-第三新東京市近郊の駅-
ここに一人の少年が降り立った。短髪の黒髪に中性的な顔をした少年が。彼はズボンのポケットから一枚の紙を取り出すと、それを見て期待に満ちた笑みを浮かべ、呟いた。
「父さん…」
その紙には、こう書かれていた。
“シンジ、今まですまなかった。ユイが帰ってきた。また私達と一緒に暮らそう。 ゲンドウ”
助っ人
第5話 「望まれた再会」
駅に降り立った少年「碇シンジ」が駅を出ると、駐車場に停められた黒い車の横で手招きをしている男が目に入ったので、彼の元へ歩いていった。
「君が碇シンジ君だね」
「はい」
「僕は特務機関ネルフ 司令部特殊任務遂行課課長の狩威シンゴ。君のお父さんの直属の部下だと思ってくれればいいよ。お父さんから話は聞いてるかい?」
「はい。今から父の職場に行って父と会うんですよね?」
「そうだ。じゃあ、車に乗ってくれ。古い車だしスポーツカーだから乗り心地は良くないが大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です」
「よし、行くぞ」
キイィ ブロロロ…
シンジとシンゴを乗せた車はスキール音とタイヤ痕を残して駅を後にした。
-特務機関ネルフ 職員駐車場-
ネルフに着いた2人はカートレインを使い駐車場まで来ていた。途中、ゲンドウについての会話をしたり、シンジがジオフロントに感動したりした。シンゴは車を青いルノー・アルピーヌの隣に停めると車から降りた。
(ミサトさん、驚くだろうな)
シンゴはそう思いつつ愛車を見ると、シンジが助手席でドアを眺めて困っていた。
「ドアの開け方が分からないんですけど…」
「あぁ、ごめんごめん」
外からドアを開けてやり、またこの車に乗せた時のために開け方を説明した。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
-ネルフ本部内 通路-
二人は面会場所である総司令執務室へ向かっている。シンゴはあの場所で面会はどうかと思ったが、新たに執務室を作ったらしい。元の司令室はゼーレとの会議室となっている。ということで正確には“新総司令執務室”に向かっている。部屋のコーディネートはユイさんが担当したそうなので、以前のような部屋にはならないだろう。
シンゴは歩きながら悩んでいた。シンジにエヴァに乗ることになるということを伝えるべきか、否か。ゲンドウも前の世界のように言うことは無いと思うが、突然告げられたシンジが取り乱すのは目に見えている。そう思い、少しだけ伝えることにした。
「…シンジくん」
「なんですか?」
「これからお父さんに会うけど、君が“自分をここへ呼んだ本当の目的は一緒に暮らすことじゃ無いんじゃないか”と思うような言葉が彼の口から出るかもしれない。でも絶対にそんなことはないから、君のお父さんを信じて欲しい。このことは頭の片隅にでも入れておいて。あと、少し心の準備をしておいて」
「…分かりました」
しばらく歩くと、新総司令執務室に着いた。
「さあ、この扉の向こうにお父さんとお母さんがいるよ」
「はい」
シンジは頷くと、部屋へ入っていった。
「司令、息子さんをお連れしました」
「ご苦労」
「では失礼します」
シンゴはそう言うと部屋を出た。去り際にシンジの泣く声が聞こえた。よほど嬉しかったのだろう。
(あのときの僕も、これを求めていたんだ。もし僕が今のシンジなら、彼と同じように泣いていただろうな)
そんなことを思いながら、次の目的地、初号機ケイジへと向かった。携帯を取り出し、どこかへ連絡をいれながら。
-初号機ケイジ-
「先輩、初号機の右腕のケイジ固定用拘束具をはずすよう指示が出ています」
「拘束具を?…どこからの指示なの?」
助手の伊吹マヤの言葉に、リツコは眉間にしわを寄せて聞き返した。
「えっと…司令部です」
「そう、じゃあ外してちょうだい(きっと狩威君の指示ね。何を考えているのかしら?)」
「えっ…分かりました」
マヤは技術部の作業員に指示を伝えに行った。それから何分かして、指示を出した本人、シンゴが現れた。
シンゴはケイジに入ると、扉近くの壁に寄りかかり初号機を見上げた。
「(やあ、久しぶりだね)」
「(シンゴさんでしたか…お久しぶりです)」
シンゴがテレパシーのような他の人には聞こえない声で呼びかけると、返答があった。声の主はもちろん初号機である。
「(もうすぐ彼が来るよ)」
「(私のパイロットですか…どんな人です?)」
「(それは会ってからのお楽しみだよ。まあ、君が気を悪くするような子じゃないと思うけどね)」
「(そうですか、それは良かったです)」
「(右手の拘束具を解いといたから、彼が乗る気になったら手を出してやるといいよ)」
「(分かりました)」
そして、ケイジの入り口の扉が開いた。
「(来たみたいだよ)」
To be continued...
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