-初号機ケイジ-

 時刻は11時45分をまわった。ゲンドウの召集によって赤城リツコと葛城ミサトがやってきていた。

 「司令、ご用件はなんでしょうか?」
 「ユイをサルベージする。」
 「!?」

 リツコは言葉を失った。


助っ人 
第2話 「サルベージ」



 リツコは考えていた。サルベージは不可能ではなかったのか? ゲンドウの計画の目的が碇ユイとの再会だったのだから“可能だがやらなかった”ということはないだろう。最終的に、サルベージの方法が見つかったという結論にたどり着いたので、ゲンドウに質問した。

 「どのようにしてサルベージを行うのですか?現時点では不可能だったはずですが」
 「それは私が説明しよう」

 リツコの問いに対し、ゲンドウの横に立っていた冬月コウゾウが言った。

 「サルベージを可能にする“力”を持った者が現れて、条件付きでサルベージをすると言ってきたそうだ。私はその場に居合わせなかったが、碇の話だと、もうすぐ到着するらしい。ちなみに、この4人の立会いも条件のうちだそうだよ」
 「!?」

 リツコは再び言葉を失った。

 「ねえねえリツコ、さっきから何の話をしているのかさっぱり分からないんだけど…。ユイさんって誰なの? サルベージって、どこから引き上げるのよ…」

 ネルフについてあまり深くは知らないミサトはリツコに問い掛けた。

 「それについては僕が後ほどお教えしましょう」

 突然背後から声が聞こえ、ミサトは銃を抜いて振り返り叫んだ。

 「誰なのっ!」

 向きを変えたにもかかわらず、再び背後から声が聞こえた。

 「ただいまご紹介に(あずか)りました、“力”を持つ者です」

 冬月とリツコ、そしてふりかえったミサトは驚愕した。そこに突然現れた銀髪銀眼の青年に。

 「き、君が狩威シンゴくんかね?」

 腰を抜かしかけた冬月がシンゴに尋ねた。

 「はい、そうです。すみません、少し驚かせてしまったようですね。約束の時間も近いですし、早速サルベージを始めます。なにか着る物は用意してありますか?」
 「ああ、白衣と移動式の簡易ベッドを用意してある」
 「流石、用意周到ですね。では、指令は僕の横に立ってサルベージされたユイさんを受け止めてください」
 「わかった」
 「では、始めます」

 そう言うと、シンゴは初号機手をかざすように伸ばした。すると、初号機の鳩尾のあたりの装甲が中央に吸い込まれるように消え、剥き出しになったコアから光り輝く球体が出てきた。シンゴが手をゲンドウの方へ向けると、球体もそれに合わせて移動し、ゲンドウの前に来た。そして球体は女性の姿へと形を変えた。

 「ユイっ!」

 ゲンドウはユイを白衣で包むと、ベッドへ移動させた。彼女が眠ったままなので心配そうな顔をしていた。

 「目覚めるまでにはもう少し時間がかかります。ユイさんが目覚めるまでそばにいてあげて下さい」

 シンゴがそう言うと、彼は一言、

 「本当にありがとう」

と言った。シンゴは微笑で返した。ゲンドウはユイのベッドを押して、病室へと向かった。

 「しかし、どうやってサルベージしたのかね?」

 冬月は、まさに皆の疑問を代弁する質問をした。

 「それを説明するには、まず、なぜエヴァに取り込まれてしまうかを説明しなければなりません」
 「エヴァに魂が無いから、ではないの?」

 リツコが問いかける。

 「ええ。9割正解というところでしょうか。実はエヴァは小さいですが、魂を持っているんです。ただ、取り込まれてしまうことからも分かる通り、自我は無く、魂と呼べるかどうかも微妙なものです。つまり、コアの中はユイさんが取り込まれるまでほとんど空っぽだったというわけです」
 「なるほど…」
 「次に、サルベージについてですが、実行する上で重要なのは、この“魂を持っている”ということなんです」
 「それはなぜかしら?」
 「この魂に知識と感情を与え、魂の成長を促すんです。自我が確立してしまえば、魂は急成長します。なんせエヴァですからね、成長スピードは人間の比じゃないんですよ」
 「そしてエヴァ自身の魂でコアを満たし、取り込まれたユイさんをサルベージした、というわけね」
 「そうです。さすが赤城博士ですね」

 説明を聞き終えた冬月は納得した顔でケージを出ていった。おそらく、ユイのいる病室へむかったのだろう。

 「ところで、なぜ私とミサトの立会いを求めたの?」
 「そうよ、何か知ってるらしいリツコはともかく、なんで私まで?」

 本当にこの青年の考えには疑問が多い、リツコはそう思いながらミサトと共にシンゴに尋ねた。

 「お二人にもお話したいことがあったので立ち会ってもらいました。特に葛城三佐にはサルベージを見てもらった方が話がスムーズに進むと思ったので」
 「じゃあ、その話とやらを聞かせてもらおうかしら?」
 「ここで話すのもなんなので、場所を変えましょう」

 三人はケージを後にした。

 to be continued...

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