、あいにくまだ仕事が残っていまして…」
「そう、残念ね。じゃあ、お仕事がんばって!!」
「ええ、ありがとうございます」
そう言うとリツコは去って行った。
「私達も行きましょうか」
「ええ」
二人はそう言うとネルフを出るため、ゲートへと向かった。
-第三新東京市郊外のデパート-
ユイとスミレはリニアトレインを使ってデパートまで来ていた。今は3階の婦人服売り場にいる。
「これなんかどうかしら?」
「かわいいですね、これも買います」
二人は10数着の服の会計を済ませユイが腕時計に目をやると、すでに20時をまわっていた。
「もうこんな時間だわ。ホント、楽しい時間って過ぎるのが早いわね」
「そうですね」
「そういえば、お腹空かない?まだ夕食を食べて無かったわ」
「言われてみれば…まだ食事をしていませんね、というより食事をしたことがないです」
「確かにそうよね。地下1階が飲食店街になってるから、行ってみましょうか」
「はい!」
2人は地下1階へ降りるとしばらく飲食店街を散策し、パスタの店に入った。
「私はミートソース・スパゲッティにするわ。スミレちゃんは?」
「私はカルボナーラにします」
「どんなものか、知ってる?」
「一応、知識としては知っていますが…味はわからないので楽しみです!」
「そう」
ユイはそう言って微笑んだ。
その後2人はパスタを堪能し、帰路についた。
To be continued...
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